ラーメン屋のおやぢ~この広い世界に降り立った一風変わったラーメン屋のおやぢの伝説~
すたりな
ラーメン屋のおやぢの伝説
第1話 ラーメン屋の謎
――某ビジネス街の真ん中。
ここは特殊な場所である。
昼はサラリーマンが縦横無尽に集まりだす。
「今日のランチ何にするかなぁ~」と。
そう呟くスーツを着た人達が集う街である。
――そして夜は、歓楽街に変化する。
ドレス姿の薄着の女性、蝶ネクタイをした男性が呼び込みをしている姿が目に浮かぶ。昼間に居たであろうサラリーマンは泥酔者へクラスチェンジする。
――そう、昼と夜でこの景色は変わる。
周りにいる人々も、そして外観さえも。
このセンター街の中心地にとある店が存在する。
【ラーメン
この店にとある店主がいる。
客の皆からは、【ラーメン屋のおやぢ】と言われている。トレードマークは黄色いバンダナ。実際の年齢は不詳。
――だが、恐ろしく威圧感があり、ヤーさんでさえ、このおやじに絡まない。
外観は普通のラーメン屋の店のはずなのだが。しかし、この店は何もかもが普通ではない。
まずメニューだ。
ラーメン、カレー、牛丼、うどん、パスタ。
サイドには色々あるが、この5つがメインだ。
飲み物はコーラ、オレンジジュース、ビール、焼酎、ウィスキー、ブランデーと極端なチョイス。ビールは速達してる旨の上りが目立ち、比較的美味しい。
風体はスキンヘッドに眉毛も剃り、サングラス。ビジネス街なのでお盆は当然閉店。夏のバカンスを楽しんだ後は黒く焼けた肌を人前に晒す。
何より、ここの店長であるラーメン屋のおやぢは一風変わった経験を持つ。
学生時代は、空手と柔道の道場に通い、中学卒業後自衛隊に入隊。
その後、大手餃子チェーン店で修業。ノウハウを身に付けた後あっさり退職。
自衛隊時代の任期満了時のお金を使い、ラーメン屋を開店と言われている。
が、ここは一等地。テナント代だけでもかなり高いはずだが、この辺の話はまた後日するとしよう。
そんなことを知らない客がたまにちょっかい出す。
「おい、店主!! この店は客に髪の毛が入ってるもん食わすんか、ワレェ!!」
二人組の普通じゃない男達。恐らくは、どこかの流れものだろう。
すると、店主であるおやぢは、ラーメンのスープ用のお玉を取り出し、身構える。
何故か店に銅鑼が置いており、おやぢは力強く叩く。
ジャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアン!
店中の客が一斉にいちゃもんを付けた客のほうに視線が向く。
金髪に染めているアルバイト店員は、それを合図に裏へ逃げていく。
「な、何やかましい音かましとんや!!! いてもうたろか!!!」
いちゃもん客は一瞬ひるむが、おやぢを睨みつけて虚勢を張る。
そして、おやぢはどこからともなく別のお玉を取り出した。先ほどとは全く別の鋼鉄製のお玉を取り出し、いちゃもん客に近づいていく。
「お客さん、その髪の毛は誰のやと思います?」
おやぢは、右手で鋼鉄製のお玉を構えて、いちゃもん客の目の前に立った。
「てめぇのだろ! でなければそこのアルバイトのや!」
浮いている髪の毛は黒く長いものだった。
「お客さん、うちの店には、そんな髪の毛の従業員はおりませんぜ」
おやぢはバンダナを外してこういうのだ。
ここで逃げるか非を認めれば何事も起こらなかった。
プライドの為だろう。いちゃもん客はさらに言い返す。
「てめぇ、なめとんのか!! 剥げてるからって、てめぇのだと言ってねぇ!」
いちゃもん客がおやぢに殴り掛かろうとしたとき、入り口のドアが勢いよく開いた。5人ぐらいの派手なスーツの男が店の中に入ってくる。
「ひぃ!」
いちゃもん客は入ってきた男に胸ぐらをつかまれた。
「兄貴、こいつ俺らに任せてもらってもよろしおまっか?」
そのまま店の外へ連れ出そうとした。
「ああ、三次、いつも悪いな」
「いえ、兄貴のおかげでいつも助かってますんで、これぐらいさせてくだせぇ」
いちゃもん客は派手スーツの男たちに店の外へ連れていかれた。
そして店内の客たちは日常に戻っていく。
逃げたアルバイト店員も帰ってきた。
「本当に懲りないですよね。おやぢさん、ウェイティングしてきます」
「ああ、それより
――そう、この店ではある理由でアルバイト店員には高時給を払っていた。
それはまた後日語るとしよう。
―――いちゃもん客はその後、どうなったか?
誰も知らない。
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