エピソード51-20

ワタルの塔 2階 応接室――


 レヴィたちは、コミマケで開催される五十嵐出版によるファン感謝イベント『プロジェクトS4』に素性を明かさずに参加する為の対策を講じていた。


「レヴィ殿、この『諜報用変装グッズ』、実際どうやって使うのでありますか?」

「わかりました。私が実際に使ってみましょう」


 レヴィは、一同に見える様に向かい、テーブルに『諜報用変装グッズ』を並べ、椅子に座った。


 セットの内容は、


 ・顔認識能力を妨害する『チャフファンデ』

 ・瞳の色を瞬時に変える『偽装メガネ』

 ・髪の長さ及び色を瞬時に変える『偽装カツラ』


 であった。

 そしてレヴィはメガネを外し、一同に合図を送り、ストップウォッチを押した。


「それでは始めます! メーイク、アーップ!!」カチ


 レヴィは先ず『チャフファンデ』を手に取り、蓋を開け、付属のスポンジにファンデを付け、頬の内側から外側に向かって軽くスポンジを滑らせた。

 その後も口元から顎、額から鼻と、無駄の無い動きでファンデを塗っていく。


「スゴい。みるみる変わっていく……」

「何と言う手際の良さ。見直したであります!」

「チャームポイントのソバカスが……消えた」


 その次にカツラを手に取ると、内側にある操作パネルを操作し、カツラを両手で頭上に掲げた。


「装着!!」スポ


 レヴィがカツラを被ると、カツラの形状が瞬時に黒髪ロングの前髪ぱっつんに変わる。


「うわ……もう誰だかわかりません」


 最後に偽装メガネを付け、静流のやる様な仕草でつるにあるボタンを操作すると、瞳が瞬時に茶色になった。

 レヴィはストップウォッチを止めて立ち上がり、閉じピースを目尻にあて、決めポーズをとった。


「メイクアップ完了! ちなみにタイムは……4分28秒!」



「「「「おぉー!!」」」」パチパチパチ   



 一同から自然と拍手が起こった。


「典型的な地味ヲタ夢女子をイメージしてみました! 如何でしょう?」


 ドヤ顔で一同に意見を聞くレヴィ。 


「そうでありますね、狙い通り、一言で『地味』でありますね……」

「そうですか? 結構イイ線いってますよ? 普通にカワイイし」

「全く違和感ありません。これなら誰にも気付かれずにイベを楽しめますね!」


 素直な感想を述べる佳乃に、一応ヨイショする萌とみのり。


「くっ、やりますね。アジア系に寄せるのはマストですが、ここまで偽装可能とは……」

「化粧など滅多にしないし、する時は夏樹にやらせるからな」

「うぅ……私も、やらなくてはダメでしょうか?」

「神父、バレるのが嫌なら、やるしかあるまい?」

「……変な趣味が増えそうで、怖いです」


 パンパンと手を叩き、レヴィが一同に言った。


「それでは皆さん、メイクアップ、始めますよ!」



「「「「了解!」」」」



 こうして、『モブ子量産計画』がスタートした。




              ◆ ◆ ◆ ◆




ポケクリバトル会場 14:30時――


 30分の休憩が終わり、巨大スクリーンにゼブラッチョが飛び出した。


「お待たせしました! 只今より準決勝を行いまーすっ!」



「「「「わぁぁぁぁー!!」」」」



 会場は既に興奮度MAXとなっていた。


「えー。これからグループ代表に準決勝の対戦相手をクジ引きにより決めます!」

「各リーダーの皆さん、こちらにどうぞ!」



「「「「わぁぁぁぁー!!」」」」



 クロミに促され、一人ずつステージに上がる。


「グループA、『ミラージュ・ナイツ』リーダー、『バッシュ』さん!」


「「「「おぉぉぉぉー!!」」」」


 スーツ姿の一人目がステージに上がった。

 しかし、肩から上は特殊な光線を浴びている為、視認出来なくなっている。


「グループB、『ジュノーン・ボーイズ』リーダー、『ビッグワン』さん!」


「「「「おぉぉぉぉー!!」」」」


 チェック柄のシャツにジーンズ姿の、『いかにも』なインドアオタク風の二人目がステージに上がった。


「グループC、『ギャラクティカ・ソルジャーズ』リーダー、『ツンギレ』さん!」


「「「「うおぉぉぉぉー!!」」」」


 二本の白いラインが入った小豆色のジャージを肩にかけ、ベージュのロングスカートに赤いスニーカーという出で立ちの蘭子がステージに上がった。


「マブいぜツンギレ! イカしてる!」

「イイぞツンギレ! ボゴっちまえ!」


 やはり蘭子たちグループCの人気は群を抜いていた。


「グループD、『ミスティック・パワーズ』リーダー、『悪役令嬢』さん!」


「「「「うおぉぉぉぉー!!」」」」


 サイドに黒いラインを入れた、黄色い全身タイツ状のツナギを着た二人目がステージに上がった。

 これで、すべてのリーダーがステージに上がった。


「えー、予選を勝ち抜いたグループ代表リーダーの皆さんです!」


 

「「「「わぁぁぁぁー!!」」」」パチパチパチパチ



 紹介を受け、軽く頭を下げ、手を振るリーダーたち。


「では早速、クジ引きを行いたいと思います!」


 シロミがそう言うと、クロミが棒が四本入った容器を四人の前に差し出した。


「では、これと思った棒を掴んで下さい!」


 そう言われ、リーダーたちはそれぞれ棒を掴んだ。


「では、一気に引き抜いて下さい!」 


 四人が棒を引き抜いた。


「決まりました! 準決勝前半、グループAとB、後半、グループCとDです!!」



「「「「わぁぁぁぁー!!」」」」パチパチパチパチ



 準決勝の相手が決まり、会場は熱狂の渦に包まれた。




              ◆ ◆ ◆ ◆




献血カー内 14:35時――


 『ポケクリバトル団体戦』の生中継を見ている睦美たち。

 対戦の相手が決まって、残念がるカナメ。 


「あちゃ~、対戦はBが良かったんやけどなぁ……」 

「仕方ないさ。それに、このレベルまで来れば、何処のグループに当たっても、そう易々と勝たせてはくれんだろう」

「せやけどな。ただ、AとDで潰し合ってもろた方がよかったやろ?」

「確かにな。要注意のAと当たらなかっただけ、良しとしよう」


 モニターに各チームのメンバーが表示された。


 準決勝 前半

 

 グループA代表 ミラージュ・ナイツ


 P1 バッシュ

 P2 レッド

 P3 クロス

 P4 テロル

 P5 ヤクト


 グループB代表 ジュノーン・ボーイズ


 P1 ビッグワン 

 P2 スペードエース

 P3 ダイヤジャック

 P4 ハートクイーン

 P5 クローバーキング



 準決勝 後半


 グループC代表 ギャラクティカ・ソルジャーズ


 P1 ツンギレ 

 P2 親指溶鉱炉

 P3 スパダリ

 P4 メリーバッドエンド

 P5 自サバ女


 グループD代表 ミスティック・パワーズ


 P1 悪役令嬢

 P2 ハーレムチート

 P3 カンスト

 P4 エアプ

 P5 今北産業


 メンバー表を見て、カナメが吹き出した。


「プッ、しかし、どいつもこいつも、いい加減なネーミングやな」 

「深い意味はない。名前なんて、何だってイイだろ……」


 カナメにイジられ、睦美は口をとんがらせてむくれた。

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