第12話 お披露目

 家族4人で部屋を出て、城門へ向かった。


 城を出ると、通路の左右には騎士が一定の間隔で並んでいた。物々しいというか、厳かというか、なんだかそういう雰囲気だった。


 前世のアニメでは、王族が通ると左右に控える騎士が抜剣し、体の前に持つという風景がよくあったが、そのようなことをしていなかったのでよかった。左右の騎士が抜剣し、その中を通るなんて怖くてしょうがない。あの中を通る人たちの気持ちが俺にはよくわからない。「Mなの?」って聞きたくなる。


 それはそうと、左右に騎士が控えているなか城門までの通路を通り、城門の上に上った。


 ヤバい。


 緊張してきた。


 子供のパーティーの時以上の緊張だ。


 前世では社長とか組織のTOPに居座ったことがない、庶民派の俺が王族として振る舞うのだ。


 それも、今日はスピーチをしないといけない。


 初めてのことが沢山で、緊張しすぎて変な汗が出てきた。


 どうしよう……。


 失敗して、国民が暴動なんておこしたらどうしよう……。


 頭の中が真っ白になってしまった。


 スピーチはすべて覚えたので原稿は部屋に置いてきた。


 お父様は一人で国民の前に立ち、とっくに演説を始めてしまっている。


 もうじき俺の番になる。


 ヤバい。


 もう引き返せない。


 どうしたらいいんだ。


 何も考えられなくなり、固まってしまった。




 何も考えられないまま固まっていると、突然後ろから温かいものに包まれた。


「ランス。落ち着いて。大丈夫よ」


 頭が撫でられていることに気づいた。


 はぁ。心地よい。


 これ程まで心地よい場所は後にも先にもあそこしかない。


「お母様。ありがとうございます。おかげで落ち着きを取り戻せました」

「そうか。それならよかった。ランスの顔がどんどん青ざめるから、心配したんだから」


 すると、目の前で演説しているお父様を指さした。


「見て。お父様かっこいいねしょ?」

「はい。かっこいいです」

「けどね、5歳の時の子供のパーティーで、お父様はとっても緊張していたんだよ?」

「そうなんですか?」

「ダンスの時は動きがカクカクになっていて、私が落ち着かせるためにどれだけ声をかけたことか」


 そんなことがお父様に会ったのか。いい話を聞いた。


「けれど、あのダンスに文句を言う人はいなかったわ。5歳の子供が緊張しながらも頑張っているんだもの。それを笑う人なんていないわ。だから、ランス。あなたを笑ったり、あなたに怒ったりする人なんていないから安心して。後ろには私とソフィアがいるから」


 今日はお父様といい、お母様といい、俺を安心させるためにこんなにも沢山のアドバイスをくれるなんて。本当に、最高の両親だ!


「ほら、ランス。言ってきなさい。お父様が呼んでいるわよ」


 そう言われて俺は前に進み、お父様の隣に立った。


「これが儂とナナリーの子、ランスだ。昨日8歳になり、王太子に任命した。ランスはこれまで熱心に勉学や剣術に励んでくれた。今後の活躍に期待できる金の卵じゃ」


 そう言うと、お父様は一歩下がり、俺の背中を押した。


 こうしてみると、益々緊張してくる。


 左右には俺を守ってくれるものが何もない。


 さっきまでは隣にお父様がいたのに、今はいない。


 それに、目の前には数万の国民がいる。


 皆が俺を静かに見ている。


 けれど、お父様とお母様に励ましてもらったのだ。やりきらないと!


