第6話 空の宝箱下さい!
「ヒロ、このナイフは君が持て!私達には剣や斧がある。」
「いいんすか隊長!ナイフ大切にします。」
「豪気だねぇミスリルナイフを隊員にくれるなんざ」
「ガイルもしかして高いのかミスリルナイフとやらは…」
「高いなんてもんじゃねぇよ、このナイフで小さな家が買えるぜ村ならな」
「…ヒロ、訂正だ、ナイフを貸し与える…」
「隊長ォ今くれるって…」
「四の五の言うなヒロ!部隊の物は皆の物だ忘れたか?」
「トラ先輩…分かりました。いつかこのナイフを買える男になってやるっす」
「おーぉー頑張れ頑張れ!」
「では皆さん参りましょう。洞窟内は私が殿軍を勤めます。」
「ならヒロは先頭私とトラは左右へ展開するリュウはヒロの補助を頼むぞ」
「はい!」
「では突入!!」
「おぉー!」
ヒロを先頭に洞窟内へと突入すると前日巨大なコウモリが居た場所には宝箱もなくコウモリも居ないようだった。しばらく歩いて進むと遠くからカサカサと何かしら向かって来るのがわかった。
「隊長、何か来ます、数は3体床を這う生き物の様です。」
「ムカデかもしれん、ムカデには麻痺毒がある気をつけてくれ」
「ガイル?!ムカデってあの足がたくさんあるムカデか?」
「あぁあんたらの世界にも居たのかあれ」
「あぁ俺はあまり好きではないけどな…」
「来ますっ!」
「ヒロは後退しろ、リュウ剣で行けるか?」
「はい、真ん中を殺ります、隊長とトラさんは左右をお願いします。ガイルさんは皆の補助を頼みます。」
「任された!」
「ウォオリャァー!!」
ガキィーン!と言う金属音が洞窟内に響くと各自ムカデと戦闘となっていた。ムカデと言っても柴犬2匹程もある大きさのムカデだ、恐ろしいにも程がある。
「リュウ!すまねぇ。そっちに向かった後方に注意してくれ、ガイル頼む!」
「よしっ!オリャァァー!」
ブシュッ!っと言う叩き斬る音と共にムカデは息絶えていた。リュウもムカデを斬り捨てていた。隊長は苦戦しながらもヒロの参戦により戦いを有利に進めていた。そして…
ザシュッ!!
「終わったなお疲れ、どうした?トラ元気ないな?」
「隊長すまねぇ、やはりムカデが俺は苦手でよ…」
「ふっ!仕方ない苦手は誰しもあるもんだ、ガイル、トラと左翼交代だ。」
「ハイよ!トラさん後ろ頼むぜ!」
「任せろ、ムカデ意外なら遅れはとらん!」
「ヒロ有り難うな助かったよ」
「ナイフで攻撃するのは初めてでしたが意外と行けるっすねこれ」
「調子にのるなよヒロ、安全第一だ」
「はい!」
「ガイル何をしてるんだ?」
「ん?何ってムカデの回収だよ、外皮は鎧になるし、肉は魔獣を麻痺させる罠なんかに使える脚は錬金術に使えるって聞いたぜ、でこれをこの袋にっと!」
「?!3体のムカデがその袋に入るだと!?」
「あぁこれはマジックバックでな中が魔法で拡張されてんだ。ダンジョンなんかで宝箱にあるんだよ。」
「魔法かぁ不思議な世界だとは思ったが魔法とは凄まじいな。」
「多分あんたらも使えるはずだ、まぁ村に行く事があったらギルドに行ってみな魔法やらスキルの確認が出来るからよ」
「隊長、隊長、俺も魔法使えるっすかね?ウヒョー楽しみだこりゃ」
「全く仕方ない奴だ。リュウ何してんだ?」
「んっ?トラさんこれ見て下さい。」
「穴?壁に穴があるのか?」
「分かりません、でも壁から風が吹き込んで来るんです。」
「よしっ!破壊しよう、退いてろリュウ。行くぞぉー」
ドゴォーーン!!
「トラ先輩やり過ぎっす、斧で壁破壊ってどんだけっすか」
「トラ一応俺に確認してからやれ…一応隊長だからな…」
「すいません隊長…つい挽回したくてその…」
「まぁいい リュウどうだ?何かあるか?」
「小さい穴ですが宝箱が2個有ります。」
「おぉー幸先いいな、どれ見せてくれ」
ガイルが近づくと土埃も晴れてきてようやく辺りも状況が分かるようになってきた。
「罠は無さそうだな、リュウさん開けてみなよ、あんたが発見者だ中身もあんたのもんだ。ダンジョンでは部隊も先輩後輩もないからな、発見者こそ正義だ!」
「リュウ開けてみろ、中身はまぁお前のもんだ。」
リュウが宝箱を開くと…
「なんすかナイフすか?それにしては小型すね?」
「ダガーだな所謂投げナイフってやつさ」
「投げナイフか成る程」
「もう1つもう1つあるっすよ」
「…弓?しかし宝箱より中身が大きいってどんな仕組みなんだこれ?マジックバックと同じなのかこれ?」
「弓か…リュウすまんが弓を私に貸してくれないか?」
「隊長?」
「すまん、俺は田舎で弓道をしていてな剣より弓の方が慣れてるんだよ」
「大丈夫ですよ全ての物は部隊の物ですから隊長!是非使って下さい。その代わりこの空の宝箱俺に下さい」
「空の宝箱なんてどうするんだ?」
「もしかしてガイルさんのマジックバックみたいな機能が宝箱には有るような気がして試してみたいなと…」
「なるほどリュウさん頭いいな、ならこのさっきのコウモリ入れて見てくれ。」
ガイルよりコウモリを受け取り宝箱へコウモリを近付けるとなんと?
「コウモリが勝手に入ったぞ?」
「しかも宝箱の蓋が勝手に閉まったす!」
「リ リュウさん悪いがまた開けて見てくれないか?」
「分かりました」
パカッ!
開くとコウモリの姿はなくそこには小さな針が一本入っていたのだった。
「えっ?コウモリが消えて針になったす?!」
「こりゃ毒針だな」
「毒針?!」
「コウモリには牙に毒があってな、噛まれると毒が回り死にはせんが、数日は高熱が出るんだ。」
「恐ろしいなそんなやつを俺は素手で殴っていたのか」
「トラさん今更すよ ハハハハ」
「でもガイル宝箱にコウモリを入れて毒針になるのはなぜだ?」
「んー仮説に過ぎんが、ダンジョン内で宝箱に魔獣を入れるとそのダンジョンタイプにより中身が変化するんじゃないだろうか?」
「コウモリだったから毒針だが他の物なら違う物になると?」
「あくまでも仮説だがな」
「ガイルさっきのムカデ出してくれないか?」
「あぁ試すんだな、そりゃ楽しみだ。」
大人達の実験はダンジョン探索そっちのけで続くのだった。
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