第四章「英語教師源雅(中編)」


 忘れもしない、それは、地球侵略の第一歩として日本国首都東京都某所を襲撃した時の事だ。


 マットーサ博士の製作したクァークゴ怪人。ちなみに、怪人という表現は地球人のマスメディアが使用している呼称であり、帝国の公式記録には『対局地戦特化機動人型兵器』と記載されていることを説明しておく。


 博士の製作した第一号怪人蜘蛛蛇怪人スパイダースネークと、クァークゴアンドロイド兵数十人を率いて破壊活動を行っていた私。


 何故、日本の東京。しかもビルが多く立ち並ぶ繁華街なのか。


 ニューヨークとか北京とかモスクワとかロンドンとかパリとか、標的は数多くあるというのに、議論もせずに東京直行かよ。


 更にはなんで皇居とか国会議事堂とか、政府関係の建物が集中している地区でなく、人が多いだけの繁華街なのか。示威行為にしたってもっと効率よく効果的な行動を選択することが出来るというのに。


 皇子にその点に関して質問してみても、爽やかな笑顔で「セオリーというか伝統というか、そういうのに合わせてみてなんとなく!」という私からすれば妙ちきりんな答えしかかえってこなかった。


 マットーサ博士に尋ねてみると、彼は皇子の答えの意味を教えてくれた。


「過去のデータを見るとですね、地球侵略を目論んだ組織の七割から八割は日本の、しかも東京やその周辺地域を重点に置いて侵攻していたのですよ。皇子はそれらに基づいて侵略の第一歩は日本のカントー地方からと決めたのではと」


「……」


 馬鹿じゃねぇの。


 んなもん知るか。伝統か何か知らないけど、日本だけを征服しても地球上には国家は百数十カ国あるのよ。チマチマとこんな事してたら一生が終わってしまうわよ。


 馬鹿皇子の決断に歯軋りしつつも、上司の命令は絶対である。異議を唱えたところでのらりくらりとはぐらかされた挙句に有耶無耶にされるだけだし。まったく、つくづく宮仕えというのは辛いものだ。


 更に言えば、引き連れている兵隊の数にも不満がある。


 制圧を前提とした武力攻撃ならば、最低でも一個師団規模が必要だというのに、たかだか数十って。ケタが二つも三つも違うわよ。過疎化傾向にある村制圧するのとわけが違うんだぞ。


 と、やはり皇子に掛け合ってみたものの、容姿だけは超一級品な能無しの返答はといえば「侵略者としてのお約束事項みたいなもんだしぃ」ときたもんだ。


 非現実的非合理的なお約束事なんざ私の知ったことではないというのに。


 建物という建物に火を放ち、車を爆発炎上させ、逃げる民衆を追い掛け回す。


 私からすれば軍隊というより暴徒か火付け盗賊の所業としか思えない行動に現をぬかす蜘蛛蛇怪人とアンドロイド兵達。


 自分が今物凄く不毛な事をしているのではという考えがよぎり、数体の兵に護衛されつつ私は憮然たる面持ちでそれらを見ていた。


 それにしても、警察も自衛隊も出てくる気配がないのはどういう事か。


 治安維持が任務だろうに。まぁ、警察は避難誘導しているとして。自衛隊は戦車とは言わんが装甲車でやってくるぐらい出来るだろうに。


 後日、自衛隊は出動手続きや出動の是非を巡って国会で議論になった為に出動困難であることが判明した。何のための自衛隊だよと溜息を吐いたのは言うまでもない。


 私を中心にして半径五百メートル程を破壊し尽くしたときであった。


 逃げる人々を掻き分けながら、五人の男女が私達の前に現れたのだ。


「そこまでだ!」


 勇ましさ七割緊張三割。割り振りをするならそう割り振れそうな表情をした十五、六の少年少女らが、無謀にも立ちはだかってきたのだ。非武装なのは一目瞭然であった。


「あれが、アース司令が言っていた新たなる脅威か……」


「先輩諸氏が命懸けで護ってきた地球は、アタシ達が渡さないぜ!」


「私達は、この日の為に選ばれたんだから!」


「初陣だけど、負けることは許されないよね」


「僕らがやらなきゃいけないんだ。覚悟を決めよう」


 彼らは私達を見て口々に何か言っていた。


 囀ってるんじゃないよクソガキども。早くどっか行け仕事の邪魔じゃ。


 この時の私の心境はというと、相手の熱さとは正反対で冷めていた。


 たかが一般市民の子供をまったく恐れる事無く―恐れる理由もなかったしね―無視するか威嚇発砲でもして追い払おうぐらいにしか考えていなかった。


 そのような考えを抱いていた私であるが、そんな考えはたった数十秒後には改める必要性に迫られたのだった。


「アースチェンジャー!」


 五人組の中央にいたショートカットの少女の掛け声と共に、各々が手首に嵌めているブレスレットに手を添えた。ブレスレットから眩い閃光が発せられ周囲を覆った。


 眩しさに目を瞑り腕で防護していた私が腕を下げた後に見たものは、五人の少年少女ではなく、五色の戦士であった。


「アースレッド!」


「アースブルー!」


「アースグリーン!」


「アースイエロー!」


「アースピンク!」





『悪の野望を爆砕する正義の刃! 人類戦隊アースファイブ!!』




 各々の個性によるポーズを取りながら名乗りをあげる五人。


 その姿は若さと自信と気迫に満ち溢れていたと思わないわけでもない。とは、後日周囲に皮肉気に述懐したところ。


「アースファイブだと?」


 突如現れた怪しげな連中に私は眉を顰めた。


 ただでさえ乗り気になれない仕事をしてる最中に厄介事が増えるのは勘弁して欲しい。その時の私は心底そう思っていた。


 私は掌を軽く振って近くにいた十数体のアンドロイド兵にアースファイブと名乗る連中の相手をさせることにした。兵達は戦闘用ナイフやレーザーガンを手に五人に突撃していった。


 クァークゴアンドロイド兵は、本来は未開発惑星開発用自律型アンドロイドであるのだが、今回の侵略の為、マットーサ博士が戦闘用に改造したものである。


 丈夫で馬力もあり、簡単な動作なら自分で考え判断して稼動でき、しかも要塞の生産能力でなら一日で一個大隊分を生産出来るお手軽さ。細かな作業には向いていないが、このような荒っぽいことには実に都合の良い機械なのだ。


 アースファイブかなんか知らないけど、アンドロイド兵にぶん殴られて追い払われてしまえってんだ。こっちは今日中にあと数箇所襲撃する予定なんだから忙しいのよ。


 が、私の見た光景は、私の願望とは正反対を爆走しているものであった。


 地球には「蝶のように舞い、蜂のように刺す」と言う表現があるという。奴らの戦いっぷりは、正しくそう表現するものであった。


 アンドロイド兵の攻撃を交わし受け流していき、パンチ一つで数体まとめて数メートルは吹っ飛ばされていく。


 信じられるか? 百キロ以上の岩石も紙を持つかのように軽々と持ち上げる怪力を誇るアンドロイドがだ、変なスーツを装着した少年少女に力負けしている。酔っ払いの見る悪夢というべきだろうか。


「アースブレイザーガン!」


 赤いスーツを着た少女、アースレッドが、腰元のホルスターから機能性をさほど考えてなさそうなデザインの銃を取り出しアンドロイド兵に向けて発砲した。


 銃口から飛び出したのは、鋼鉄や鉛の弾丸でなく、レーザー光線だった。光線は兵の一体に命中し、兵は小爆発を起こして崩れ落ちる。その時には既に更なる光線が放たれ当たっていた。


「えぇ―……」


 ものの数分で差し向けた十数体は全て倒されてしまった。予想外の出来事に、私は阿呆のように口を大きく開けていた。


 私が呆然としてる間に、破壊活動を行っていたスパイダースネークが騒ぎを聞きつけ残りの兵を率いて戻ってきた。


「シュシュシュ! 俺たちに刃向かうとは良い度胸シュ。覚悟するっシャ!」


 設計開発、全てのことを博士に任せているのだが、どうしてコイツは三下臭のする言葉遣いしてるんだよ。なんで語尾に「シュ」とか「シャ」ってつけてるんだよ。可愛くなんかねぇよこれは。誰に向けてアピールしてる。蛇か? 蛇だからか!?


