第2話

今日はあいつ一日オフか......。同じ一年のくせにオフ取るなんて贅沢な奴め!

俺は1限からだってのに


「隣、いいですか?」


突如として現れたのはロングな黒髪の清廉な女性。驚きつつも愛想も適当で交わしてしまった。


「今日、かわいい子休みなんですか? あなたと一緒にいる......」


「え? 遥の事......ですか?」


「そう。同じ学年で同じ学科の子って知って、気になってたらあなたと一緒にいるのを見つけて」


「そうだったんですね......。あいにく彼は休みですよ」


「え? 男の子だったんですか?」


「知らなかったんですか?」


「ええ、彼女さんかと思ってました」


「ないない。あいつ、めっちゃ声低いですし」


「なにそれ、余計推せるんですけど」


「え? 今なんと?」


「い、いえ!!」


すごい早口でとんでもない事言ってたような気がするが、まあいいか。やっぱりあいつモテるんだなぁ


「あ、自己紹介遅れました。私押崎湊といいます」


「どうも。小田倉 一途です」


「いっと?」


「そう、いちずと書いていっとです」


「いい......」


時々何を考えてるのかわからないが、良い人そうだ。俺たちは授業を共に受けてなんとなく仲良くなった。俺も結構やるもんだ。高校時代では全然女子と話せなかったのに彼女はすごくとっつきやすい。気が合うというより、彼女の優しさが話しやすくしてくれている。


「私って眼鏡の人が好きなんですよ。この人知ってますか?」


授業後、彼女はスマホのホーム画面を見せた。そこには大きく男性Vtuberが飾られていた。


「なるほど。どおりで話しやすいと思ったら同業者の人ですか」


「一途くんもV好きなんですね~。よかった、仲間がいて。私周りにそういう人いなくて、実は二人の会話が聞こえたとき仲良くなれるかなって」


「そうだったんだ」


「それで、なんですけど......。唐突なこと言っていいですか?」


「なんですか?」


「推しです!! めちゃくちゃ一途くんの顔、この一ノ瀬ジンくんみたいで好きなんで! あの、お友達というかできれば写真も撮りたいです。そういう関係はだめですか?後、遥くんも推しとまではいかないまでもカップリングとしては最強なので......。変に関わりません。二人と一緒に語ったりいろいろしたい、です」


熱意冷めやらぬようオタク特有の早まわしのギャップに驚かされっぱなしだが、推しと似ていると言っていたがそれはいいのか? 俺、平凡顔だがそれでいいのか?


「本当に俺の顔見えてる? そのジンくんって子と似てないきがするけ」


「気がするだけです! はい、写真」


ものすごい早い連写。俺でなきゃ見逃しちゃうね。それはともかく、困ったものだ。普通に会話したい。


「普通にV好きの友達としてなら遥を紹介するけど、それでいい?」


「ではお写真はなし......。ということですか?」


「俺単体だけでいいなら、週一。つまりこの日、この時間ならいいよ。恥ずかしいけど節度を守ってくれよ」


女性に実物で推してくれるのは悪い気はしない。ただ、少しこそばゆい気持ちが深くにうずいていた。

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