幼年期~可愛い婚約者ができるまで~
第1話 言葉が分からないんですけど!?
目が覚めると転生してました。
ということは俺は死んでしまったんだろう。
あの時、玄関で倒れこんだところまでは覚えている。
まあ、あのクソみたいな社畜生活、というより奴隷生活から抜け出せたんだから良しとしよう。
今の俺の名は”ケント=アリフ=ラ=オルフェウス”
なんて長い名前だ!と叫ばずにはいられない。が、今の俺の口から出るのは泣き声とよだれだけ。
俺が転生してどれくらいだろうか。
前世の感覚だと大体1年くらいじゃないかと思う。
ただ、まずいことに言葉が分からない。
俺の身の回りの世話をしているメイドさんの”ケント殿下(様?)”はわかる。
あとミルクの時間ですよ的なやつ。
よく会いに来る父と母の言葉も一向に分からない。
言語理解が異世界転生のテンプレ?何それオイシイノ状態だ。
え?なんでフルネームを知っているかって?
それはまさにテンプレの化身であるステータス画面のおかげだ。
意識したら目の前に現れる。
父と母が何か水晶みたいなので俺のステータスを見ていたから気づけた。
【名前】ケント=アリフ=ラ=オルフェウス
【性別】男
【称号】オルフェウス帝国第三皇子
【属性】《聖》《無》
【位階】1
これが俺のステータス。
ゲームみたくHPとか出てくるのかなとも思ったが出てこなかった。
そして称号を見ればわかるように俺はどうやら皇族に転生したらしい。
メイドさんがたくさんいるのにも納得できる。
それと第三皇子ということは少なくとも二人兄がいるということだ。
しかし、不思議なことに父と母、それにメイドさん以外の人間にまだ会ったことがない。
1年くらい経っているのにおかしなことだ。
それから1週間くらい経っただろうか。
その日俺はワゴンに乗せられ、初めて扉の外へ出た。
長い廊下をワゴンに乗ったまま進んでいく。
そして大きな扉の前まで来ると、メイドさんが扉をノックして何か言った。
中からおそらく父であろう声が聞こえてきて、メイドさんが扉を開ける。
その部屋には大きな机があり、席が7つ。
一番奥の2つ並んだ席には父と母が座っていた。
俺の乗ったワゴンは母の隣まで行き、俺は母に抱きあげられる。
父がほかの5人へと何か話しかけている間、俺は母の乳を吸っていた。
ちょうどおなかも空いていたのだ。もう少しで泣き叫ぶところだった。
離れがたいおっぱいの魔力から解放され、おなか一杯になった俺はげっぷさせられた後、椅子に座る他の5人を眺めていた。
髪の色も瞳の色も様々な5人だが、たぶん俺の兄や姉たちだろうと思った。
父と母に少し似ているように見えたからだ。
その後父の話が終わると少し離れたところの兄姉たちは母に抱かれている俺のもとまで群がってきた。
兄姉たちは俺のことを撫でたりつついたりしてきた。
改めて父母含め家族を見てみると全員が美男美女だった。
これが遺伝の力かと思ってしまうのも仕方ないだろう。
それから毎日、家族が俺のところまでやってくるようになった。
相変わらず言葉はわからないが名前だけは聞き取れる。
というか呼ばせようとしているのか、真剣に名前を連呼していた。
そこに父と母も加わり、すごくカオスな状況になってしまっていた。
どこかおかしくて思わず笑ってしまう。
「きゃはは!きゃはっ!きゃははは!」
笑い声も赤ちゃんだった。
すると家族は俺のほうを見てすこし固まっていたが、すぐに騒ぎ始める。
薄紫の髪の姉は紅い髪の姉と歓声を上げてはしゃいでいる。
一番背の高い金髪の兄は双子の黒髪の兄と姉に挟まれ、その双子の兄姉は俺を指さして何か興奮した様子で話している。
父と母は寄り添い、母は涙を流していた。
あれ?笑っただけでなんでそんなに...あ!もしかして初めて笑ったからか!?
確かにこの世界に来てからは笑っていない...気がする。
そうか、初めて笑っただけでもこんなに...
自分は家族に愛されているみたいだ。よかった。
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