「初めまして、皆さん。私はライオノール陛下とナナリー様の息子、ランス・ド・ラノアです。私は勉強をしている時間が楽しく、これまで勉学に熱心に励んできたした。授業には様々な講師が就いてもらい、私のために精一杯の授業をしてくれました。講師の方々には感謝しきれません。

 そして今、私は王太子に任命されました。これからの時間はこれまで講師の方々に教えていただいたことを活かしつつ、また陛下が政務をなされている様子を近くで見て学び、将来訪れる戴冠の日に向けて益々ますます精進していきたいと思います。国民の皆さんには、私がこれからこの国のために身を粉にして働いていくことを誓います」


 挨拶を述べ終えると、数万の国民が歓喜した。


 かなり緊張していたが、何とかなってほっとした。


 それにしても、かなり緊張したなぁ。前世の会社の朝礼でのスピーチとは比べ物にならないくらい緊張した。会社の朝礼のスピーチと比べることがおかしいことではあるが。


 その後、お母様とソフィアも俺の側に立ち、お父様が二つ三つ述べて国民へのお披露目は終わった。



 * * *



「お疲れ。ナナリー、ランス、ソフィア」

「あなたもお疲れ」

「「お父様もお疲れ様です」」

「ランス、素晴らしいスピーチだったぞ」

「ありがとうございます。かなり緊張していましたが、お父様とお母様の言葉が助けになり、落ち着いてスピーチできました」

「それはよかった。儂の助言がランスのお披露目の成功に役立ったのなら、これ以上の喜びはないな」

「そうですね。あの時ランスを抱き締めて落ち着かせて良かったですね」


 そういえば、お母様に抱き締めてもらったとき、お父様の5歳のパーティーの時について話していたな。


「お父様が5歳の時のパーティーはどのようなものだったのですか?」

「えっ? なぜそれを聞くのか?」

「気になったので」


 すると、お父様がムスッとした。その後、お母様に鋭い視線を向けた。


「ライオノール、どうしたの?」

「ナナリー、ランスに何かを吹き込んだのか?」

「さぁ? 私は何も知りませんよ?」


 お母様がからかい口調でお父様の質問に答えた。


 すると、お父様の表情は益々険しくなったが、そこで俺が追い打ちをかけた。


「お父様の初めてのダンス相手がお母様と聞きましたので、どのように踊ったのか気になっただけです」

「やっぱり! ナナリー、あの時のことをランスに教えたな?!」

「これでランスが落ち着いてスピーチできたのですから、いいではないですか?」

「父親の醜態が息子の役に立つなんて、恥ずかしい……」

「お兄様、お母様からどのような話を聞いたのですか?」

「お父様が5歳の時のパーティーで、初めてのダンスのお相手がお母様だったの。そのダンスで、お父様は緊張のあまりカクk……」

「ああぁぁぁぁぁぁ。これ以上言うなーー!」


 俺がソフィアと話しているというのに、お父様に話を遮られてしまった。


「お父様。私も何があったか知りたいです」

「ダメだ。そればかりは絶対にダメだ。父親の威厳が損なわれる」

「ソフィア。私の部屋に戻ったらお話ししましょう」

「お母様が聞かせてくれるのですか? それなら、早く部屋に戻りましょう!」


 ソフィアがそう言うと、お母様と2人で先に部屋へと戻って行った。


「はぁ。子供たちに儂の昔の醜態が知られるなんて、これ以上恥ずかしいことは無いよ」

「お父様、そんなことないですよ。お父様が子供の時は今の俺と同じように緊張していたと知って、俺は落ち着いてスピーチすることができました」

「ランスにそう言われても儂の心は晴れない。まったく、ナナリーはランスに余計なことを吹き込みよって」


 その後、お父様がいくつか苦言を漏らしながら2人でお父様の私室へと向かった。



 * * *



 お父様の部屋でしばらくの間2人で紅茶を飲み、世間話をした。


「そういえば、俺は明日からどのように一日を過ごしたらいいでしょうか?」

「そうだな。それはまだ考えていなかったな。明日一日は休みにしてあるから明日の夜にでも説明していいか?」

「わかりました」

「そうだな。授業の日程を少し変えようか。定例会議には毎回出席してもらうことにして、あと必要なことは各部署の視察か。これはもう少し後になるな。視察する部署には事前に通達しておくと対応してもらいやすいだろう。まぁ、儂はたまに抜き打ち検査をするが、ランスがそんなことをする必要はないからな」


