23 誰にも言えない


 1


 都内某所。

 晴れてTWISTと正面から手を結び、共に戦うことを表明したアイル・コーポレーションは、それに伴う株価の上昇とスポンサーの増加・高水準化により、さらなる発展を遂げようとしていた。

「じゃ、ちょっと行ってきます」

 それまで使ってきた社屋も、思い切って移転。オフィスというよりも依然ラボラトリー的な側面を多く必要とするため、新社屋はオフィスビルの一室などではなくガレージ付きの単体事務所となった。

「いってらっしゃい!」

 社長が社長だからか、アイルの社内は非常に風通しがよく、社員ものびのびと働いている。フレックスタイムやパワーナップ、リモートワークなど、世の中の様々な働き方のデザインを敏感にキャッチし、社内でも欲しいと判断すればすぐに取り入れる。

 アイルスタイル運用開始当初はその正義感の在り方においてTWISTと齟齬こそあったものの、会社を守り育てる気持ちは今日までブレずにその心に根ざしてきたものらしい。


 三宅自身の身体もだいぶよくなってきた。

 装着すれば最後、機能停止に至るまで止まらずに暴れ続けるビークル型スーツ・ライノローブの暴走を食い止めるべく、その身をライノの眼前に呈し、自らを盾として立ち塞がった三宅。その衝撃とダメージは表現を絶するものがあり、彼自身も社長業の一環としては当初微塵も想定していなかったような身体的苦痛を伴った。

 しかし、TWISTのメディカルチームによる治療・施術の甲斐あって、回復もまた想像を超える勢いで進んだ。TWISTと共に戦うことには単純な戦力数以上のメリットがあると、三宅は内心こっそりほくそ笑んだ。もちろん、最大限の感謝と共に、だが。

「よし…今日もバリバリ働きますかね! なんせ社長は忙しいのよっと!」

 三宅比呂の軽快な足取りが、穏やかな日差しに暖められたアスファルトを踏み鳴らした。


 ◇


「ふぅー……」

 機動室メインルーム内のトレーニングブースは、ステラ装着員にとって大切な自己管理設備である。

 赴任初期の南城に特に顕著に見られたように、ステラシステムの装着には一定の負荷が伴う。現在ではその負荷はほぼ改善され、フラットな状態で戦闘や救助活動に集中できるようにまで至ったものの、とはいえやはり適性のない素人が安易に動かせる代物でもない。依然として、装着員の日々弛まぬフィジカルケアが必須となっていて、今まさにその最中にいた南城がブースから出てきたところだ。

「お疲れ様」

「どうも。高槻さんもたまにはどう?」

「私は個人的にジム行ってるから平気です〜」

 メインルームは通報を受けての状況把握や作戦設定、現場への指示に使われる司令室としての役割を担いつつ、平時は機動室メンバーのオフィスを兼ねており、トレーニングブースもそのホスピタリティの一環に過ぎない。高槻は自分の仕事にひと段落ついたのか、休憩用ラウンジスペースで一服していたところだ。

「それよりねえねえ! 彼女さんってこれ?」

 嬉々として高槻が差し出してきたのは、自身のスマホで再生している動画。楽器店の運営するものと思しきチャンネルにあげられた、店内紹介動画だ。

「ああ、わざわざ探したんですか。そうですよ」

「めっちゃかわいい〜! 憎いね〜南城李人くん!」

「よしてくださいよ」

 その動画の主役は瀬奈だった。店長に頼まれてPRをやってほしいと言われ、渋々引き受けたという話を少し前にしていたのだ。ぎこちない笑顔を浮かべた瀬奈が、棒読み気味に店内の様子をレポートする。

