第1話、エルフと同棲?

結果的に、俺はエルフの姉妹に育てられることになった。

エルフとは森に暮らす人種で、自然崇拝主義者でもある。

髪は銀色で、耳が少しとがっており、肌は白い。

基本的に菜食主義者であり、結果としてスレンダーな体系となる。


近年、一部のエルフがこの姉妹のように人間の里で暮らしているため、そこまでの違和感はない。


俺を引き取ってくれたのは、この世界で初めて俺に触れたシランと、その姉サクラである。

俺を生み出した竹には、下の段に良質な魔石が詰まっており、根元には黄金が埋まっていたそうだ。

その1割が発見したパーティーに報奨として配分され、シランは養育費用として更に3割。ギルドが2割徴収し、残り4割は俺の財産としてギルドが保管する事となった。

総額は推定1億円。

俺の養育期間は10年と決められた。


その夜から、地獄が始まった。

普通なら3650日かけて成長するところを、90日で成長するのだ。

骨が皮膚や筋肉を突き破る勢いで伸び、関節も悲鳴をあげる。

消費される養分を補充するため、絶えず食事を必要とした。

幸いなことに姉のサクラが医療関係の知識を持っており、必要な栄養をペースト状にして与えてくれた。


姉妹が日替わりで入浴させてくれたが、二人の雪のような白い肌を堪能する余裕はない。

幸いにも、金銭的な余裕があったため、シランは冒険者としての活動を休止し、俺に付き添ってくれた。


サクラは教会兼治療院で聖女兼任の医師として役に就いており、日中は抜けられないのだが、神父が光る竹から生まれた俺を神の御子として扱い、本来なら神父の居室として使われる居住部分を姉妹に開放してくれた。

このため、幼少期の俺はシスターとヒーラーの見習いたちに囲まれて過ごす事となった。

マリアは、早速ハーレムを実現しましたねと、からかってきたが、相手をする余裕もなかった。



そうこうするうちに、3か月が経過した。

3か月が過ぎて、成長が止まったと言っても、成長の追いついていない筋肉や関節は痛みを訴えている。

俺が落ち着いたころを見計らい、サクラは郊外の家を購入した。

引っ越しと並行して、俺の住民登録が行われる。


【タケル・モウソウ・NJP】が俺の名前となったが、住民登録は姉妹の姓をもらい【タケル・モリビト・NJP】で行われた。

名・姓・国籍で構成された名前は、全国共通であり、冒険者ギルド登録も兼ねている。NJPは、ニュージャパンの略称だ。


この世界では、10才を迎えた11月から2年間、養成所と呼ばれる学校に入る事が義務付けられている。

7月7日に生まれて3か月を経た俺は、可能であるならば2週間後に入学することになる。というか、体の大きさから10才とみなされただけなのだが……


特殊な成長を遂げた俺を、普通の弟として育てたい。

サクラ姉ちゃんのそんな気持ちを察して、俺は入学に同意した。


普通ならば10年の間に適性を見出し、自分の将来に応じた養成コースを選択するのだが、魔王討伐が目標である俺には冒険者コース以外の選択肢は考えられない。

幸い、現役の冒険者であるシラン姉ちゃんがいるため、2週間で詰め込みをやってもらう。


「まずは、基礎中の基礎。ステータスの確認からよ。

そこで最も重要な事は、スキルとジョブの項目は、絶対に他言たごんしないこと。

これは、親兄弟にも教えちゃだめよ。

私のスキルは誰も知らないし、タケルにも教えない。

表示された時に、クチに出さないように意識しなさいね」


「何で他人に知られちゃいけないの?」


「そうね。例えば人を救うことのできるスキルがあるのに、救うことができなかったら、タケルはどうする?」


「ああ、そういうことか」


「だから、他人のスキルを詮索するのはタブーなのよ。

一方で、継続的なパーティーでは、ジョブはパーティー内で共有するわ。

そうしないと、戦略が立てられないからね」


「一時的なパーティーはどうなの?」


「取得しているジョブクラスである程度は推測できるからね。

原則は追及しないわよ」



こうして俺の異世界生活が幕をあけた。

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