第40話・対海魔将②【ガットゥーノ】
「「『全ステータス向上』!!」
ステータスへのバフ魔法が合図となって二人の魔族が走り出した。
素早さはパベルの方が優っているらしい。
それは二人のぶつかり合う地点がガットゥーノ寄りだった事から良く分かる。
「「『バーニングラッシュ』!!」」
二人の戦闘スタイルは共に徒手空拳技、彼女たちの表情が物語るものは悲痛な感情。
どうして二人は泣きながら戦うんだ?
二人の間にしか分かり得ない感情が俺の肌にも突き刺さってくる。
「うおおおおおおお!! ガットゥーノ!!」
「パベルううううううううう!!」
俺はただ願うしかできないんだ、願わくば二人に納得のいく結果を迎えて欲しい。
拳をメインとするパベルに対して、ガットゥーノは足技をメインに戦っている。
俺は『洞察力』を使って彼女たちの現状を把握する。
ーーーーパベルが不利。
俺の出した結論だった。
素早さと体の回転を利用するパベルに対して蹴りの馬力で圧倒するガットゥーノ。
この二人は均衡は戦闘開始の僅か数十秒で崩れていく。
そして、どう言うわけか得意の粘液攻撃をしないパベル。
「パベル!! 泣きっ面がお似合いじゃないか!!」
「……妹か? お前の妹がレオーネの人質になってる。そうだろ!?」
「……。」
「お前は妹の病気を治すために魔王軍に参加した、そうだったよな!?」
「……黙って俺を殴れ。舌を噛むぞ?」
「俺が勝つとお前の妹はどうなる!?」
「……パベル。」
「……もう分かった。俺がお前と妹の命を背負い続けてやるから!! 親友の俺がお前を!!」
舌戦を繰り広げる二人の魔族。
この舌戦を皮切りに徐々にパベルをガットゥーが圧倒しだす。
二人の戦いを通じて分かった事は三つ。
一つ目は海魔将のレオーネはクソ野郎だと言う事。
味方の家族を人質に取ってまで俺たちを襲うのだから、確認するまでもない。
二つ目はテイさんたちの実力。
これはレイさんに遅れを取らないと言って良いだろう。
確信だ。あの二人の存在は俺にとって間違いなく助けになってくれる。
三つ目はパベルが、俺の妹が……泣いているんだ!!
親友と戦わざるを得ない状況に、間接的にその親友の妹を見殺しにする事を決意したんだ。
人として当たり前の感情がパベルを泣かせているんだ……。
海魔将レオーネ、お前だけは俺の手でぶん殴ってやる!!
俺は怒りの任せて両の拳を握りしめる。
だが、ぶつけようない俺の怒りとは裏腹に彼女たちの決着は刻一刻と迫る。
俺はパベルを失いたくない、……俺はお前が負けそうになったら即座に介入するぞ!?
俺の決意が伝わったのか、パベルが俺に向かって視線を向ける。
……俺に手を出すなって事か?
「パベル!! だったら負けるな!!」
「俺の兄貴は妹に厳しいね? だってよ、ガットゥーノ!!」
「それは私が負ける理由にはならない!! うおああああああああ!!」
押し気味のガットゥーノがさらに攻撃の圧を強め始める。
そのガットゥーノに対して防御を捨てるパベル。
彼女の目は死んでいない、諦めていない。
パベルらしいと思う、この劣勢の中で攻撃の手を緩めない彼女は清々しく思えてくる。
「うおおおおおおおおお!! ガットゥーノ、これで終わりだ!!」
渾身の蹴りを繰り出すガットゥーのだったが、それに対するパベルの行動は『さらに懐に潜り込む』だった。
パベルはガットゥーノ上段蹴りを掻い潜り、その足を鷲掴みにしている。
そうか、パベル。君が選んだ選択はそれか。
「なあ!?」
「ガットゥーノ!! 裏投って知ってるか!?」
以前、俺がパベルと戦った時に見せた『柔道』の裏投を彼女はトドメの一撃に選んだらしい。
俺の裏投と異なる点は……利用する敵の勢いが蹴り技だと言う事。
そしてパベルが泣いている事。
俺は思わず自分の胸を握り締めていた。
そんな俺にどう言うわけかガットゥーノが視線を向けてくる。
この後、発せられるガットゥーノの言葉は彼女の人格を表すものだと俺は涙する事になる。
「……パベルを頼む。神の使徒に栄光あれ。」
ガットゥーノはパベルの投げ技の前に沈むだった。
◆◆今回の戦果◆◆
パーティーは魔族ガットゥーノを倒した
汐のレベルが上がった
魔族パベルはレベルが上がった
魔族パベルのスキルが進化した
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます