第5話 家族間の思いを集める

 次にカード内容について、触れたいと思う。エミリーたちが集めるカードの九割以上は家族間における内容が多い。残りの一割が恋人(片思いも含む)への未練で、ただの友人、同僚となるとレアケースである。


 また、序盤に読まれるカードも夫婦間で、口約しなくても妻が先に残ると思っていた夫または自分が残ると思っていた妻からの思いが多い。


 淡々と仕事してないと二人の共通の思い出のエピソードなどに、目頭がじーんと熱くなってしまったりもする。


 実際、初めて仕事したものでは涙がでてしまい、大切なカード(これは自分のものではないお客様からの大切な思いの内容おもさを込めたもの)を損傷させないために退席するものも多い。


 ともかく政略結婚で、身体も心もエミリーに関心を持たなかった夫がいた立場からすると憎たらしいような羨ましいような複雑な心持ちになりつつも、ここは仕事だとエミリーは割りきって働いている。


 目と耳はいつもより、疲れるが日々仕事で生身の人間と対峙たいじしているよりかは気が楽じゃないかとエミリーは思っている。


 ただ、努力などは苦手の性格で、どこかの会に属して週末は勉強をして、研修や大会にも率先して出るというのが、面倒くさいのと、週末は大好きなゴスロリファッションに身をつつんで、日本の原宿辺りで遊びたいエミリーは誘ってくれる声は嬉しいものの及び腰になってしまう。


 ちなみに今も、Tシャツに何かのズボンまたはジャージというお洒落とは無縁の格好でみなさんいらっしゃる。


 正直、天空の城には基本的にドレスコードがあって、白い服以外のスーツか制服の方がまだテンションがあがるエミリーにとってこの例外が公認なのは悲しいことだと思っている。


そんなことを考えていると、オカマ属性の上司からテレパシーで、「仕事なんだからちゃんと集中しなさい」と叱咤激励が入る。


「申し訳ありません」と答えて、深呼吸も少し長めにして、エミリーは目の前のことに集中しょうとする。

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