 そんなどうでもいいとこに拘る必要ねぇよ開発責任者様。張っ倒してやろうかしらマジ。


 などと私が考えてる間にも、再び戦闘が始まっていた。


 青緑黄桃がアンドロイド兵と、赤は一人でスパイダースネークと対峙していた。


「いっくぜー!」


 勇ましい台詞を吐きながらレッドはスパイダースネークにとび蹴りを喰らわせる。なんとかガードした蜘蛛蛇は反撃のパンチを繰り出すも、相手は軽快なフットワークにて難なくかわしていく。


 幾度かの攻防が繰り返された結果、蜘蛛蛇は全ての攻撃を回避され逆に全ての反撃を喰らってしまっていた。途中、口から蜘蛛の糸を吐き出すなどの特殊能力を発動させるものの、容易く避けられた挙句にやはり反撃されている。


 元が労働作業用であるアンドロイド兵と違い、『対局地戦特化機動人型兵器』というのは戦闘を前提として開発されている筈である。能力は比べられない程に抜きん出ており、本来ならたかだか一少女に完敗することなぞ有り得ないのだ。


 なのにどーして負けてるんだよ。博士の野郎は手抜きしてるのかよ。なんでこうなってるか誰か説明してくれ。


 大きく上半身を捩じらせて勢いをつけたレッドの拳が蜘蛛蛇の顔面に直撃し、蜘蛛蛇は絶叫をあげて十数メートルは軽く吹き飛ばされた。赤以外も既に兵を倒したらしく、彼女の元に集まった。


「アースブレイザーガン一斉射撃!」


 五人はレーザー銃を取り出し、顔を抑えて呻いている蜘蛛蛇に照準を向けた。


「シュート!」


 五つの光線が一点に狙いを集中させて発射され、避ける暇も与えられずに蜘蛛蛇は直撃を被り爆発四散した。


 まったくもってあっけない幕切れであった。


 目の前に転がる元蜘蛛蛇怪人の残骸。周りを見渡せば、廃墟とアンドロイド兵の残骸が至るところに転がっていた。一時間前まで破壊の限りを尽くし民衆を恐怖に陥れていた連中だったというのに。


「さぁ! 残るはお前だけだ! 覚悟しやがれクァークゴ帝国の女幹部め!」


 レッドが腕を振り回しながら挑発してきた。威勢の良い態度は少々癪に障ったけど、五対一で勝てるわけはない。こちとら何の変哲もない一役人なのだから。


「気をつけろヒカル。奴は何か特殊能力を持ってるにちがいないぞ」


「口から火を吐いたり、手からビームだしたり? それとも帽子を目深に被ってるのは目から光線出したりするから?」


「いやいや、化学兵器を使った何かかもしれないぞ」


「指とか肘が機械化されていて中には重火器を仕込んでるとか」


「人の姿は仮の姿で、正体はえげつない化け物かもしれないよ」


 どれでもねぇよ。


 こいつら、人のコトをなんだと思っていやがるんだ。


 私は生身の役人だっての。何が悲しくてこんな仕事の為に人間やめなきゃいけないわけよ。コッチのことを全然知らないからって好き勝手な想像してんじゃないわよ!