「もしいつか瀬奈に会うことがあっても、この話しないでくださいよ。俺が会社で瀬奈をからかってたみたいになっちゃうんで」

「そんなことしないよ〜。…あ、ねえ、そういえば滝沢さんは?」

「ああ…」

「いっつも一緒にやってたのに、最近寂しいね」

 南城が目を伏す。高槻の認識通り、滝沢はいつも南城と一緒にトレーニングに励んでいるが、今日——いや、ここ数日、その光景は見られていない。

「やっぱ体調不良、続いてるみたいで」

「…そっか」

 そして内心本当は、高槻もその理由を聞くまでもなく察していた。滝沢の身体が不調を訴えていることは、機動室内でも周知のことで、皆滝沢の体調を案じる日々が続いていたのだ。

「どうも、頭痛がひどいようですね」

 補足を挟んでくれたのは葛飾。ステラシステムの技術的な相談をメディカルチームと交わすことが多いため、メンバーの体調についても話を聞きやすい立ち位置だ。

「ステラと関係があるのか、念のため個人的に調べるつもりでいますが……南城さんはなんでもないんですよね?」

「俺は、全然」

 不穏なのは、その頭痛が滝沢にしか現れていないということだ。やはり、持病か何かか。

「大したことないといいんですけどね…」


 着装端末犯罪の通報は、いつも突然飛び込んでくる。

 それもそのはず、前もってアナウンスしてくれるルナローブなんてのは存在しない。


「ルナローブ出現……プライムローブも一緒です!」

 すぐさまきりっとした声色に切り替わる高槻。相変わらず、モードの切り替えが見事である。

 その声に呼び寄せられるように、メンバーがメインルームに集結する。

「このエリア、所轄署まで結構距離あるな。速攻出動しないとやばいぞ」

 対馬が危機感を煽る。都心を少し離れた、郊外のさらに端の方のエリアだ。

「プライムローブが出現している以上、充分な注意が必要なことに変わりはないわ。各自しっかり連携を」

 杏樹の喚起に頷くメンバー。

「…大丈夫なのよね」

 その中には、滝沢の姿もあった。

「あ! 滝沢さん!」

「あーうるせえな。真横で大きな声出すな」

「だって頭痛は——」

 深刻な表情で滝沢に訴える南城。しかし滝沢はお得意のはぐらかしで、軽く片手をはためかせながらそっぽを向いてしまう。

「…あなたが大丈夫だというなら、それを信じます。——コード01、ESM移行。着装端末犯罪鎮圧処理を実行!」

 杏樹が声を張り、メンバー全員が了解の応答を返したことにより、一抹の不安を無視したままミッションは開始されることとなった。


 2


 シューターを駆け抜けると、三体のステラの航路は薄暗いトンネルの緊急避難路に出た。戦う度に葛飾のメンテナンスを受け、常にぴかぴかの状態に戻されている装甲が、等間隔に並ぶ薄明かりをぱたぱたと瞬くように反射させ続ける。

「根室、どうだ」

《現在人的被害は確認されていません。ローブとプライムローブは常に行動を共にしていて……ただ、行動には何か、計画性のようなものを感じます》

「計画性ねえ…」

「闇雲に人を襲ってるんじゃなくて、何か目当てがあるってことですね」

「急ごう。連中のことだ、何しでかすかわかんねえぞ」

 トンネルを抜けると、中規模店舗がまばらに軒を連ねる、郊外特有の雰囲気が彼らを出迎えた。



「はあっ!」

 ローブの特技は、その堅牢な角だけではなかった。

 硬い装甲の下に潜む羽に由来する、強振動の衝撃波攻撃により、中・遠距離の戦闘もカバーしていることだ。

「まずまずですね」

 同行するプライムローブ——レイニー・ホリデイの賞賛は、その衝撃波により粉砕された木造家屋のありさまに対するものであると共に、ローブの装着者がその力に慣れ始めていることに対しても兼ねていた。装着者たる部下の男も、自らの感想を伝える。