 抜き打ち検査もするんだ。


「話が変わるのですが、お婆様はどうして我が国に嫁ぎに来たのですか?」

「んー。そうだな。ランスには言っておいた方がいいかもしれないな。我が国とダリア共和国の国境がどこにあるか覚えているか?」

「はい。アラ湖を東西に分ける形で国境が引かれています」

「そうだ。だが、儂が子供の頃はアラ湖の東側に国境があったのだ。パラ砂漠とアラ湖はすべて我が国のものだったのだ」


 えっ! そんなにラノア王国は領土が広かったの?


「そこで、ダリア共和国がアラ湖付近にある豊かな自然を欲しがり、我が国に交渉してきたのだ。交渉に提示されたものは大金貨4億枚とエルマだった。大金貨は25年分割で支払い、エルマを正妻として嫁がせることが条件だったのだ」


 大金貨4億枚?!


 それって、我が国の国家予算10年分以上じゃない!


「そこで、父上がこの交渉に応じたのだ。そういうわけでエルマが我が国に来ることになったのだ」


 そんなことがあったのか。


「ということは、昔のフィーベル領は今よりもさらに広かったのですか?」

「あぁ。あの頃のフィーベル領はとても豊かだったな。自然の恵みに溢れ、漁業と農業で領内はにぎわっておった」

「フィーベル公爵にはどのようにして納得させたのですか?」

「ダリア共和国からのお金の3割をフィーベル公爵に回すことで合意した。フィーベル家の収入の差額を補填するにはこれが妥当な金額だったのだ」

「そうだったのですか……」

「それより、ランスは王太子になるのだ。王太子でも十分不自由な身なのだが、国王になると自分のやりたいことは益々ますますできなくなる。忙しくなるからな。その前にやっておきたいことはあるか?」


 そうか。何十年かしたら俺も国王になるのか。そうすると、遠出なんてできなくなるだろうな。今のうちにジークたちの家に遊びに行くのもいいかも。


「ジークとハイドの家に遊びに行きたいです」

「それはいいな。儂もカナート公爵とアウルム公爵の家には2,3回しか遊びに行ったことはないが、素晴らしいところだよ。様々なところから人が集まるから町は活気がある。近くにはダンジョンもあるから冒険者も多くいるのだ。」

