第9話 とっても可愛い婚約者ができました
プロローグの前にこの作品の設定資料集的なまとめを追加する予定です。
追記:12時に追加しました。
そのためプロローグを1つの章(1話だけですが)という扱いにしました。
設定資料集は微量なネタバレを含む可能性があります。(個人の感じ方はそれぞれだと思います)
また、設定資料集により皆さんの認識と作中の認識にずれが生じる場合があります。
そのあたりをよく吟味してからご覧ください。
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「まずはどういうことが決まったのか。それを伝えよう。君たち二人は正式に婚約を結ぶことになった。これは口だけの約束事ではない。貴族同士の決まり事としてだ。ただアルバートと私の意見として、本人たちの意思が最も重要であるという意見が一致したのでな。こうして君たちの意思を聞きに来たというわけだ。」
ボクはちらりとエリザヴェートの方を見る。
こんなにかわいい子と婚約なんて嫌なわけないんだよなあ。
するとエリザヴェートもこっちを向いたので目がばっちり合う。
年頃の少年のように恥ずかしくなって目線を逸らそうとはならなかった。
ボクと彼女の顔はすぐに真っ赤になるが、目は合わせたまま、お互いに笑顔になる。
「父様、ボクは彼女と、いえ、エリザヴェート嬢とぜひ婚約を結ばせてほしいです。」
「あの!私も殿下の婚約者に...なりたい、です!」
父様はボクらの様子を見て満足したように頷く。
「では正式に婚約を結ぶことにしよう。エリザヴェート嬢は20歳になったら、皇族に嫁入りという形になる。ケントの性質上、婿には出せんのでな。2人はそれで良いか?」
「はい。もちろんです。」
「私も、それでいいです。」
「二人はきっと良い夫婦になれるだろう。ただし、婚前交渉する時は相談しなさい。」
「こっ、婚前交渉ですか!?ふつうはダメじゃないんですか!?」
するとアルバートさんは困ったように笑い、衝撃の事実を告げる。
「意外とよくあるんですよ。貴族においては一度決まった婚約は必ずと言っていいほど破棄しませんから。まあ、殿下とエリーなら15歳になったら解禁でいいでしょう。殿下なら大事にしてくれるはずですから。それまでは2人とも我慢してくださいね。」
「あ、あの...?婚前交渉とは何でしょう?」
エリザヴェートが空気を読まずにそう聞いたので、ボクは椅子からずり落ちかけた。
どこか力の抜けたアルバートさんはエリザヴェートに何か言っている。
「エリー、それは15歳になったらケント殿下にみっちり教えてもらいなさい。」
「は、はい。わかりました、お父様」
おい、アルバートさん?そういうのは教えといたほうがいいんじゃ...いや、待てよ?
よく考えろ、エリザヴェートは良くも悪くも純粋、透明だ。
ならばこれから時間をかけてボクの色に染め上げることだってできるんじゃないか?
前世は年齢=彼女無しさらに童貞と、恋愛とは無縁の生活だったんだ。
こんなに可愛い婚約者がいるんだ。ラブラブな夫婦を目指そうじゃないか!
ボクは決意した。必ずこの可愛い婚約者とラブラブにならねばならぬと決意し...
「あ、あの、ケント殿下!これから婚約者としてよろしくお願いいたします!私、殿下にふさわしい婚約者になるためにがんばりましゅ!」
あ、噛んだ。あ、すんごい真っ赤になった。何ですか?この可愛い生き物は?
「か、かわいい...!」
「えっ?今なんと?」
やべ、心の声が漏れた。何か良い言い訳を...違う!ちっがう!!!
ラブラブを目指すならば攻めの一手あるのみ。
「いや、エリザヴェートがとても可愛らしかったからね。つい心の声が漏れてしまっただけだよ」
「ふぇっ!?可愛らしいなどとそんな...。私などよりも皇女殿下方のほうがお美しいですし」
「そんなことないよ。君が挨拶に来た時、世の中にはこんなに可愛らしい人がいるんだなあって驚いたんだよ?それに君はボクの婚約者なんだから、もっと自信をもって」
「えへへ、そんな、ありがとうございます。そこまでおっしゃっていただけると自信を持てそうです!」
少し頬を赤く染め、はにかむエリザヴェートはもはや天使のごとき愛らしさだった。
「おほん、そろそろお開きとするか。アルバートは執務の関係で10日ほど帝都に滞在するということだ。エリザヴェート嬢はいつでもケントに会いに来なさい。話は通しておくから。」
「はい、皇帝陛下。ありがとうございます。」
ボクは見送りのためエリザヴェートの手を取り、馬車までエスコートした。
その間、エリザヴェートはずっとボクの横顔を見つめ、微笑んでいた、というのは後に本人から聞いた話である。
「陛下、ケント殿下はなぜあんなにエリーを口説くのが上手なんでしょうか。まだ6歳ですよね?」
「ふふふ、見ていて楽しかったよ。どうやらケントは本気で惚れ込んだようだな」
「私もエリーのあんな顔、初めて見ましたよ。あれが恋する乙女の顔ってやつなんでしょうか。あの2人も陛下のように仲睦まじい夫婦になりそうですね」
「いや、それはどうかな。共鳴が他の者とも起きる可能性は十分ある。あれは一人だけとは限らないからね。それにケントは虹色だ。共鳴が起こりやすいのかもしれない。」
「なるほど。無属性の英雄、二代皇帝には確か12人の妻がおられたのでしたな。”英雄、色を好む”というやつですか」
「まあ、二代皇帝とその妻たちが全員共鳴したとは考えにくい。しかし、ケントの将来が楽しみだよ。」
ボクと父様は馬車を見送り、それぞれの私室へと戻った。
少し本を読んでからベッドに転がり、可愛い婚約者のことを考える。
輝くような笑顔、賢さがにじみ出る会話、頬を染めこちらを見つめる表情。全てが愛おしい。たった一日で、いや数時間でボクは彼女に深く溺れてしまったらしい。
「はあ、惚れさせる前に惚れてどうするんだよ。」
そうひとり呟いた。
ボクの負けだ。
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