エピソード35-12
保養施設内 三人部屋 ―― 23:00時
ルームサービスを装って侵入して来たのは、リリィ、仁奈、アマンダであった。
「布団は布団でも、『肉布団』よぉん♪」
「私たちはただの布団。人数にはカウントしないでね?」
「何だお前たち、そんな茶番が許されると思ってるのか?」
「イイじゃないですか、『悦び』は分かち合うものですよ? 中尉殿」
「なるほど、三つ繋げればこの位の人数なんて、余裕よね」
「貴様ぁ、これは私の寝相が悪いからであって、貴様たちの為ではない!」
正規組と不正割り込み組が小競り合いをしている。
静流は少しイラついていた。
「皆さん! もうイイですから横になって下さい!」
「認めると言うのか!? 静流?」
「このままじゃ朝になっちゃいますよ? それでもイイんですか?」
「ぐぬぬ、致し方無いか。おいお前ら、当然端っこだからな!」
「わかってますよぉ。でもあたしも結構、寝相悪いからなぁ?」
「大丈夫よ静流クン。私が掛け布団になって守ってあげるから。んふぅ」
結局正規組が内側で、他の連中は外側に寝そべった。
「じゃあ、変身しますね?」
「いよいよか、じらしおってからに」
「はうぅぅ、心の準備が……」
「行きます!『念力招来』!!」ゴゥ
静流は首に提げた勾玉を握り、変身のキーとなるワードを唱える。
静流の身体を桃色のオーラが覆い、バチバチとプラズマ現象が起こる。
オーラが消え、中から戦国時代の鎧武者を思わせるデザインの防具を付けた静流が現れる。
藍色を基調にした甲冑、ダッシュ1『百花繚乱』である。
「ムフゥ。ダッシュ1でも十分イケてるよね」
「さあ、次をお願い」
「チェンジ! ダッシュ6!ビシッ」
静流はスロットに『容姿端麗』のカードを挿入した。
パシュゥ! と言う音と共に、桃色を基調とした甲冑に身を包んだ静流が現れた。
『愛』と大きな文字があしらわれている兜からのぞく長い桃色の髪は、縦ロールが掛かっている。
和風ビキニアーマーの足元は太ももまでストッキングで覆い、ガーターベルトで吊っている。
「じゃあ、反転しますよ?」
「いつでもOKよ。ぬふぅ」
「イイわぁ、この次がいよいよね?」
「むふぅ、たまりませんなぁ」
するといきなりドアがバァンと開き、ドドドと数人がなだれ込んで来た。
「何じゃ、お前たちは!?」
イク姉が怪訝な顔で乱入して来た面々を睨みつける。
「ただならぬ気配がしたのです。この場所に」
「ダッシュ6様が降臨されているという事は、ま、間に合ったんですね」
「やっぱ、どうしても我慢出来なかったの。ごめんなさい、隊長」
「廊下で血相変えてみんなが出てったから、何事? って。ねえ真紀」
「危なかったわ。私らだけのけ者になる所だった。ねえ美紀」
フジ子を筆頭に、レヴィ・澪組と、工藤姉妹であった。
アマンダは溜息をついて、周囲を見回した。
「何よ、結局全員勢ぞろいじゃないの!」
「思いはみんな、同じって事ですよ」
「どうするの? 後は静流クンに任せるわ」
アマンダは静流に無茶ぶりした。
「このお姉様たちときたら……わかりました。皆さんそこに寝て下さい」
静流は、三つ連結させたベッドに、佳乃とココにいない真琴、美千留以外の10人を、ぎゅうぎゅうに詰めて寝かせた。
「ちょっとぉ、これじゃあ添い寝、出来ないじゃないの!」
「大丈夫です。だってイク姉と萌さん以外は、『肉布団』なんですよね? だったら問題無いですよ」
静流は何か企んでいるようだ。
「じゃあ、行きますよ? 反転! 裏モード『眉目秀麗!』」
『容姿端麗』のカードを一度抜いて、裏返しにする。
パシュゥ! と言う音と共に、ダッシュ6、容姿端麗モードの反転と思われる、桃色から黒に変わった鎧を付けた静流が現れた。
女性的な鎧から、スリムながら男性的なデザインの鎧に、両手剣を携える。
兜の『愛』の文字は残され、兜からのぞく長い桃色の髪は、サラサラのストレートである。
