第165話奔走
「今風の若者、という感じですね」
次はドレスの試着だ。こればかりは男達が何人いても仕方が無い。理恵、理恵の母、薫、詩織で選んだ。しかし本人はあまり執着が無く、シンプルなものが良いと言うので一番人気のあるドレスにした。
「私と総司さんが納得出来たら良いの」
仰々しい披露宴など無い、至って質素な式、二人の為にある式。理恵は仲の良い友人しか呼ばず、親戚を呼ぶのを嫌がった。総司は何か彼女に思い当たるものがあるのだろうと口を挟まず本人の思うようにさせた。式場の下見をした。小さな教会であるが作りは本格的な教会だ。実際に式にも使われたと言う。なんの不満も二人には無かった。
結婚式当日。新婦と新郎の参加者が集まった。
「ちょっと!あれ、モデルのHAJIMEじゃない?」
「本物だわ、デカいし雰囲気有るし」
斉藤は笑顔も見せず
「どうした斉藤君、浮かない顔だぞ」
「新婦の顔色が優れないように思えてしまいました」
原田はそういう細かい所は気にしない人間だった。
「簡素な式だと言うから、直ぐに病院に帰れば心配あるまい」
二人の式は始まった。新郎新婦は次々と入場し、神の前で宣誓を行い、誓いのキスをした。周囲からは拍手が起こった。理恵の友人は制服で参加したが詩織のドレス姿を見て
「ねぇ、あの女の子CAMのモデルじゃない?」
「新郎側の親戚って何なの」
式場の入り口で記念撮影をして散会となった。理恵は親友と短いお喋りをしてドレスを脱ぎ、病院へ戻った。新郎側は手持無沙汰になったが直ぐに女子高生に囲まれた。
「うわ、やっぱりHAJIMEだ。オーラ半端ない」
「私もドレス着たい」
斉藤と詩織を交えて記念撮影。女子高生には十分なお土産である。その中の一人が沖田につかつかと詰め寄り、言った。
「理恵を幸せにしないと私達が許しませんよ」
沖田は答えた。
「もちろん、男に二言はありません」
堂々としたものである。土方は沖田の心境の変化を見逃さなかった。
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