エピソード35-13

管理センター ――


 静流たちが401号室でやらかした直後、


  ビィィィィ!


 いきなりアラートがけたたましく鳴りだし、職員があわただしく走り回っている。

 管理職がバタバタしている職員に聞いた。


「どうした! 何事だ?」

「チーフ!膨大な魔力反応です! 発生源は4階フロアの客室エリアのようです!」

「何? 宿泊客の安否は?」

「只今確認中、何ィ? 本当か?」

「どうした今度は?」

「4階フロアの女性従業員が次々に無効化されています!」

「無効化? 麻痺か? 昏睡か?」

「両目が♡マークになっています! 何かの【状態異常】を起こしていると思われます」

「ぐぬぬ、わからん。何が起こっているというのだ!?」





              ◆ ◆ ◆ ◆




402号室 ――


 肉布団たちを寝かしつけた静流は、真琴たちがいる402号室に行く。

 途中、廊下でなにやら騒いでいる。


「おい、担架持って来い!」

「大丈夫ですか? しっかりして下さい!」

「はひぃ。幸せ」


 担架で運ばれている女性従業員は、両目が♡マークになっていた。


「静流、あの子、イッてるわね」

「うぇ? 部屋から漏れていたのか。真琴たちは大丈夫か?」


 静流は急いで402号室を訪ねた。



 ピンポーン! 



「真琴、起きてるか?」ドンドン


 静流は少し焦っていた。


「はぁい」カチャ

「真琴!? 良かった、無事だった」

「誰? って、静流か。何でまだダッシュ6のままなの?」

「あ、ああ。ちょっとしたエラーで、暫く戻れないんだ」


 真琴はダッシュ6の静流を部屋に入れた。


「しず兄遅いよって、アンタ誰よ?」

「僕だよ。鎧解除しても、暫くこのままなんだよ」

「うわ。実物メチャ綺麗じゃん。スタイル抜群だし」

「確かに。自信無くしちゃうな」

「そんなにジロジロ見るなよ、恥ずかしいだろ?」

「物凄い破壊力ね。柳生先輩がいたら、むしゃぶり付かれるんじゃない?」


 二人に舐めるように見られ、照れている静流。


「どうする露天風呂? いつ戻れるかわからないんだけど、クローズしちゃう前に行くか?」

「イイじゃん。一緒に入ろ! しず兄」

「そうね。今の身体なら女湯に入れるもんね」

「マジですか?」

「面白そうじゃない。行こ、静流」




 