 と、怒鳴りつけたい衝動を抑えながら私は無言で転送装置のスイッチを押してその場を後にした。勝算なき玉砕精神なぞは生憎と持ち合わせていないから当然の選択であった。


 とんだイレギュラーに遭遇したものだ。と、私は思っていた。いや、この考えは誤りであろう。


 これも後日判明したことだけど、この地球という惑星は、私たちが来る以前から度々地球征服を叫んで内外から幾つもの組織が侵略を企て、そしてその全てが失敗に終わっているというのは述べた。


 その原因というのは、その度にアースファイブと類似した五人組ないし三人組が現れて組織を壊滅させていたからだった。


 彼らの活躍は後にドキュメンタリー番組として編集され、日曜の朝に一年間放送され、幅広い層に認知されているという。アースファイブは彼らの流れを汲む何十代目かの五人組だとか。


 私が事前に調べたデータは、帝国出版が発刊した百科事典や政治や歴史書の類からのだったので、地球に関する大まかな事しかなかった。半世紀ぐらい前に突如出現したという集団の事は表記されていなかった。


 サーティン皇子は作戦失敗に関しては何も言わず、アースファイブという存在が現れたことを寧ろ喜悦に満ちた表情をして受けいれていた。


「んふふ~。ついに俺も歴代組織の仲間入りかぁ。そうでなくては遠路遥々来た甲斐がねぇもんなぁ」


「皇子は彼らの、彼らよりも前の集団を御存知なのですか」


「当たり前だろ。戦隊ドキュメンタリー番組や当時の報道映像なんかは全宇宙の地球愛好家なんかは必ず目を通してる映像だぜ。結構その筋での流通は多いから比較的簡単に入手できちゃうしよ」


「つまり、皇子は彼らが出てくる可能性はご承知の上だったのですか?」


「おうよ。逆に出てこなきゃ興ざめしてたな。簡単に征服しちゃ遊べな、じゃなくて、歯ごたえがないだろう」


「……」


「つーわけだから、どうだワルザード。これを機会に何か特殊能力付けてみないか? 口から火を吐いたり、目からビーム出したり、身体の一部をサイボーグにしてみたり、遺伝子弄って変身能力身に付けてみたりさ」


「するわきゃねーだろう!」


 その日一日で溜まったストレスで堪忍袋の緒が切れた私は、美貌の上司に情け容赦なくハイジャンプからの脳天踵落としを喰らわせたのであった。






 ……そして次の日に源雅として善正高校に赴任した私のまえに、新入生の彼ら五人が居て、しかも私の教え子になるというのだから、世の中は結構不条理なモノよね。


 それ以来、授業中に度々「腹痛が」とか「親戚の従兄弟の友人の叔父さんが危篤らしいので」とか嘘バレバレな理由を一方的に述べて出て行くときもあるし、コレで怪しむなという方がおかしいわ。


 というか、アイツらも少しは私を疑えよ。


 もう戦いは二年目になるわけだし、幾ら戦闘時の私が軍帽目深に被ってるからって、素顔は晒してるし、声も同じだし、何度も顔合わせれば普通は変に思うだろ。


 何で冷静沈着で切れ者そうなブルー(青野)すら気づきも疑いもしねぇんだよ。おかしいだろ変だろ何か疑問に思わないのかよ!?正義の味方っていうのは真実を見抜く洞察力は重要じゃねーのかよ!?


 変といえばこの五人以外の生徒達もだ。


 なんで誰も何べんも授業中に苦しい言い訳かまして出て行く五人を怪しまないんだよ。誰かツッコミいれろよな。あー、なんか納得いかないわね。


 誰か一人ぐらいブレスレットを疑問に思えよな。どう見ても校則違反じゃねーか。生徒だけじゃねぇ、私以外の教師も誰も皆あからさまに怪しいのに注意すらないのはどういうことよ。


 挙動不審をなんで変だと思わないんだよ。なんで「まぁアイツらだし」で流しておしまいなんだよ。疑問に思うべきだろうがコイツらはよ! ツッコミどころ多すぎてツッコミきれねぇよ!


 ちっくしょー、また胃がジワジワと痛くなってきたわ。


「先生、どうかされましたか? ボーッとされまして?」


 学級委員長である青野に声をかけられた私は我に返った。いつの間にか連絡事項を読み終えてボケッと沈黙していたのだ。私としたことがなんと迂闊な!