「ダンジョンですか?! 俺もいつか行きたいです!」

「それは難しい話だな。王太子を死の危険がある場所に行かせる騎士はどこにもいないだろう。なにより、儂とナナリーが許さないからな。そんなことはするなよ?」

「えーっ!」

「『えーっ!』じゃないだろ!」

「仕方ないです。俺が国王になったら散歩がてらに行きます」

「こら! 散歩気分でダンジョンに潜ろうとするな!」


 その後も与太話をして、時間を過ごした。



 * * *



 お披露目パーティーへ出発する時間になり、ナナリーとソフィアが俺とお父様のいる部屋に入ってきた。


「ライオノール、お迎えに来たわよ」

「あぁ。ありがとう」

「お父様が5歳の時にはあんなことがあったのですね」

「ナナリー、ソフィアにもあのことを話したのか」

「えぇ。私にとっては美談ですもの」

「儂の醜態をどうしたら美談にすることができるのだ!」

「そりゃあ、あの時のライオノールは可愛かったですもの」

「可愛いと言われて嬉しくないわ!」

「パーティーを前にして興奮したらダメですよ」

「ナナリーが儂を興奮させているのだろうが!」


 俺とソフィアはお父様とお母様の会話を聞いて笑い、お母様もお父様の反応を見て笑っていた。


「まったく。ナナリーに舌戦で勝てた覚えが無いよ」

「あら、そうかしら?」

「あぁ。5歳の時は大人しく、儂の話によく付き合ってはたまに意見してくれるだけだったのに、いつの間にかナナリーに言いくるめられるようになってしまった」

「あら、国王を言いくるめる妻って不敬かしら? 不敬罪でとがめられなければいいけれど……」

「儂がそんなことしないことを知っておいてそんなことを言うんだから」

「そうして怒るあなたも可愛いわ」

「だから、可愛いって言われても嬉しくないわ!」

「はいはい。軽口はこのくらいにしておきますね。それじゃあ、私たちは行きますか」

「あぁ、そうだな。ソフィア、行ってくるね」

「「行ってくるね」」

「行ってらっしゃい!」


 そうして、俺とお父様とお母様はパーティー会場へと向かった。



 * * *



 会場に着くと、そこには既に貴族たちが揃っていた。


 例の如く、「国王陛下、王妃様、王太子殿下のご到着」と使用人が言うと、貴族たちは皆頭を下げた。今回はジークたちを除いて子供がいないため、とても様になっている。子供のパーティーの時はキョロキョロする子供がいたからな。なんだか、「これぞ貴族」っていう感じがする。


 正面の踏み台に上り、お父様が声をかけた。


おもてを上げよ」


 この台詞好きだよね。多分、俺も国王になるとこの台詞を何度も言うことになると思うが。


「諸君。今日は来てくれてありがとう。儂とナナリーの息子が王太子になる、素晴らしい日だ。1,2か月前に招待状を送ってしまい、急な召集になってしまったがこれだけ多くの貴族が集まってくれた。重ねて感謝する。……」


 いつものように、お父様が初めの挨拶をする。


 それから2,3分して俺に話がまわってきた。


「最後にランスに挨拶をしてもらおう」


 お父様に呼ばれたので、そばに立ち、スピーチを始めた。


「皆さん、こんばんわ。今日は私のお披露目のために集まってくれてありがとう。これまで、私は王位を継ぐつもりはなかった。その為、昨日陛下に王太子に指名されたとき、かなり驚いてしまった。

 しかし、今こうして皆の前に立つと王太子に任命されたのだと実感が湧いてきた。まだまだ若輩者の身なれど、来たる戴冠の日に向けてより一層の努力をしてまいりたいと思う。これからよろしく頼む」


 すると、会場中から拍手が湧き上がった。


 まぁ、王太子就任を祝うパーティーだ。拍手しない人がいるはずがない。


「ランスの挨拶も終わった。これをもって、パーティーの開会を宣言する」


 お父様がそのように言い、パーティーが始まった。


「ランス。先程の挨拶見事だったぞ。昼間の挨拶とは違い、王としての威厳に溢れてあったぞ」

「ありがとうございます。貴族に舐められては国政に支障が出るかもしれないと思い、あのような挨拶にしました」

「それで正解じゃ」


 お父様と短い会話を終えると、早速フィーベル公爵と夫人が挨拶に来た。


「「こんばんは、陛下、ナナリー様。そして殿下、王太子への即位おめでとうございます」」

「こんばんは、フィーベル公爵、夫人」

「あぁ。ありがとう」

「殿下の勤勉さは城の者からよく聞いておりました。これからの活躍に期待しております」


 そう言うと、フィーベル公爵と夫人は去って行った。


 フィーベル公爵の後にはカナート公爵とアウルム公爵が挨拶に来た。その場にはジークとフレア、ハイド、サリーがいたので張り詰めていた気が少し和らいだ。やっぱり、同じ年頃の友達がいると随分気が紛れるものだ。


 公爵家の挨拶の後も各貴族の挨拶が続いた。今回参加できなかった貴族は何人がいるが、それでもかなりの数の人たちが挨拶に来た。そして、俺は彼ら一人一人に挨拶を返した。3年前から続けてきたことなので多少慣れてはいるが、やはり気疲れしてしまう。王太子になるとこういった機会が今まで以上に増えるのか。覚悟しないといけないな。


