第4話 魔女と農作業

「こちらへどうぞ。」

朝食を終えて、君に促されるがまま家を出る。向かった場所は家の近くの畑だった。

里芋、じゃがいも、人参、大根、ハーブ類に小麦。

とても立派な畑で、女性が一人で手掛けてるとは思えなかった。


「これは凄い、こんな魔法もあるんだね」

目を丸くする貴方は、とても可愛らしかった。


「魔法じゃないわ。強いて言うなら、化学よ。言葉を理解することが出来れば、誰でも出来るわ。そう、あなたでもね」

的確に知識を教えてくれる君。

褒めると赤く染まる照れた顔は、とてもチャーミングなのに、作物を愛でる君の横顔は母性に溢れていた。


近くの海岸にある貝殻を砕いて散布し、家畜の排泄物と生ゴミで肥料を作る。仕切りを作り、畑を五つに分け、季節ごとの野菜は毎年毎に重ならないように畑をローテーションさせて実らせていく。もちろん、休耕する畑を作る事も忘れない。


君は額にじんわりと汗を滲ませ、土の匂いを香らせる。

「お昼にしましょ」

君の一声で、太陽が真上に登っていたのに気付く。君との時間は、一瞬のように儚い。


家に戻り、落ち着いて部屋を見渡すと、薬草が所狭しと干してある。

「うちで育てた野菜を使ったサンドイッチよ。お口合うかしら。」

そう言って君はテーブルの上に、ボリュームのあるサンドイッチと、ハーブティーを用意した。


薄切りカボチャの甘みに、レンコンのシャキシャキ感が加わる。生の小カブはピリリと辛みがあるものの、ベーコンの塩気が全体をマイルドに整える。それらをふっくらとしたパンで挟み込み、それは今まで食べた事のない美味。

王宮のパーティでさえ、こんな分厚いサンドイッチが出てくることはない。


「これは、美味しい。どんな魔法なんだ」

貴方が真面目な顔で驚くものだから、プッと笑ってしまったわ。何年ぶりに笑ったのかしら?

思えば、随分と昔のよう。


「魔法じゃないわ。ただの料理よ」

「そう、、、だよね。あんまりにも美味しくて」


「美味しい。」その一言で、食事がこんなに楽しくなるなんて。

食べ物が口の中で弾け、踊るように私の喉を伝う。

貴方との食事こそ、まるで魔法のよう。

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