第2話 時給1500円の謎
この店のアルバイトは時給が高い。――なぜここまで高いのだろう、と?
その謎について解説する。
店主であるラーメン屋のおやぢは夕方出勤である。その為、昼間に2人、夜に2人アルバイトを採用している。
この店の営業時間は、昼の11時から深夜3時までだ。その間に中空きで、15時にいったん閉店して17時に開店する。
おやぢは大体16時ごろに出勤する。昼間は、おやぢの親類が店を運営する。そして夜はおやぢの出番だ。
この店の時給だが、驚くことなかれ! 昼間の時給は1500円だ。22時以降の時給は2000円だ。
本来1875円でいいはずだが、おやぢはこの金額に設定している。隣の店の居酒屋では時給1200円程度だ。
―――なぜここまで違うのか?
この店は昼間はデリバリーをやっている。その為、昼間は店の中に親類含めて常に5人以上いる。
この店の従業員は大半女性だ。この付近のデリバリーを行うお店はビジネスマンが勤める商社だけではない。商社のビジネスマンはまず自分から店に出向く。
しかし、昼間にも営業を行っている夜のお店も存在する。昼キャバ、男性用のお風呂屋、マッサージ店などが点在する。持っていく先の客層は大体女性だ。
この店のルールとして、昼間のデリバリーは女性しか持っていかないと決めている。昼キャバはともかく、後者2つに関しては男性が持っていくのに好ましくないと判断されたからだ。
大抵デリバリーは男女関係無く持っていくところが普通だ。その為、この店以外では男性に持ってきてほしくない店も多数存在する。
――だが、この店ではそういったルールの為、周りの店からは――評判がいい。
そして、デリバリー単価である。この店ではデリバリーの場合は2割増しの料金を取っている。容器代、出前手数料、その他もろもろの理由だ。
このおやぢの店は、周りの店よりもそこそこ値段が張る。一見のお客さんはその値段を見て頼むメニューはカレーライスかカレーうどんになる。この二つは、一般的に見て安めに設定してある。しかもなかなか美味しい。
そしてビジネスマンの間で「あそこのラーメン屋はカレーうどんが美味しい」と評判になるほどだ。………ラーメン屋とはいったい何だったのだろうか。
ちなみにデリバリーは夜もやっている。こちらは昼間とは対照的に夜は男性しかデリバリーに行かない。
元来22以降はおやぢ一人で運営していた。しかし、夜のデリバリーを始めた事に繋がる。夜のアルバイトは男性1人と女性1人と決まっている。
店のルールで年齢はどちらも25歳以下に限る。昼間は年齢制限はかけないが、夜に限って年齢制限をかけたには理由がある。
――なぜかって?
周りの店が理由である。贔屓にしている店からの要望でもある。夜のアルバイトにもメリットは存在する。
何度も言うが、夜のデリバリーは男性限定である。そんな地域にあって、男性がデリバリーに行けばどうなるかはお察しである。
そんな時注文が入る。
ブルルルルル
ブルルルルル
ガシャ
「はい、
アルバイトの女性が電話口に出る。
「はい、はい、20人前ですね、かしこまりました。支払いはいつものコースですね、確認とってまいりますのでしばらくお待ちくださいね」
そう言うと、おやぢともう一人の男性アルバイト店員に確認を取る。
OKらしい。
すかさず電話口に戻る。
「お待たせしました! では、お届けは2時間後になりますね」
――なぜ2時間もかかるのか? 相手先はそれで了承されるのか?
この後の会話を聞けば一目瞭然だろう。
「拓哉(たくや)くん、いつも大変だね」
咲(さき)は同情の目を向ける。
「咲さん、大丈夫っす! いやぁ、これも仕事っすからね!」
拓哉はまんざらでもなさそうだ。
「おやぢさん、このシステム今後も続けるんですかぁ? なんか不潔ですよぉ」
するとおやぢは一言。
「うちらにも利益があるし、向こうさんからもメリットもある。辞める理由はないがね」
――そう、このおやぢは、この界隈ではそこそこ顔が売れている。
そう言ったお店には黒幕がいる。そのお店が要求するもの、それはよく言われる [ショバ代] [みかじめ料] と言った類だ。この店では一切払っていない。提携する代わりに店の代金を一定額支払わないが、対価として別のものでサービスするというこれで落ち着いている。
こんなことが許されるのも、このおやぢだからだろう。
2時間後、商品が出来上がると拓哉は帰り支度を始めた。
「店長、20人前の宅配行ってきます」
「おう、きいつけてな。2時間後ちゃんと連絡入れて来いよ」
「はい、わかりましたっす!」
系列店がこういったサービスを使うときは、男性アルバイトを一人派遣することになっている。終わった後に連絡を入れさせるのは無事を確認するためだ。店から支給したスマホ1台だけ持たせ、貴重品系統は持たせない。なるべく店で預かる。安全面も配慮している。
―――こうして拓哉は夜の闇え消えていった。
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