その後 「剣友会」
「沖田様、お待ちしておりました。皆さんお待ちです」
女給に連れられて廊下を歩く。明治、東京の料亭である。
「遅いぞ、沖田君」
皆が揃っている。永倉、原田、斎藤、吉村、そして沖田である。年に一度、『剣友会』と称して集まっている。結果、未来へ行って死んだのは近藤と土方のみであった。近藤は隊士それぞれの最期を伝え、脱退しても良いと言った。鳥羽伏見の戦いに参加して後、永倉以下五名は生き残る選択を取った。土方も止めなかった。
「結局、みんな生き残っちゃいましたね」
沖田はそう言って酒を飲んだ。
まったく御一新というのはたまげましたね、と沖田が言うと永倉は言った。
「我々はさらにその先を経験したのだ。これしきの事は大したものではない」
斉藤は静かに飲んでいる。原田は懐から免許証を取り出した。
「俺が彰義隊と命運を共にするなど有り得ぬ」
試衛館からの面々は生き残る事を選択した。しかし決して新選組の話はしなかった。名前を変え、町人に変わり、剣を捨て、生き残ったのである。
「まあ、その話はそれくらいにして、酒を楽しもうではないか」
穏やかな酒席になった。史実では切腹した吉村も現代では農民になっている。
「国元から酒を持って参りました」
元隊士達の夜は長い。
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