第8話 運命の時は突然やってくる

1.13追記:侯爵→公爵に変更しました。直し漏れがあったら教えてください

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――



貴族達は今回の主役であるボクの所へと挨拶をしに来ることになっている。

父様と母様も一緒だ。

順番がきっちりと決められていて、位の高い順になっている。

最初は一番上の公爵。そして辺境伯、伯爵、子爵、男爵、騎士爵となる。


まずやってきたのはエルメダ公爵家の当主と正妻、それに18歳の嫡男だ。

彼らは長い耳が特徴的な妖精族(エルフ)で、最も古い家柄の一つだ。

そして嫡男のオーウェンはアイリ姉様の婚約者だ。

自己紹介とお祝いの言葉を言って戻っていった。


次に来たのはキュリオス公爵家。

彼らは人族で、ここ4代ほどで成り上がった貴族だ。

当主、正妻に加え、娘2人もつれてきている。

14歳の次女と12歳の三女を紹介された。

おそらく婚約者にでも推薦しようと連れてきたっぽいのだが、2人とも見た目がふくよかというかデ...おっと。

とにかく婚約はないだろう。ボクも嫌です、ごめんなさい。


3番目はアルタ公爵家。

ドラゴンのような鱗を持つ竜人族で、当主は現将軍でもある。

当主と正妻のみで、お祝いの言葉を言うと戻っていった。


最後の公爵家はファルム公爵家だ。

彼らは人族で、帝国の医療研究をけん引している。

当主と正妻、嫡男を連れてきており、挨拶をして戻っていった。


ここまでが四大公爵家と呼ばれる最も力を持った貴族達だ。

この後は”三侯”と呼ばれる辺境伯家が三つ。

この三つの家は南に領地を持ち、ルギウス家はマジク王国、ヘリオス家は神聖国、ラヴァ家はカルマ王国と国境を接しており、国防を担っている。


その最初であるルギウス家が挨拶にやってきた。

彼らは褐色の肌が特徴的な魔人族だ。

当主と嫡男だけであり2人ともガチのガチムチだった。

そして嫡男のバルクは20歳で、イルシア姉様の婚約者だ。


次はラヴァ家。

彼らは長い舌と瞳孔の形が特徴の蛇の獣人族らしい。

当主に加え、娘もつれてきていたが、ボクよりも15歳年上だった。

なんで連れてきたの?


最後にヘリオス家。

彼らは人族で、代々光属性が受け継がれているそうだ。

当主と次女の2人だけだったが、ボクはここで運命の出会いをする。

当主の挨拶が終わると、ボクと同い年の次女をし紹介される。

「こちらが次女のエリザヴェートです。」

ボクの前で礼をした彼女...エリザヴェート嬢は物語に出てくるような美少女だった。


輝く金の髪、サファイアのような青い瞳、やわらかな微笑み。

ボクが最初に感じたのは”うわあ、すごい美少女だ”という単純な驚き。

しかし運命のいたずらか、思いもよらないことが起こった。


「えっ?」

「あれ?」

突然ボクの体から魔力が噴き出てくる。

彼女からも同じように魔力が一気に放出されている。

あふれた魔力はボクと彼女の間で混ざり合ってまたボクの体へと戻ってきた。

会場の貴族達には驚いたようなざわめきが広がっていく。


「今のは...?ッ!!」

不思議に思って彼女の方を見るとなぜか彼女が輝いて見えた。

見惚れていると目がパチリと合う。

だんだん体が熱を持っていく。

向こうも同じなのか頬を朱に染め、潤んだ目でボクを見つめている。


「ほう、共鳴か。珍しいな」

「あ...!」

父様の言葉でハッと我に返る。


「そのようでございますね。いやはや、娘のわがままを聞き入れて連れてきたらこのようなことが起きるとは。」

ヘリオス家当主、アルバートさんがそう驚いた表情で話した。


「あの、父様?共鳴とは何でしょうか」

「共鳴というのは魔力の共鳴のことだ。共鳴が起きるのは運命の相手だと言われている。それが起きるのは一人だけかもしれないし、何人もいるかもしれない。それと性別の違いも関係ないらしい。本当に相性のいいもの同士にしか起きないのだろうな。」

えっと、ということは...この子がボクの運命の相手?


「ふむ、そうだな。せっかくだから挨拶が終わったら控室に二人で待っていなさい。私はアルバートと少し話をする必要が出てきたからな。」


その後、貴族達からの挨拶を終え、晩餐会を楽しんでパーティーはお開きとなった。

そしてボクと彼女...エリザヴェート嬢は控室で向かい合って座っていた。


「あ、あの...」

「は、はい、なんでしょう第三皇子殿下。」

「あ、ケントでいいよ。えっとエリザヴェート嬢」

「わかりました。ではケント殿下、と。私のことは呼び捨てで構いません。」

「じゃあ、え、エリザヴェート、でいいかな?」

「は、はい...」


お互いに緊張して話が全く進まない。

あまり目も合わせられず、下を向いているばかりだ。

なんとかこの気まずい状態を打破しようと試みる。


「「あの!!」」


被った。完全に被った。

同時に顔を上げたので目がばっちり合う。


「ふっ」「クスッ」


「「あははははは!!!!」」


なんだかおかしくなって二人一緒に笑った。


「あはは、ごめんね。ボクから話してもいいかな?」

「はいっ。お願いします。」

ひとしきり笑った後、ボクから話を切り出す。


「えっと、魔力の共鳴っていうのがさっき起きたんだよね。ボクびっくりしたよ。突然あんなことが起きるなんて」

「私もです。いきなり魔力があふれて驚きました!皇帝陛下がおっしゃるには私たち運命の相手らしいですね!ふふっ」

少し頬を染めながらそう言われ、ボクも気恥ずかしい気持ちになる。


「そうみたいだね。なぜだか分からないけど君と見つめあうと胸が高鳴るというかそんな気持ちになるんだ」

え?なんでボクこんなに正直にナッテルノ?絶対恥ずかしいこと言ってるのにこの子になら大丈夫な気がするというか...

「あの、私もです。ケント殿下のことを見ているとすごく、そのドキドキします...」

可愛いなこの子。恥じらうところとかヤバい。


その後ボクとエリザヴェートはお互いの好きなものや嫌いなものを教えあったり、いろんな話をした。

驚いたのは、シルフィを紹介するとシルフィがすぐにエリザヴェートに懐いたことだ。

ボクとエリザヴェートは父様たちが来るまで時間も忘れておしゃべりして、父様が来る頃にはもうお互いのことを深く知り合う仲になっていたのだった。


「どうやら仲を深めたようだな。」

父様が入ってきた時、ボクとエリザヴェートは、一緒にシルフィを撫で繰り回しているところだった。


「そうですね、陛下。では...」

「ああ、話をするとしようか。」


父様はボクの隣へ、アルバートさんはエリザヴェートの隣へ座る。

そしてボクの人生のこれからを大きく変えることが伝えられた。




「ケントとエリザヴェート嬢は正式に婚約することが決まった。」

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る