第3話、妖狐の洞窟

「学校ではよくあるハプニングよ。

新しいジョブが使えるようになって、早速ジョブチェンジ!

ギャッー!ってね。

まあ、男の子だけよ。

さすがに女の子は、そういう失敗はしないわよ」


「その貴重な女子がここにいるぞ」


「ああ、あんたは別よ」


「ほお、これがあの時のサルか。

見る影もないな」


「こっ、こんにちわ……」


「おお、あたしはオミナだ。よろしくな」


「タケルです……」


「今日の討伐に、応援を頼んだの。

普段、一緒にパーティーを組んでいる獣人のオミナよ」


「おわっ!なんだ<狙われた女豹>ってのは!

犯人はお前か!」


「僕は忘れませんよ。

この傷をつけた獣人を!」


そう宣言して、前髪をかき分けた。


「ギャッハッハッ!

やっぱりハゲになったか。

ワルかったよ。

お詫びにいつでもヤらせてやるからよ。

その気になったら、あたしんとこに来いよな」


「何のことよ?」


「ああ、こいつがあたしに称号を授けたのさ。<狙われた女豹>ってな」


「んもう、タケル、強く相手を憎んだりすると、因縁ができちゃうんだから駄目よ」


「そういや、おまえにも似たような称号があったよな。<結婚詐欺>だったか」


「それは……小さい時の戯言ざれごとよ。

あのバカ、それを真に受けて10年以上経ってから突然プロポーズよ」


「純真な男心を弄んだもてあそんだ罰だな」


「だからって、結婚詐欺はないでしょ。

それで、狙われた女豹ってなによ」


「たぶん、こいつにも女豹を犯すと誓った者とかいう称号が刻まれたんだろうさ」


「駄目よ!タケルの初めての相手は、もっと相応しい相手を選んであげるんだから」


「まあ、あと数年先だろうから、ゆっくり考えればいいさ。

そういえばシラン、お前も処女だろう。初物同士でいいんじゃないか?」


「私たちは姉弟よ。血はつながっていないけど、聖女のお姉ちゃんが認めるはずないでしょ」


「ああ、サクラさんの壁は厚そうだな」


「馬鹿な事言ってないで、出かけるわよ」


俺たちは防具屋に寄って簡単な装備2セットを購入・装備し、昼の弁当を買って城壁の外に出た。

移動は、Gボードという重力制御で動くオートバイのような乗り物だった。


『それで、妖狐の洞窟でいいんだな』


『中級だけど、あまり深く潜らなければ問題ないでしょ』


オミナさんをパーティーに加えて、俺は初めての迷宮に挑戦する。

…っていうか、普通は町の周辺で経験してからじゃないのか…


30分で迷宮前に到着した。

俺がシラン姉さんの後ろから降りると、二人ともそのままジョブチェンジした。

あんなものまで、手荷物扱いで収納できるとは、ジョブ…便利すぎるだろう。


迷宮の入り口は、「ヨーコの洞窟・中級」と看板が出ていた。

入口の女性型ゴーレムに、一人500円払って入場する。


「もしかして、遊園地のアトラクションみたいな感じなの?」


「タケルのいうアトラクションが何なのか分からないけど、ここは世界で初めて管理・営業化された迷宮よ。

照明や案内図も整備されているし、食堂や休憩所もあるわ。

冒険者登録証でモニターされていて、生命的な危険状態に陥った場合は有償でゴーレムによる救護もあるわよ」


「武器や防具のレンタルもあるし、シャワーやトイレが使えるのも魅力だな」

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