第5話 3歳 その2
〈前書き〉
この話では世界地図が出てきます。
世界地図を何とか作る事ができたので、Twitterにアップされている世界地図をぜひ見てください!
絵が拙いのはご容赦ください。
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お父様とお母様と一緒に寝た日以来、俺は2人にとても甘やかされている。
もともと親バカだった2人が我慢するのをやめたのだ。これでもかというくらい甘やかし、とても幸せな日々を送っていた。
だからといって、やるべきことを
特に、魔術の授業は面白かった。
魔術はスクロールに魔術インクに魔力を流し込みながら魔術の陣を書き、行使する際にはもう一度魔力を少し流し込むことで行使できる。
けれど、陣を書いた者と術を行使する者は同一でなければならないという制約があるのだ。つまり、他人が書いた陣は使えないのだ。それ故、魔術師も各所で重宝されているらしい。
さらに、一度用いたスクロールは灰となり、散ってしまうのだ。これも前世のアニメのような展開だったので、気分が盛り上がった。
魔術に関する基本的な知識は、他には以下のようなものがあった。
●スクロールも魔術インクも錬金術で作られる。
●魔術インクの魔力伝導性とスクロールに流した魔力量によって威力が決まる。
●魔術に用いる言語には様々あり、言語が難しくなるほど引き起こすことのできる事象の種類とその威力は増す。属性は魔法のそれと同じだけある。
●現代文語文字、現代魔術文字、古代文語文字、古代魔術文字、古代エルフ文字、神殿文字の6言語があり、書いた順に難しい。
●文字によって使う陣の形が異なり、
現代文語文字 三角形
現代魔術文字 四角形
古代文語文字 五角形
古代魔術文字 六角形
古代エルフ文字 七角形
神殿文字 円
となっている。
●魔術インクの魔力伝導性により質が異なり、E,D,C,B,A,Sの6種類に分類される。質が高いほど高価になる。
●神殿文字で陣を書くことができる人は現在いない。
●魔術には適性はない。けれど、魔術を行使するには魔法を行使するとき以上の魔力が必要なため、魔力量によって適性が判断される。
1歳の時から魔力操作の練習をしてきたため、魔力量には問題ない。そいういうわけで、魔術も座学と実践の両方を習うことになった。魔法と同じく、学ぶ言語は現代文語文字と現代魔術文字。
まぁ、現代文語文字はすぐに終わった。既に人間語は覚えていたので、あとは魔術の型を覚えるだけで、数ヶ月で勉強を終えた。
その後、現代魔術文字の勉強に移ったのだが、これも特に問題なかった。
ただ、世間一般の人からすると現代魔術文字は難しいらしく、普通に学ぶと早くても3年はかかるそうだ。
けれど、今の調子だと5歳になるまでにはマスターできそうだ。
それに、実際に魔術を行使するのは楽しい。
魔法はまだ基本属性の練習しかできていないが、現代魔術文字では特殊属性も使うことができる。といっても、静電気を少しだけ出すとか、弱い明りをポンと出すといったしょぼい魔術しかできないが。
まぁ、こんな感じで魔術の授業は進んでいた。
礼儀作法、文学、歴史、文化、地理は問題なかった。
この世界ならではの礼儀作法も沢山あったが、普段から習慣的に行っていたら問題ない。
ダンスを覚えないといけないのは大変だが、まぁ、なんとかなるだろう。
それに、地理、歴史は面白かった。
以前からこの世界の情勢について知りたかったのだが、その念願がようやく叶ったのだ。
せっかくのことだし、ここでこの世界のことについて説明することにしよう。
俺がいるのはラノア王国。北にはパラ砂漠、東には大きなアラ湖、南東にはルッキ―山脈、西にはエベラ山がある。
ラノア王国は王都とフィーベル公爵領、アウルム公爵領、カナート公爵領に分けられ、王都は国王の直轄領で、各公爵領はさらに大小いくつもの領土に分けられており、貴族である領主が治めている。公爵領が都道府県で、他の貴族領が市町村群ってかんじだ。
エベラ山からパラ砂漠に向かって川が流れており、川の向こう側にメリス教国がある。教皇が国家元首の国で、メリス教が国教となっている。カナート領の川の向こう側がメリス教国だ。
フィーベル領が面しているアラ湖の奥にはダリア共和国があり、一党制の社会主義国家だ。
ルッキ―山脈とエベラ山の間には大森林があり、その南にはアルム合衆国がある。他種族共生国家だ。様々な獣人や魚人が住んでいる。
