第1話 鏡の少女

 昨日結局疲れて家で読めなかったあの本を放課後図書室で読むことにした。


 1つページをめくると、『1 鏡の少女』とタイトルが書かれており、簡潔にその1の怪異について記されていた。



『1の怪異、鏡の少女は北階段の2階と3階の間の踊り場の鏡では午後4時44分に人が通ると白いワンピースの可憐な少女が現れる。少女は「髪飾りを探して」と一言だけ残して鏡の中へ消えていく。髪飾りを渡さないと鏡の世界に連れていかれるそうだ。』と書かれていた。


 次のページをめくると、その怪異のことが詳しく書いていた。

 Aさんは1分前に鏡の前へ立って待っていたが、44分になっても来ない。

 しかし45分になった時、少女は現れた。

「まぁ、あの本古かったし、間違いもあるか。」

 そのまま少女に話しかけた。

 本通り少女は「髪飾りを探して」と言い残し、鏡に戻って行った。


 しかし今考えたら、髪飾りがどういう色で、どこにあるのか、一切手がかりが無いことに気づいた。

 本に手がかりがあるかもしれないと、ページをめくったが、ない。他に情報がないかと担任の先生に許可を貰い、パソコンルームで調べてみることにした。『桜宮中学校の怪異 鏡の少女』と調べてみたが、中々出てこない。1時間くらい経って、やっと一つの情報が出てきた。そのホームページにはこのようなことが書かれていた。


『鏡の少女はここの階段で5時45分に転落死した本校の生徒である。そのときに落とした髪飾りと友達がいなかったことを未練として、その踊り場にいる。』と…

 転落死したのなら踊り場の窓と、階段の何処かにあるのだろうと思ったが、見つからない。何年前かも分からないのにあるはずがない。と思った。そのとき突然鏡が光った。鏡に近づき触ると、手がすり抜けた。私はもうここでしかチャンスはないと思い覚悟を決めて中に入った。あたりを見渡すと、なにも変わらない景色が広がった。


「なんだ〜なにもないじゃん〜」と思っていたが、私はなにか違和感を感じた。全ての物が逆になっていたのだった。まさかここに髪飾りがあるんじゃ…と思い、必死に探した。


 見つかったのは黄緑が中心の綺麗な花の髪飾りだった。

 やっと見つけたので、鏡から元の場所へ戻ろうとしたが、戻れない。もう一度試して見たが戻れない。

 あの時どうやって入ったか思い返したが、思い出せない。光ったことは覚えてる。

 どうやって光ったのだろう…と考え込んでいる間に、後ろからささやく声がした。


「ねぇ…私の髪飾り見つけてくれた?」

 えっ?まさか…

 私は後ろを向いた。

 誰もいないと一瞬感じたが、しかしそこにはナイフを持った、白いワンピースの女の子がいた。

 少女はナイフを振りかざそうとした。

 わたしはすぐ髪飾りを持って、言った気がする。

「君を見てくれた人という友達は絶対にいたはずだよ。思い返してごらん。」と。

 少女はすぐに気づきナイフを持っている手を止めた。少女は泣いていた。

「ありがとう。」と少女は笑顔で泣きながらそう言い残し、姿が霧のように消えていった。

 視界があの茜色の光に満ちていく。

 目を覚めたら、あの鏡の前にいた。

 あれは何だったのだろう。夢だったのかなと…思ったが、少女が代わりにつけていた青のリボンが手についていた。

 すぐ外を見ると、空が赤く染まっていた。

 時計は5時45分と時刻はそのままで…


「これ本当なのかな?けど、物語だから

 ありえないか…」

 音香は次のページをめくった。

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