「あくまでも初期ロットに過ぎないと聞いていましたが……十分な機動力かと」

「ええ」

 先の賞賛とは対照的に、その返事はどこか気持ち半分に感じられる、空洞感のある返答だった。

 他でもない。

 くるりと身を翻したレイニーの視線の先に、三体のコンバットスーツの影が見受けられたからだ。

「彼らに対しても、同じことが言えるかどうか……ですが」

「また会ったな、レイニー」

 因縁深げにジェイドが挨拶を投げる。

「今日はなんの遊びだ、雨傘野郎」

「おっと、ご挨拶だなあ。こう見えても大真面目に仕事中なんですよ」

 セルリアンの売り言葉を、レイニーは買ったのか流したのか、飄々とした口調をそのままにそう返した。

「ご紹介しましょう。こちらはビートルローブ、その名もトゥルー・ブルー。我が社が開発した、今までとは一線を画す新しいルナローブシリーズ、アルファタイプのテストモデルです」

 レイニーのご丁寧な説明を受け、ビートルが一歩前に出る。もちろん一礼などするでもなく、あくまでも警戒体制というような表情と身構えで、キッとステラたちに一瞥をくれた形だ。

「礼儀正しい奴だな、立派な挨拶だ」

 ジェイドも負けない。

「今までのルナローブのデータをもとに、また一段と趣味のいい代物をこさえたってわけか」

「その試運転…ってことですか!」

 差し詰めそのローブの装着者は一般人ではなく、れっきとしたヴォーグの社員、その中でもこの実験にふさわしいフィジカルの持ち主を起用したというところだろう。セルリアンとマンダリンの問いかけに、レイニーは見えない笑顔で答える。

「さすが、同じく高貴なスーツに身を包むもの同士だ。お話が早くて助かる」

「そんな悪徳スーツと、俺たちのステラ一緒にしてんじゃねえよ」

 喧嘩腰のセルリアンに対して身を乗り出したビートルを、レイニーは一旦制する。

「そうでしょうか? 大差はないでしょう。今からご自身の身をもって、実感していただけるはずだ」

「……どうせそれが目当てだったんだろう」

「さすがは私の認めた戦士だ、ステラジェイド。あなたの腕を見込んでぜひ、お手合わせ願いたい」

《皆さん、ビートルローブに流れるエネルギー回路からは、これまでのローブをゆうに越える数値が検出されています……気をつけてください》

 レイニーの言葉に飲まれる前にと、滑り込むように根室の声がステラたちの耳に届いた。確かに、その気配は直接顔を合わせているこの雰囲気から察してはいた。舐めてかかってはならない相手であることだけは間違いない、と。

「……参ります」

「ええ、存分に」

 笑みを含んだ声のレイニーに送り出され、ビートルがずっしりと歩き出す。その手には、角の形を模した大剣が一本。

 すでに手のつけようがなくなったローブを食い止めにかかることがほとんどだった彼らにとって、こうも真正面からしっかりローブと立ち合うのはかつてない経験だった。

「行きましょう」

「おう」

「…はい」

 ジェイドが、SSジェイドブレードを片手に携えて歩き出す。セルリアンは少し後ろに位置取り、RPセルリアンマグナム・タクティクスモードによる援護射撃の姿勢を整える。マンダリンは地上から足を離し、セルリアンより遠巻きになって、PSマンダリンファンネルを展開する。

 ガキン、というけたたましい激突音が空を切ったのは、そのごく一瞬後のことだった。瞬く間にビートルとジェイドの二人が地を蹴って疾走しだし、はなから衝突させようとでもいうように、それぞれの剣を押し出した。

「くっ…!」

「っぐ…これが、今までルナローブをスクラップしてきた力…というものですか…!」

 無駄口を叩いている余裕があるのか、と言う間も無く、ジェイドの手元からビートルの剣が離れていく。反発する磁石のように後方へ跳んだビートルは、体制を立て直したのか再び迫ってくる。

「はい熱くなりすぎんなよー!」

 そのビートルの足元に、セルリアンの銃撃が火花を散らす。牽制に過ぎないと察知していたのか一切怯まないビートルの様子に、危うくセルリアンの方が熱くなってしまいそうになる。

