第7話 3Dモニタールーム

 数日後、オカマ属性のある上司から呼び出されたエミリーは、紺色のパンツスーツを身にまとい、天空の城にある上司の部屋に訪れた。


 今回は、死者が生存者の夢で再会するための3Dモニタールームまで、引率する簡単な仕事である。


 担当する依頼者の個人情報を飲食物で汚したら大変なので、今回はロココ調のいつものテーブルには資料しかのせないで話す。


 担当者は田戸佳子たどころけいこさん。年齢は自死した当時で45歳。今年成人式を迎えたお嬢さんは3年前の夏から母親のことを忘れられずにいる。


 エミリーが、「んっ?」というような顔をすると、上司はちょっと笑って、「佳子さんはお嬢さんに会える資格があるのか不安がっており、同じような経験したあんたもいるようにした行為はともかく、特別なことじゃないことは伝えてあるの。エミリーにお願いできるかしら?」と今度は申し訳ないような顔をつくって言葉を区切る。


 勿論、エミリーは仕事を選べる立場じゃないし、もし反論したらゴスロリファッションの給料の前借りについてあれこれ言われるのは想定内だったから、「かしこりました」としまりのある表情をつくって答えた。


 テレパシーで、すべてお見通しらしい上司は目に涙をためて、つまりは大笑いしながら、「頼むわね」と呟いた。



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