 私は視線を注意に彷徨わせながら咳払いをしてごまかそうと試みた。


「あっ、あー、なんだその……最近少し疲れててな」


「もしかしてせんせーアタシに惚れてて見とれちゃったとか? 困ったなー。アタシって罪作りなオ・ン・ナってカンジ?」


 青野の隣席である赤城が自己主張するかのように手を挙げてそう言った。私が反論する前に委員長の素早いツッコミが入り、それと同時に周囲から笑い声が上がった。


「ばっかでーヒカルったら。センセイがアンタみたいな元気だけが取柄なのに惚れるわけないじゃん」


 赤城の左後ろの席に座る大窪が笑いながら声をかける。彼女の言葉に赤城は大袈裟に頭を抱えて机に突っ伏した。


「よりにもよって桃子にそんな事言われるなんて、アタシも落ちるとこまで落ちちゃったなぁ」


「どーいうことよ!」


「そーいうことだよ! 馬鹿!! 」


「なんですってぇ!?」


「おい。赤城も大窪もホームルーム中なんだから静かにしろよな」


「「いいんちょは黙ってて!」」


 本格的な口論に発展するのを危惧した青野が諌めようとしたが、二人の女生徒に異口同音に退けられる。一連の会話を聞いていた周囲から再び笑い声が上がった。


 口を挟むタイミングを逃してしまった私は、周囲に合わせようと引き攣った笑みを浮かべるしかなかった。


 何なのこの学園ドラマ?


 何よこのヌルイ雰囲気?


 知らないとはいえ、一応ココには敵同士が居るのに緊張感ゼロなほのぼの空間。戦士ってそうじゃないでしょう!?


 もう少し緊張感というものを持ったらどうなのよ。


 あーもう、どいつもこいつも馬鹿ばっかかよ!


 魂の叫びは言語化されることなく、空しく心の中で響くだけだった。


 しかし、私がどれだけ苛立ちを覚えようとも心の中で叫ぼうとも、職務放棄をするような愚かな真似をするわけにはいかない。今日の一限目は私の担当科目である英語なのだ。


 小さく息を吐き出して心を静める。出席簿から英語の教科書に持ち直したときには平静を取り戻し「女性教師源雅」の顔となっていた。


「漫才は終わったか? さっそくだが授業にはいるぞ。今日は教科書十三ページの冒頭英文の訳からだ」


 私の声に生徒達は机の中から教科書やノートを取り出して広げ始める。一部では忘れ物をしたらしい生徒が隣接する同級生に何かしら話かけている光景も見られた。


 ありふれた日常的風景。


 この平和な風景は、侵略者である私には複雑な気分と微かな苛立ちを覚えさせている。


 どうしてお前たちは怯えがないのだ。


 何故お前たちは震え上がって高度な文明を持つ我々にひれ伏さないのか。


 つーか他は結構どうでもいいが、何でお前らは不自然極まりない一連の出来事を不審に思わないんだよ!?もう少し世の中に疑問持とうな!な!?


 苛立ちが身体に伝わっていたのか、チョークで黒板に字を書くときに力を入れすぎて神経を逆撫でするような音を発生させ、生徒達と一緒に悶絶してしまった。


「せ、せんせぇ。勘弁してくださいよー」


「す、すまない。先生ちょっと力加減間違えたようだ」


 生徒達の抗議の声に私は伊達眼鏡のブリッジ部分を指先で上げながら謝罪の言葉を述べた。


 あー、ちくしょー。ムカツク――!


 同時に、再び心の中でだが、ボキャブラリィの欠片もない罵声を呟きながら激しく頭を掻き毟りたい衝動に駆られた。


 こんな二重生活を送ってたら、いつの日か脳の血管と言う血管が切れそうだわ。


 あぁ嫌だ。


 自分で選んだ道だから文句言うのは筋違いと理解してても嫌だわ。

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