「ちったあやるよう…だなっ!」

 もう容赦はない。銃撃は足元ではなくビートルの装甲を真っ向から狙う。艶やかに黒光りする装甲に火花と煙が立ち登るが、やはりビートルは怯まずジェイドに斬りかかる。よほど堅牢らしい。

「くそ……七尾! 最適な援護手段を教えてくれ!」

「算出中です! ひとまずウォールズとファンネルの連携で行きましょう!」

 おう、と叫んだセルリアンの全身から、合計四基の自律駆動シールドが分離する。マンダリンも十二基中四基のファンネルを向かわせ、ウォールズとともにビートルへ迫る。

「ステラジェイド、お前の腕は認めよう。だが仲間の援護が辿々しすぎるのではないか?」

「大きなお世話だっつうの!」

 一文字一文字に力み入るようにずっしり言い放ったジェイド。最後の一息とともに、ビートルの大剣を押し返す。お互いの姿勢がよろめき、再び体制はリセットされる。

「本当のことを……言ったまでだ!」

 ビートルは大剣を大きく振り回す。しかし闇雲、投げやりな動作ではなく、その切先にことごとくウォールズとファンネルがあった。合計八基で飛び回り攻撃していたウォールズとファンネルのうち五基が薙ぎ倒され、続行不能と判断した残り三基が親元へと帰還する。

「あいつ……いや、あのスーツの力なのか知らねえが……」

「強い……!」

 一応、迎撃・援護システムとしての水準も十分に満たしているはずのウォールズ・ファンネルを、これほど安易に討ち払ってしまったローブはいなかった。マンダリンは策を練らねばと再び分析に入る。

「ジェイド。あなたの成長は目まぐるしいものがある。あなたの戦闘データも組み込んだはずのビートルが、今のあなたに押し返されるとはそういうことです。面白過ぎる……」

 おもむろに口を挟んできたレイニー。そして、その手には斬撃武器・アンブレラ。

「……面白過ぎますよ! あまりにもねえ!」

 嬉々として、なおかつ猟奇的な表情を全身に宿し、ビートルとの戦いにレイニーが乱入。いや、むしろビートルを差し置くかのようにレイニーは衝動的に身を乗り出してきた。その証拠に、ビートルは数歩遅れてジェイドに再接近する。

「くっ…! 今日は試運転の日なんじゃないのか!」

「興が乗ったというものです! あなたの力をもっと見せてください…!」

 あくまでも余裕の表情、どこか透明でもあるかのような、掴みどころのない不気味さをまとってきたレイニー。その彼がこれほど生き生きとして、乱れるように剣を振りかざしてくる。これが彼の本性であり、鳴りを潜めていた本能、欲求なのだ。

「くっ…! ああ!」

 乱舞するアンブレラの連撃に、いざ応じんとするとジェイドはついていくので手一杯だった。一手先が読めるか、読めないか。その際どい応酬の中に、間々挟み込まれるビートルの攻撃——どこか、レイニーの興奮を邪魔しないようにと気を遣っているようでもある——。今のジェイドが到達できる限界値があるいはここなのではないかと、南城自身にもまさに感じられた。

