第2話 家族のぬくもり①
それから時が流れ、ボクは4歳の誕生日を迎えた。
言葉を理解できるようになり、少しずつ話せるようにもなってきた。
口調も年相応のものに変えて、今ではこれが自然になってきている。
ちなみに最初に話した言葉は日本語でいう”ママ”である。
これを聞いた母は狂喜乱舞し、父や兄姉達はこぞって名前を呼ばせようとしてきた。
毎朝起きるとメイドさんがやってきて着替えを手伝ってくれる。
鏡の前に立ち、姿を確認する。
今世のボクの姿は銀の髪に赤紫の瞳、父と母によく似た美形で姉には女子の服を着させられそうになったこともある。
着替えが終わると別のメイドがやってきてボクに告げた。
「ケント殿下、おはようございます。今日はケント殿下の4歳の御誕生日ですね。おめでとうございます。皆様はすでにお待ちですので会場にお連れ致しますね」
家族はすでに僕を待っているらしい。
ボクはメイドさんに手を引かれ、家族の待つ部屋へと向かった。
そういえばだが、やはりここは城であり、かなりの大きさだ。
イメージとしてはホ〇ワーツだろうか。
大きな扉の前までやってくると、メイドさんが扉をノックする。
「ケント殿下をお連れ...」
「入れ」
ん?めっちゃかぶせてきたけど?
メイドさんが扉を開けボクは中へ入った。
「おはよう、ケント。よく眠れたか?」
最初に声をかけてきたのはボクの父親で、現皇帝の”ガルダ=レクス=アル=ラ=オルフェウス”。今は48歳で赤みのある金髪に黄金の瞳が特徴的だ。
「おはようケント。こっちへいらっしゃい」
ボクを呼んだのは母親で、皇后の”オリヴィア=イア=レ=オルフェウス”。42歳とは思えぬ若々しさで、桃色の髪に鮮やかなマリンブルーの瞳がどこか優しい雰囲気を醸し出している。
ボクは大好きな母様のところへ駆け寄る。
「あっ!殿下!急に走っては!」
うわっ!つまづいた!こける!
倒れこみそうになったボクを風がふわりと受け止めた。
「こら、ケント!急に走ったら危ないだろ?」
風魔法で受け止めてくれたのは兄弟姉妹の一番上、長男で皇太子でもある、”エルヴァ=アル=ラ=オルフェウス”。今は22歳。金髪に少し黒髪が混じっていて、神秘的な碧の瞳を持っている。
「こけなくてよかった。お姉ちゃんの抱っこでお母様のところまで行きましょうね♡」
そう言ってボクを抱き上げたのは兄弟姉妹の2番目、長女の”エファ=イル=レ=オルフェウス”。つい1か月前に20歳になったところだ。薄紫色でサラサラのロングヘアに濃い紫の瞳を持つ。
「あっ!エファ姉様ずるい!私もケントのこと抱っこしたいのに!」
エファ姉さまのそばに駆け寄ってきたのは次女の”イルシア=ウル=レ=オルフェウス”。今は17歳。燃えるように紅い、肩あたりで切りそろえた髪と黄金色の瞳で、活発な印象を与える。
「よかったね」「ケントがこけなくてね」
そして息ぴったりな双子、三女の”アイリ=エル=レ=オルフェウス”と次男の”マルク=エル=ラ=オルフェウス”。今はこの世界で成人とされる15歳だ。
アイリ姉様は黒髪のミディアムヘアに左目が黄色、右目が青色。
マルク兄様は黒髪を短めに切りそろえていて瞳はアイリ姉様の逆。
十人十色とはよくいうものだが、ここではもっと色があるみたいだ。
それと父様に側室はおらず、ここにいる全員を母様が生んだらしい。
後に知ることになるがこれはかなり珍しいことだそうだ。
ボクはエファ姉さまに抱っこされ、母様のところへ。
そしてなぜかイルシア姉様を経由して母様の腕の中に納まった。
「エルヴァ、お手柄だな。ハッハッハ!」
父様が笑うと場は和やかな雰囲気に包まれた。
「エルヴァ兄様、ありがとうございましゅ!」
か、噛んだ...。恥ずかしい...!
エルヴァ兄様は少し耳を赤くしてそっぽを向き、
「あ、ああ。弟を助け、導くのも兄の役目だからな。」
と、こう言った。
「てれてる~」「てれてるね」
エルヴァ兄様の向こう側にいたアイリ姉様とマルク兄様が息ぴったりに言った。
「まあ、雑談はそのくらいにしておこうか」
少しの喧騒は父様の鶴の一声ですぐに静まる。
4歳は特別な年齢だ。なぜかは知らないけどそう言い聞かされてきた。
何があるんだろう。すごくドキドキしている。
「では今から...ケントの4歳の誕生祭を行う!」
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