1冊の本を手にしたら

星崎藍苺

プロローグ

 本って無限の世界が広がってると思う。

 ある放課後のこと、春木音香はるきおとかは、6月なのに真夏日のこの日。北校舎の4階。あまり日の当たらない薄暗い図書室に来ていた。彼女は本を読むために、体を涼しくする為に来ていた。

 この図書室は古いせいかクーラーもない。

 そして日が当たらないこともあり、逆にムシムシする。そんな環境だ。

 ここには司書の先生と音香の2人しか居ないのだが、暑いこともあり、窓が全て開き、3つの扇風機がフル稼働している。


 音香は本が好きすぎていつも放課後に4時間、きちんと担任の先生と司書さんに許可を貰って、この図書室に来ている。

 入学してから6ヶ月経った今。

 ほとんどここにある本を読んでしまったのだ。

 なので本を探しているのだが、中々見つからない。



 しかし、誰も見なそうな本棚の上を見ていると、ある赤と黒が混ざった不思議な1冊の本に目がいった。

 本を本棚から取り出してみると、埃が全体に舞った。


「それほど読まれておらず、古い本なのだろう」と音香はワクワクしながら表紙を見た。


 この本は扉絵がなく、『桜宮中学校の怪異』というタイトルしか書かれていない。

 1番後ろのページを開くと、

『所蔵日1998年12月30日』と書いてある。

 今日は2018年6月10日なので、20年前の本だ。そして今更気づいたのだが、図書室の本全てにあるバーコードがない。

 そこで司書の先生に聞いてみることにした。


「この本バーコードがないんですけど、大丈夫なんですか?」と音香が問いかけると、


 すぐ司書さんは「ちょっと待ってね」とカウンターにあるパソコンで調べてくれた。



 調べた結果、この本は図書室にある本としてデータがなかったそうだ。司書さんは図書室にあったということは多分今年廃棄されたもので、委員会が間違えてそのまま戻してしまったのではないかと言っていた。


 言われて気づいたがシールの跡がある。


 司書さんは

「見つけてくれてありがとう」と回収しようとしたが、私はすごくこの本が気になってしょうが無かったので、家に持って帰ることにした。


 本を渡されたときに司書さんは持って帰ってもいいけど、あとで返してほしいと言った。 



 私はこのとき思わなかった。この本ひとつで色々なことに巻き込まれることを。

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