第14話 旅先で出会った二人

 エッセイ教室で「旅先で出会った◯◯」という課題で書きました。


 もう十何年か前の事だけれど、私はある異性と数年間付き合った。その後トントン拍子とは行かないが結婚の約束をし、ハネムーンへ行くことになった。行き先はヨーロッパやアジア、オーストラリアなどいろいろと迷ったが、ニューカレドニアにした。

 そこは『天国に一番近い島』として昔有名な所だった(同名の映画がかなり前に流行ったのだ。主演は当時有名な女優だった)。決め手は海辺の景色が美しいというのもあったが、フランス領で食事がおいしいと、旅行会社の人に言われて決定したのを今思いだした。知的好奇心より食欲が勝る夫婦である。

 ちなみに公用語もフランス語なので、トラベル用のガイドブックを持参して記載されている通りに言ってみても、ほとんど通じないという体たらくだった。現地の人とのコミュニケーションは、夫が日本語以外は話せないので私が片言の英語でやり取りする程度だった。

 飛行機でほぼ一日かけて現地に着いた後、お土産屋をのぞいたり夜の海岸を散策したり、シュノーケリングで海中を散歩したりした。向こうは夏真っ盛りで、紫外線の強さも日本の三倍と言われており、日焼け止めを塗ってもシュノーケルの講習のために数時間日向にいただけで背中が真っ赤になった。そして、何日めかのオプションツアーで小さな無人島で半日遊ぶというイベントに行った。


 その日はあいにくと小雨が降っていた。その地域の天気は一年中ほぼ晴れと言われているそうだが、『こんな天気は珍しいね』とガイドの人に言われた(ちなみに滞在していた六日間のうち四日ほどが雨だった)。

 一時間弱で目的の島にヘリコプターで到着したが、砂浜に人影が見えた。おや? と思ったが、彼らも不審げにこちらを見ていた。

 その二人はまだ中学生か小学生くらいの歳で、姉弟のように見えた。私と夫はサンダルで島を一周し、元の砂浜に戻ってもまだそこにいたので、何となく英語で話したりした。弟の方は打ち解けてくれたが、姉の方は終始ムスッとしており、私達が帰る時も男の子は手をふっていたが姉は腕組みをしたままだった。


 後にこの旅行について夫と話した時、「あの子達も誰もいない島へ遊びに来たはずなのに、俺たちに邪魔をされたと思って嫌だったのかもね」と彼が言った。私はそういう考えには及ばなかったので、ああそうなのかも…と少し納得した。


 どこの景色も文句なく素晴らしかったし、シーフード料理やデザートなども申し分なかった(一人分でも二倍くらいの量だったが)。

 旅先でのふれあいと言ってもいいけれど、『無人島』を売りにしていたので少々残念な思い出である。


  了

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