エピソード51-21

ポケクリバトル会場 14:35時――


 準決勝の対戦相手が決まった所で、シロミたちにカンペが出た。


「えー、皆様にお知らせがあります。明日の個人戦ですが、今日の団体戦で明日の個人戦参加予定者のうち、優秀な成績を収めたプレイヤーには、3回戦からのシード権が与えられます!」



「「「「わぁぁぁぁー!!」」」」



 先ほどクロミがうっかり口を滑らせたのは、この事だろう。


「それでは早速、準決勝前半、グループAとB、試合開始です!」


「「「「うおぉぉぉぉー!!」」」」


 今度は1試合ずつ中継するようで、歓声の中、両チームはテントの中で準備を始めている。

 最後のメンバーの設定が終了すると、『準備完了!』の表示が出て、すぐにカウントダウンが始まった。


「3・2・1 READY GO!」


「「「「わぁぁぁぁー!!」」」」


 対戦が始まり、フィールドにそれぞれのポケクリが召喚された。

 両者の召喚したポケクリを見て、観客たちがざわめき始めた。


「な、なんだと……?」

「あれって、超激レアだろ? 今まで隠してやがったのか!?」


 シロミが実況を始めた。


「おーっと! グループB、『サンライトイエロー・オーバードラゴン』を召喚したぁー!!」

「対するグループAは……こ、これは驚きました、激レアオブ激レア、伝説の暗黒竜『ブラッカラム』です!!」



「「「「うおぉぉぉぉー!!」」」」



 グループAが召喚したポケクリは、全く想定外の『ブラッカラム』であった。

 テント内のモニターで見守っていた蘭子たちに衝撃が走った。


「な、何ぃ!? ブラッカラムだとぉ!?」

「やっぱりな。そんな感じがしたんだ」


 達也は驚いていたが、ユズルと蘭子は意外に冷静だった。 


「Aにソフト開発者が紛れ込んでいる時点で、激レアを召喚するこたぁわかってた」

「そうだとしても、決勝で使えばイイのに、何で今なのかしら?」

「さぁな。この対戦でわかるんじゃねえか?」


 一同はモニターに集中した。


「おーっとグループB、刺客のフェアリー系『ドゥクシー』を召喚していた! ブラッカラムに【甘える】を放つ!」


 フェアリー系はドラゴン系に効く技を持っている。


「ブラッカラムのHPがゴリゴリ削られていく! 効果は抜群だ!」



「「「「うおぉぉぉぉー!!」」」」



 堪らずブラッカラムは【ルチン】を放ち、距離をとった。

 【ルチン】を浴びたドゥクシーは、毒を帯び、麻痺した。

 ドゥクシーの後ろから、黄色いドラゴンがブラッカラムに近付いて来た。


「ドゥクシーは最早戦闘不能だ! そこにサンライトイエローが迫る!」



「「「「おぉぉぉぉー!!」」」」



「おっと、サンライトイエローの前に氷系の『パルムン』が立ちはだかった!」

「電気系ドラゴンに氷系フェアリー、ガチですね」


 先に仕掛けたのはパルムンだった。


「パルムン!【テクノブレイカー】を発動! これは強力だ!」パァァー


 サンライトイエローのHPが徐々に削られていく。


「サンライトイエローのターン! 【サンダーブレーカー】発動!」ダダーン


 パルムンに技がヒットし、ごっそりとHPを削られ、消滅した。


「パルムン消失! 威力は今一つだが、総HP量の差が決め手となった!」



「「「「わぁぁぁぁー!!」」」」



 混線の末、他のメンバーも刺し違えたのか、手負いのドラゴン二体が残った。


「どうやら、ドラゴン同士の大将戦になりそうだ!」


 時間も残りわずか。両者は一撃に全てをかけるようだ。


「ブラッカラムが【溶解液】を吐き出す!」ブホォー

「サンライトイエローが、【デンジエンド】を発動!」バビィー


 同時に技が発動し、互いのHPを削っていく。



「「「「わぁぁぁぁー!!」」」」



 互いの技が炸裂し、硬直している二体。

 数秒後、一体が消滅した。



 ピピィ~!