              ◆ ◆ ◆ ◆




メディカルセンター ――


 4階フロアで無効化された女性従業員たちをメディカルセンターに収容し、様子を見ていた。

 チーフは、従業員の容体を確認するためにセンターを訪れた。


「あらチーフ、大変だったみたいね」

「ドクターか。ああ、原因が全く分からんのだがな」

「恐らくなんだけど、あの波動は魔導研究所の方たちが使ってる部屋からだと思うわ。内線で『問題はない』との連絡があったみたいよ」

「技術少佐殿たちか。何かやったのかもしれんな」

「まあ、他の宿泊客に異常が無かったのが幸いよね?」


 技術少佐たちは、どうもその筋では有名人らしい。


「それでドクター、従業員の容体はどうだ?」

「ええ。完全にリラックスしているわね」

「何? どういう事だ?」

「アルファ波の数値が増大、みんなが癒されてるのよ」


 管理職がベッドを覗くと、どの職員も安らかな寝息を立てている。


「どう見るドクター、この状況を?」

「そうね、例えば、【キュア】に近い回復系魔法を高レンジで放った、とか?」

「なぜそう言い切れる? 見方によれば『大規模テロ』ともとれないか?」

「そっちの方じゃなくて、ほら、アナタも聞いた事あるでしょ? 『アスモニアの奇跡』とか」


 以前、アスモニア航空基地で静流がやった『施術』の事であろう。


「ああ、シズルカ様の奇跡ってやつか。そっちの方はどうもうさん臭くてな」

「あの研究所が絡んでるって、ドクター仲間が言ってたわよ。うらやましい」

「今回のもそれに関係してるのか? 陰謀説は無いのか?」

「それはあり得ないわ。だってみんな、こんなに安定しているのよ? 絶頂に達した、と言えば、わかるかしら?」

「要するに、『イッた』という事か?」

「そう。ここまで鮮やかなものはそうそうお目にかかれないと思うわ。ああ。私も受けてみたいなぁ」


 ドクターは手を胸の前で交差させ、『乙女のポーズ』をした。


「フン。明朝事情を聞く事にするか」




 

              ◆ ◆ ◆ ◆




露天風呂 女湯 ――


 脱衣所で浴衣を脱ぐ静流。


「何それ、トランクスじゃん。ブラもしてないし」

「しょうがないじゃないか、フンドシよりは増しだろ?」


 先ほど静流は部屋にあった自分の荷物から、トランクスを持ち出し、トイレではき替えたのだった。


「なぁ、ホントに入らなきゃ、ダメ?」

「ココまで来て帰るの? しず兄」

「星観たいって言ってたじゃん、行こうよ」

「わかったよ。引っ張らないでくれよ」


 バスタオル一枚の二人に手を引かれ、浴室に入った。

 先ず身体を洗う為、洗い場のイスに座った静流。すると、


「しず兄、洗ってあげよっか?」

「イイよ、自分でやるから」

「遠慮しないでイイから。それっ!」


 美千留に半ば強引にバスタオルをはぎ取られる静流。


「こ、こら美千留!」

「へへ。観念しなさい」


 美千留は手にボディソープをとり、泡立てると、うしろから手を伸ばし、静流の豊満なバストをまさぐった。


「ひゃあ、何すんだよ!」

「うひゃあ、もみ心地満点だわこりゃ」ぷにぃ


 美千留はさらに静流のバストを執拗に攻めた。


「うむ、実にけしからんパイオツであるな。こうしてくれよう」むにゅう

「お、おい、いい加減に、しないか、あは」

「ビーチクが堅くなってるよ? ひょっとして、感じちゃってるのかな?」


 美千留が小悪魔的な表情で双丘の頂上をつまみ上げる。


「ひゃあ、お前、いつ覚えるんだ? そんな技」  

「本能のままにヤッてるだけだよ」


 静流の豊満バストをこれでもかと堪能した美千留は、満足したのか自分の身体を洗いに隣に座った。


「じゃあ、次は私のココ、洗って?」

「おいおい冗談だろ? 年頃の男をあまりからかうんじゃないぞ?」

「今は女だけどね? 何さ、しず兄の意気地なし」

「先に岩風呂に入るぞ」


 静流は体についたボディソープを洗い流し、岩風呂に向かう。 


「さて、入るか」


 静流は、前を隠していた手ぬぐいを取り、頭にのせた。

 この状況下でも、最低限のエチケットは守る静流であった。


「ふう。気持ちイイ。やっぱ来てよかったぁ」


 静流は縁の岩にもたれ、伸びをしている。すると、


「静流、今、こっち見ないでよ?」

「真琴か?」


 真琴が岩風呂に入って来た。


「ふぅ。もう大丈夫よ」

「でも、何もつけてないんだろ?」

「夜だし、お湯の中だから良く見えないでしょ?」


 そう言われて静流は、胸を隠す為、腕を組み、恐る恐る真琴の方を見た。


「ね? 大丈夫でしょ?」

 

 何の事は無い。真琴も腕をクロスさせ、肝心な部分は隠していた。


「小学校上がる前だよな、一緒にお風呂入ってたのって」

「うん。そんな事もあったね」


 物思いにふけり出しそうになっていた二人に、唐突に声が掛かる。


「おーいしず兄と真琴ちゃん、絶壁エリアに行くよ!」

「わかった。今行くよ」

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