第18話 3つのお題で小説を書く③

 気づくと、車に乗っていた。ここはどこだろう。

 周りを見回すと、横の助手席に美しい若い女性が座っている。おかっぱで赤い綺麗な和服を着ていた。


「君は誰?」

 そう問うと、ころころと笑う。

「またそういう冗談を言って。

さあ、行きましょう」

と車を降りた。仕方なく僕も外へ出る。他にも何台か車が停まっていた。どこかの駐車場のようだ。しかし見覚えがない。訳がわからないまま歩いていった。彼女は私の腕につかまり、道を進んで行く。

 彼女は可愛らしいかんざしをしていた。その揺れる房を見ていると、向こう側に看板が見えた。工事中の注意書きかと思ったが、大きな字で『七』と書いてある。

 あれは何だ。目が釘付けになった。その時、頭の中で声がした。

「時が来た。お前はここで終わりだ」

 その声を聞くと、僕はすうっと気が遠くなる。

 彼女の慌てたように呼ぶ声が、だんだん遠のいていった。


  了


 三つのお題で小説を書く

 かんざし、7、看板

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