「七尾! どうだ!」

「……あらゆるパターンを試算してるんですけど……」

 マンダリンの言葉の続きを、セルリアンはなんとなく察した。この状況でジェイドを救出する方法は、ないか、あっても不足があるか、相当の危険を伴うかだ。

「……七尾、お前は引き続き分析を頼む」

「…え?」

 次の瞬間、セルリアンはマグナムをアクションモードに切り替えながら、突如として思い切り走り出した。

「滝沢さん⁉︎」

《滝沢くん? 狙撃位置に戻って!》

 マンダリンや杏樹の制止も無視し、真っ直ぐにジェイドたちのもとへ走るセルリアン。

 乱れる剣の応酬に夢中なレイニー——精一杯なジェイド——の世界をぶち壊すかのように、セルリアンはレイニーへ真横から強襲的に蹴りを見舞った。

「がっ………!」

「っ! 滝沢さん!」

 どさどさと勢いよく転げ回ったレイニー。完全に不意を打たれた形だ。

「はあ…はあ……最初の頃にも、こんなんあったな」

 仮面の下でセルリアンが笑った。レイブンローブに優勢を取られていたジェイドを救い、高台まで引き上げたあの時も、ローブに強烈な蹴りを見舞ったっけ。

「滝沢さん……ありがとうございます」

 思わず尻餅をついてしまっていたジェイド。見上げた先のセルリアンに一礼を告げ、のっそりと立ち上がろうとする。


 そこから再び顔を上げるまでの一瞬、なぜその一瞬、僅かにでも気を抜いてしまったのかと、南城はその後しばらく悔いることとなった。


「貴様!」

「うおお! っとお…」

 振り向きざまのセルリアンに、ビートルローブが襲いかかった。咄嗟にセルリアンは足元に転がっていたSSジェイドブレードを、器用に足で手元まで飛ばし、キャッチして応戦した。ビートルの大剣を、ジェイドブレードで受け止めたまま拮抗する。

「そういえば、まだお前がいたな」

「なんてことをしてくれた……とんだ無礼を!」

 トゥルー・ブルー……”忠誠”の名が、まさに体を表しているようだ。愛社精神の塊だなとセルリアンは皮肉を飛ばした。

「お前、強いのな……南城が苦戦するわけだ」

「貴様の方は随分頼りないようだがな。与えられた役割のもとではなんの助けにもなっていなかったぞ」

「うるせえな……社畜に言われたく……」

 そこまで言いかけて、セルリアンの達者な口が止まる。

 仮面の下で、滝沢の顔に、苦悶に悔しさが混じったような表情が浮かび上がる。

「くっそ……こんな時に……!」

 ビートルの大剣を受け止めるセルリアンの両腕が、みるみる押し込められていく。

「なんだ、時間切れか?」

「う…るせえ……」

 その声も徐々にか弱いものになってゆく。ジェイドもその異常に気付き、すぐさま二人を引き離そうとするが——。

「水を差してくれましたねステラセルリアン……! ジェイド、あなたの相手は私だ!」

 再起したレイニーが、ジェイドを引き留めてしまう。

「くっ! 今お前の相手なんか……!」


 レイニーを振り解こうともがきながら、再びジェイドがセルリアンの方へ目を戻したのと、同じ瞬間。

 ビートルの大剣が一直線に、セルリアンの装甲を斬り裂いた。

「滝沢さん!」

 脳天から爪先へ、真っ直ぐに弾ける火花とともに、セルリアンが力なく倒れる。

 その仮面は破損し、端正な顔が血塗られた状態で露出した。

「嘘だろ…! 滝沢さん!」

 容赦無く二度目の斬撃を振り下ろそうとするビートル。反射的にジェイドはセルリアンのマグナムを拾い上げる。アンダースーツが露出した装甲のない部位を見つけ、咄嗟に引き金を引いた。

「がっ!」

 ダメージになどおよそならない、ささやかな牽制の域を出ない銃撃だったが、充分だった。怯んだビートルの隙を見て、ジェイドはセルリアンに肩を貸す形で跳び上がり、バーニアフル出力でビートルらと大きく距離をとった。

「滝沢さん! 大丈夫ですか! 滝沢さん!」

《南城くん! 七尾さん! 戦闘続行は不能! 一刻も早く帰投して!》

 杏樹の声も、どことなく張り詰めている。

 いつもの振る舞いからは想像もつかないほどおろおろと動転したまま、ジェイドはセルリアンを抱えて、ビートルたちに背を向けた。マンダリンもすぐさまその後に続くとともに、ファンネルを全基置いていき、追撃せんとするビートルらを食い止めた。


「……雨宮様」

「いいでしょう。今日の成果としては充分です」


 彼を失うのもまだ惜しいですしね、と、雨宮——レイニーは静かに笑った。


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