アルム合衆国の西にはナロア公国があり、ここは選挙で国家元首が選ばれているらしい。民主制が敷かれているようで、この世界では珍しい。漁業が盛んだ。
アルム合衆国の東にはガルム帝国がある。もともとは4つの国に分かれていたが、それらの国々を併合し、帝国を築き上げたのだ。
あと、ラノア王国に面するエベラ山の麓にはエルフの森がある。排他的な種族であるエルフはそこに住んでいるらしい。
それと、以前、マリアに魔王と勇者の本を読んでもらったが、その勇者が現れた国がメリス教国だ。
当時、魔王はメリス教国に面するエベラ山の麓に魔王城を築き、メリス教国に侵攻した。
そのとき、メリス教国が召喚魔法の行使に成功し、勇者を召還した。
彼は魔王城に向かう道すがら、数人を仲間にし、魔王城へ向かった。
勇者は魔王城で魔王と決戦したが、致命傷を与える前に魔王が逃げたようだ。
逃げた先は大陸北西にある半島。
それ以降魔王は表立った行動をすることはなく、大陸に平和が訪れました。
まぁ、今迄に習ったことをざっくり説明するとこんなもんだ。
あと、この世界の貨幣は、銅貨、銀貨、金貨、大金貨があり、銅貨10枚が銀貨1枚、銀貨10枚が金貨1枚、金貨10枚が大金貨1枚の価値に等しい。銅貨1枚が大体10円だと思ってくれたらいい。
これから各国の地理・歴史について学んでいくが、まぁ必要になったら説明しようと思う。
政治、経済の授業も大したことはなかった。これも前世の知識のおかげだ。
だが、剣術と体術は大変だった。まぁ、3歳の子供が剣を持って訓練したとしても体を壊すだけなので、基礎体力の底上げが授業中に為された。
もう、はっきり言って、辛い。
講師はまさしく”鬼教官”なので、俺へのあたりが容赦ない。第二王子にとっていい態度ではない。いっそのこと、不敬罪で解雇したい気分だが、それでは講師が可哀そうなのでしなかった。
まぁ、この程度で講師を解雇しているようでは
魔道具と錬金術の授業は面白かった。
お父様は難しいようだったら初歩的なことだけを学ぶといいといったが、面白いので熱心に勉強した。
前世で言うところの、魔道具は工学に、錬金術は薬学にとても似ている。
魔道具作りでは回路を設計したり、各素材の特性を学んだりと、学ぶことが工学そのものだった。
錬金術では薬草や金属を混合し、武器や薬を作った。
まぁ、魔道具と錬金術の授業も面白いのだが、何より、帝王学はとても面白かった。
立場が上のものとしての振る舞い方や、外国からお客様がいらっしゃるときの対応法、国民を納得させるために効果的な演説(人心掌握術)を学んだ。
特に、人心掌握術は面白かった。
前世では、心理学も嗜んでいたので、その時に会得した知識が実際にどのようにして使われるのかを学ぶのはとても面白かった。
まぁ、こういった具合でとても充実した日々を送っている。
* * *
ある日、俺は勉強が一段落したので休憩するために自室から出た。
城の中はとても広く、3歳の俺が散歩するにはもってこいだった。そのため、疲れた頭を癒すときにはよく城の中を動き回っている。
すれちがう騎士やメイドは皆笑顔で挨拶してくれる。その為、俺も笑顔で挨拶を返すのだが、騎士やメイドはとても嬉しそうな表情を浮かべる。城内での居心地はとてもよく、快適な生活を送れている。
しばらくの間、そぞろ歩きしていた。いつもの道をいつものように歩いていた。
しかし、今日はいつもと違った。向こう側からヘルマン兄様が歩いてきたのだ。
「ご機嫌よう、ヘルマン兄様」
ほとんど会話をしたことはないが、一応家族なので挨拶をした。何も話さないで通り過ぎるのも失礼だからな。
しかし、ヘルマン兄様からの返事は意外なものだった。
「ふん。ランスはご機嫌なのか。勉強ばかりしていてどうしてご機嫌なのか俺には理解できないな」
はぁ? 喧嘩打っているのか?
数十年も続いた妬みだったが、転生してから初めて面と向かって言われたのでびっくりしてしまった。けれど、少し時間が経つと冷静さを取り戻し、怒り狂うことはなかった。
ヘルマン兄様はその一言だけを告げるとそのまま通り過ぎて行った。
はぁ?
あれが第一王子?
あんなのが国王になってしまったら、この国はもうおしまいだ。
腹違いの弟に嫉妬するのは別に構わない。嫉妬が自身の成長に繋がることもあるからだ。
しかし、嫉妬の鬱憤を他者にぶつけてしまっては意味が無い。それは
転生して初めてのヘルマン兄様との会話が俺への暴言だったことに落胆し、その後自室へとすぐに戻ることにした。
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