第5話 美味しいパスタの謎

 この店の秘かなブームは 【パスタ】 である。ちなみに、この店の名前は [ラーメン春風亭しゅんぷうてい] だ。



 間違ってもパスタ屋ではない。



 強力粉という特殊な粉を使い、オリーブオイルを混ぜ込んだ店自慢の手作りパスタだった。ラーメン用の寸胴を使って3分ほど茹でると出来上がりだ。



 業務用味噌スープ用の缶詰から鶏がらスープと混ぜ合わせて食べるスープパスタ。ネギが振りかけてあり、味付け卵半分が付け合わせてあり、お値段なんと800円。若干高めだが、大盛無料という事で評判になっている。


 デリバリーだと1000円。ちなみにデリバリーでは1人前から出前可能である。この店では、電話注文の他にネット注文、FAXでの注文が可能。






 ―――昼のランチタイム時。


 ある2人のサラリーマンは話をしていた。



 「なぁ、ここってラーメン屋だよな?」


 「そうだな、その割にラーメン屋独自の油が凄い匂いはあんまりしないんだ」


 「まあ、おかげでこのまま営業に行けるから俺たちは楽だけどな」


 2人組のサラリーマンは話していた。



 このラーメン屋は、清潔感が凄い。まず店の入り口の上に設置された大型換気扇。これにより店内のおいしい香りが外に逃がす役割を成している。厨房では裏手に通じる3台の小型換気扇。厨房のありとあらゆる匂いはこちらから逃がしている。



 ――なによりもこの店の売り上げである。



 脅威の売り上げ一日30万! 多い時だと40万以上にのぼる事もある。1F店内は40席。2Fは宴会場で60名まで同時に収容可能である。


 驚く事にこの店の立地条件は、1Fで約60平米(38帖ほど)ある。2Fは宴会会場となっている。3Fはビジネスホテルになっており、駐車場が無い事を除けばベストな場所にある。


 最寄り駅の地下道の入り口が目の前にあり、その向かいの道路にはバスターミナルが存在する。右隣りのビルは地下にライブハウスがあり、その隣には立体駐車場。左隣りは商業ビルがあり、1Fはドラックストアがあり、時折その商業ビルの最上階ではイベントが行われており、月に一回ほど100人以上の人が集まる。


 このように人が集まる要素が勢ぞろい。人が集まらない方がおかしいほど立地条件がいい。こうなると裏稼業の方から目をつけられてもおかしくないが、当然目をつけられていた。


 

 ――その店への手出しは、一切出来なかった。ある組を除いて。

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