左目を眼帯が覆う、超絶美形の静流となった。
「「「「「来たぁぁぁぁ!」」」」」
真っ先にレヴィが反応し、他の者が追随する。
「むふぅ。素敵……です」
ダッシュ7は、兜を取り、鎧をパージした。ガシャァ
そして帯を緩め、着物をはらりと脱ぎ、フンドシ一丁となる。
「これが正真正銘の生ダッシュ7……素敵です」
「くふぅ。たまらないわぁ、この波動」
「早く来て下さいまし。旦那さまぁ」
「もう、イッてもイイですかぁ」
ベッドに寝ている10人は、ダッシュ7の容姿を見るなり酩酊状態になっている。
「ソレを貸してもらおう」
「コレ、ですか? どうぞ」
ダッシュ7は、フジ子から例の『霊毛タワシ』を借りた。
『タワシ』と呼んでいる桃色の毛束はむしろ、『筆』に近い肌触りであった。
「すぐに楽にしてやる。行くぞ! とう!」
静流は肉布団に飛び込み、霊毛タワシでいたるところを撫でまわす。
「「「「ふぁうぅぅーん」」」」
「何? この新触感」
「くはぁ、たまりません」
「この厚い胸板……素敵」
次にダッシュ7は、身体を90度回転し、肉布団の上をゴロゴロと回転している。
【ローリング・サンダー・アターック!】
「「「「あっふぅぅーん」」」」
ダッシュ7が肉布団たちの上を転がる度に、霊毛タワシの摩擦も相乗効果を起こし、快感の波が押し寄せて来ているように見える。
「あぅ……し、静流クン、もう、我慢出来ない」
「は、早く、楽にしてちょうだぁい」
「「「「お願ぁーい♡」」」」
肉布団たちは、顔を紅潮させ、もはや限界といった具合であった。
効果を確認した静流は、おもむろに立ち上がった。
「頃合いか。ならば、それがしがそなたたちを快眠へと誘ってくれよう!」
静流はスロットに『アノ』カードを挿入した。
「いざ参る!『旭日昇天』!」
技名を叫ぶと、刀は持っていないので両手をグーにしてクロスさせ、フィギュアスケートのスピンの様に回り出し、桃色のオーラを放つ。フワァァァァ
部屋全体が桃色に変わる。
「「「「「きゃっふぅぅぅぅぅん♡♡♡」」」」」
本来は広範囲に使うダッシュ7の技を、至近距離で浴びた肉布団たちは、両目が♡マークになったまま、微動だにしなくなった。
「うわぁ、やっぱえげつない技だな」
「ちょっと静流、コレ、ヤバいんじゃないの?」
休止モードになっていたオシリスが、魔力を探知したのかいつの間にか起動していた。
周りを見渡すと、両目が♡マークになった美女たちがあちこちに倒れている。
ベッドからこぼれて落ちいる者や、他の者と重なり合っている者など、まるで乱交パーティーの終盤の様であった。
「そう言えばこの技って、ゴーレムにしか試してなかったな」
「物凄い波動だったわ。暫く起きないわよ、この人たち」
「その方が都合がイイよ。さてと、後始末するか」
静流は肉布団たちを姿勢正しく並べ、布団を掛けてやる。
レヴィが鼻血を出していたので、静流が拭いてやり、横に寝かせる。
「んむぅ、静流様ぁ」
「ムグ? ちょっと、萌さん!?」
萌を布団に寝かそうと、お姫様抱っこした静流の唇を、萌は自分の唇で塞いだ。
「油断した。萌さんって最初はツンデレだと思ったんだけどな」
「確かに。でも最近はデレデレだけどね」
ベッドに寝かせると、萌はニヤつきながらかわいい寝息を立てている。
「へへぇ。むにゃぁ」スー、スー
満足げな一同の顔を見渡した静流は、ふぅっと溜息をついた。
「本当にこんなので、みんなは満足してくれたのかね?」
「イイじゃない。みんな幸せそうな顔してるわよ」
数分間が経ち、ダッシュ6に戻ってしまう静流。
「ありゃ、時間切れか?」シュゥゥ
忘れていたが、フンドシ一丁だった。
「ひゃあ、どうしよう」
静流はあわてて浴衣を着こんだ。
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