 挨拶が終わると、自由会談(フリートーク)の時間になった。すると、俺の周りには沢山の貴族が集まってきた。


「殿下は最近、何をなさっているのですか?」

「殿下、今度一緒にお茶でもいかがですか?」

「殿下、是非我が領に一度足を運んでください。精一杯おもてなしさせていただきます」

「殿下。実は家族皆で王都に来たのですよ。折角の機会ですので、妻と娘に会って下さいませんか?」


 こんな感じで言葉責めにあってしまった。子供のパーティーでは、『貴族の子供たちが同じ境遇の知り合いを見つける』という趣旨のもとで開催されている為、見合い話をすれば陛下に怒られてしまうが、この場ではそんなことを気にする必要はない。そういうわけで、どの貴族も俺とコネを作ろうと必死になっている。この場を振り切るのに数十分かかったが、何とか振り切ることができた。


 俺にしつこく話しかけてくる貴族たちを何とか振り切り、ジークたちのもとに向かった。


 ジークたちはホールの隅にかたまっていて、楽しそうに話をしていた。


「ジーク~~。疲れた〜〜。俺と代わってよ〜〜」

「そんなこと俺には言われも、困りますよ」

「そんな殺傷なこと言わないで、代わってよ〜〜」

「まったく、今日の殿下はいつもと違って、だらしないんだから」


 ジークは怪訝けげんそうに振舞うが、口角が少し上がっている。


 すると、ジークに続いてフレアとサリーが話した。


「でも、殿下のこういった姿を見ることができて私は嬉しいわ」

「そうね。私たちと同い年なのにいつも年上然とした振る舞いをするのだから。可愛らしい殿下を見ることができて、私も嬉しいわよ」

五月蝿うるさい! 可愛いなんて言われても、嬉しくないわ!」

「そうして子供っぽく反抗する殿下も可愛いですよ」

「五月蝿い! 俺は可愛くなんかない!」


 すると4人が笑い、俺が感じていた気疲れはすぐに吹き飛んでいった。


「そうだ! 折角王都に来たんだから、明日か明後日にでも城に来てよ」

「俺とフレアは3日後に帰るから、明日がいいな」

「俺とサリーは明日空いているから、問題ないよ」

「わかった。じゃあ、明日の10時でいいかな?」

「「「「いいよ(いいわよ)」」」」

「了解」


 その後、そろそろホールに戻って貴族たちの相手をしないといけないので4人と別れた。



 * * *



 ジークたちとお喋りした後は貴族たちと面白くもない話をした。本当に、面白くなかった。


 貴族達の相手を数十分していると、お父様がお開きを宣言し、俺はお父様とお母様と3人で退場した。


 3人で同じ馬車に乗り、城へと向かった。


「ランス。今日一日お疲れ」

「ランス、お疲れ。よく頑張ったわ」

「お父様とお母様もお疲れ様です」

「これで、ランスが王太子と正式に認められた。明日は一日休みにしているが、明後日からはまた忙しい日々が始まる。特に、仕事をしないといけなくなるから、大変だぞ」

「仕事ですか。国政には携わったことがないので、とても楽しみです」

「そうか。ランスは仕事をするのが楽しみか」

「ランスがこう言ってくれてよかったわ。王太子が仕事をしないで遊びほおけているなんてことになったらどうしようって心配だったの。けれど、ランスがすくすくと育っているのを見ると、その心配は杞憂に終わる気がしたの。そして、今ランスの口から『仕事が楽しみ』って言葉が聞けて、安心したわ」


 すると、右手に座っているお父様と左手に座っているお母様が俺に抱きつき、頭を俺の頭の上にのせてきた。


「ランス。立派に育ってくれてありがとう。儂は本当に幸せ者だ」

「お父様……」

「ランス。元気に育ってくれて本当にありがとう」

「お母様まで……」


 お父様とお母様は俺の頭に頬をスリスリと擦らせ、幸せそうに微笑んだ。


 その後、城に着くまで俺は2人の際限のない愛情を受け止め続けたのだった。

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