第4話 戦人(いくさにん) ガイル

「報告!隊長ここより南2㎞程の森の中に小屋が有り誰か住んでいるようです。引き続き様子を伺いますか?」


「今はまだいい。小屋が有るのが分かればいい、後程こちらの安全を確認後全員で向かう。」


「了解しました。セルシ隊長の方はどうでした?洞窟の探索は?」


「今トラが確認中だ、俺はヒロとリュウの報告を待っていたのだ。」


「なるほど、リュウ先輩とは小屋の少し手前で別行動になりましたから時期に帰ってくるのではないでしょうか?」


「食糧調達とはいえ異世界だからな、どうだろうか?」


「おぉう戻ったぜセルシ隊長!これを見てくれ!」


「小太刀か?」


「ンーまぁ小型のナイフだな、奥の宝箱にあったぜ!デカいコウモリ見たいな奴がいたがぶん殴ったら死んじまったよ、ほらコイツだ!」


「うわっ!気持ち悪いっすね、こんなデカいコウモリ初めて見たっすよ!」


「まぁ異世界だからなのかわからんが気をつけよう、トラ!洞窟の入口に扉を作り獣が入らない様にしてくれ!」


「任せなセルシ隊長!大工仕事は俺の本業だからな。」


「トラさんは大工さんだったすね、そう言えば。その内家でもこさえて貰いたいもんすね!」


「ふんっ!金は払えよヒロ!」


「当たり前っすよ!それまでに稼げる男になってやるっす。」


「しかしリュウは帰ってこんな、どうしたと言うのか?」


「俺見てくるっす。」


ヒロはその場より飛び出てリュウを探していた、近くには見当たらず小屋近辺に行ってはみたがやはり居なかった。


「リュウさん何処まで行ったすか? ブモォォ!!  なんすか今の??」


恐ろしい声の方へヒロが駆け寄るとそこにはリュウが居た、そして対峙していたのは巨体を誇る猪であった。


「ヒロ動くなよ、こいつはかなり気が立っている武器がない俺たちでは太刀打ちできないからな。」


「あっ!リュウさん直ぐ戻ってくるから待ってて下さい。」


ヒロはとっさにあのナイフを思いだし洞窟へと駆けていた。


「トラ先輩、隊長ナイフ!ナイフっす!」


「落ち着けヒロ、どうしたんだ?」


「リュウさんが巨大な猪と対峙していて刃物がいるっす」


「なんだと!? 隊長行くぜ!」


「よし!トラ、ヒロ出撃だ!」


セルシ達がリュウの元へたどり着いた頃そこには…


「んっ? お仲間か?アサルトボアならもう倒したぜ、あんたらもどうだ?夕飯に付き合えよ」


「すまん、貴方はどなたなのだ?」


「おぉすまねぇ、俺はガイル元傭兵でまぁ戦場から逃げ出した弱虫って処かな…まぁいいやな、それより飯だ飯。」


ガイルはそう言うと例の小屋まで来たのだった。


「ここは…貴方のご自宅であったか」


「ご自宅なんて立派なもんじゃねぇよ、ただの掘っ立て小屋だ。さぁ入ってくんな。」


中は綺麗に整頓されており男の独り暮らしと言うには綺麗すぎる程で寂しさすら感じる程、何もない感じであった。


「見ての通り斧やら剣、薪だのしかない小屋だが適当に座ってくれ。肉を焼くからよ。」


「隊長、なんすかね…この寂しげな気持ちは…俺なんでこんな切ない気持ちになってるんだろ?」


「それは傭兵も兵士も同じ戦人(いくさにん)だからな、ガイルのやるせなさが俺たちに伝わってるんだろうよ」


「そうだな…戦場から逃げ出したくなるのは皆あって当然だ、しかし逃げらんねぇのが戦場だ、それを逃げてしまった悔しさ、切なさは拭い去れなくてとうぜんだ!」


「セルシ隊長もトラさんも今は止めましょう、せっかくですしご飯を楽しく頂くのがここは流儀ですよ」


「リュウ先輩は達観してるっすね、でも俺達がしんみりするのは、ガイルさんに失礼すね」


ガイルはセルシ隊長と呼ばれていた彼らの話を竈で聞いていた、どうやら彼らも兵士であると言う事、自分のやるせなさが伝わってしまった事…


「まぁ当然伝わるか…同じ戦人だしな…」


ガイルは切なさを振り切る様に明るく皆に振る舞っていた。焼いた先程の巨大猪の肉と酒で彼らをもてなしていたのだった。まるで古くからの友と居るような気持ちにガイルの心はゆらゆらと揺らめくのであった。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る