 試合終了のホイッスルが鳴った。  


「サンライトイエロー消失! 勝者、グループA!!」



「「「「わぁぁぁぁー!!」」」」





              ◆ ◆ ◆ ◆




ワタルの塔 2階 応接室――


 レヴィ指導の元、『諜報用変装グッズ』を用いた『モブ子量産計画』を実行中であった。

 手本としてレヴィが黒髪ロングの前髪ぱっつんメガネの『夢女子系モブ子』に変装した。


「服は適当に『らしいもの』を持って来ました。私のもありますけど」

「ふむ。確かに『らしいもの』ですね。抵抗なく着れる……」

「イメージは大体、この本にあります。チョイスは慎重にお願いしますね?」パサ


 レヴィが一同に見せた本は、『ヲタク女子生態図鑑』であった。


「ふむ。ではこの中で二番目にエラく、ヲタファッションに詳しい私が代表して、皆さんにマッチしたタイプを選んであげましょう!」


 そう言ってルリは、図鑑を手に取り、それぞれのタイプを割り振った。


 ・佳乃  短髪スタジャンにキャラ物のトレーナー、スリムジーンズメガネの『ボーイッシュ系モブ子』

 ・萌   男向きアニメのヒロインから取り入れた、フリル多めファッションぶりっ子メガネの『自称姫系モブ子』

 ・みのり ボブカット花柄ワンピースに、ダボダボカーディガンメガネの『ライト系モブ子』

 ・ココナ 黒髪が腰まで伸びている、パーカーにロールアップジーンズメガネの『年齢不詳系モブ子』

 ・ルリ  チェック柄のシャツにバンダナ、ストレートジーンズ大型リュックメガネの『絶滅危惧系モブ子』


 レヴィはルリの的確なチョイスに感心した。


「流石は少尉殿、素晴らしい見立てです!」

「女子の方はイイみたいですね。あとは……」


 萌はジルを気まずそうに見た。

 ココナはルリに聞いた。


「ルリ、神父にはどんな格好をさせるんだ?」

「うん? そうですね。素材は極上ですから……ニヒヒ」

「ひぃっ、な、なるべくフラットにお願いします」


 ルリの生温い視線を感じ、震えあがるジル。 


「そうですね。これなんて、どうでしょう? 女物の服が入る時点でイラっと来ますが……」

「これを、着るのですか?」

「ああ、じれったいなぁもう。貸しなさい!」

「あぁ~れぇ~!?」


 ルリに押し倒され、修道服を剥ぎ取り、選んだ服を着せられるジル。


「ついでにお化粧しますよ!」

「お、お願いします……」


 ジルを座らせ、ファンデを塗り始めるルリ。

 カツラを操作し、ジルに被せ、最後にメガネを着ける。


「ふぅ。こんな感じで如何です?」

「ほぉ……」


 ルリが選んだのは、腰まで隠れる特大ロンTにピチピチのスキニーパンツメガネの『小洒落系モブ男』であった。

 一同に変装した姿を見せるジル。

 

「ど、どうでしょう?」

「へぇ。案外イイ線イッてますね」

「足細ぉ……羨ましいです」 


 変装したジルを見て、萌は感心し、みのりは溜息をついた。


「変装完了です! じゃあ、乗り込みますよ!」


 そこで、萌がある事に気付いた。


「すいません、初歩的な質問なのですが、ココから膜張にはどうやって行くのですか?」

「それはインベントリ経由……しまった! ダメだ、 バレてしまう……」


 塔からインベントリ経由で、献血カーに行けばコミマケ会場に行けると思っていたが、その場合、事情を知っているリリィ以外の者に見られる可能性が高く、隠密で行く意味が無くなってしまう。

 また、静流の学校を経由するにも、誰かのエスコート無しではいろいろマズい事になる恐れがある。

 レヴィが、ある事に気付いた。


「そう言えば大尉殿、ここまでどうやって来たのです?」


 レヴィは身を乗り出してココナに迫った。


「あ、ああ。ダーナ・オシーと塔はまだ【簡易ゲート】で繋がっていたのでな。『壱号機』で行く事も考えたのだが、なるべく事を大きくしない方が良いと思ってな」

「ときに大尉殿、『ラプロス壱号機』は、使える状態なので?」ハァハァ

「いつでも飛べるように整備してあるぞ。しかし、定員が……」

「お任せ下さい! イイ考えがあります」

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