最終話 鳥羽伏見の戦い

新選組は淀、千両松の陰に隠れ、薩長軍の進軍を待ち伏せていた。


「此処なれば鉄砲も扱い辛かろう」


近藤はと同じく千両松に新選組を布陣した。近藤は現代で得た知識をもちいて戦陣に入った。土方が


御陵衛士ごりょうえしの狙撃を避けたのは正解でしたな」


「うむ、我々も大人しく史実を知って従うほど馬鹿ではない」


史実では淀での戦いの前、近藤は御陵衛士の残党により狙撃される。しかし近藤は狙撃される道を避けた。それによって狙撃によって重症を負うはずの近藤が淀で陣頭指揮を取っている。新選組の士気は高い。


「来ましたぞ」


鼓笛隊を先頭に敵軍が進軍してきた。


「十分引き付けて攻撃するように」


隊士達には下知げちしてある。


「今だ!」


新選組は敵軍に襲い掛かった。たちまち乱戦になった。味方を誤射してしまうので迂闊に鉄砲を使えない。


「斬れ、斬れ」


近藤が叫ぶ。隊士達は縦横無尽に戦っている。敵軍は錦の御旗を掲げた。


「ふん、知っておるぞ」


近藤は素早く新選組を撤退させた。いたずらに戦力を失う訳にはいかない。

新選組は手筈てはず通り素早く撤退した。


「ふふ、お前たちの良いようには戦わぬぞ」


近藤達は幕府軍の応援を待たず、ゲリラ攻撃に転ずる。歴史に干渉する訳では無いが、近藤は新選組を解散し、新たに攻撃隊として再編成した。


最早もはや我々は幕府にも見放された。後は思うように攻撃せよ」


最期の指揮を取った近藤は結果として流山にて捕縛、斬首となるのであるが、散々に敵軍を悩ませた。沖田も敵を斬って鬼神のごとく活躍した。新選組の歴史はわずかながら変化する事になる。


「戦車が一台有れば戦局も優位に運べよう」


土方は言った。


「うむ、仕方なかろう」


隊士達が未来より帰った事で、歴史も変わる事となった。史実では吉村は盛岡藩の大阪屋敷で壮絶な切腹をするはずであったが、斎藤と共に会津藩と命運を共にし、後に家族の待つ盛岡へ帰った。原田は史実では上野で彰義隊と運命を共にすると有るが行方不明になったままであった。生きているのだろう。沖田は行方をくらまし、永倉は離脱した。史実通り死んだのは近藤と土方であった。


「沖田さん、仕事サボらないでくださいよ」


青空を見上げている沖田に女給が注意した。新選組の一番隊の隊長が今や月給取りになっている。短く刈りあげた頭を掻いて職場に戻る。何時でも、何処でも思い出されるのは新選組に居た時の事ばかりだった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る