第153話連休の隊士達
「諸君、連休である。我々も慰労も兼ねて稽古も休みとする。各々ゆっくり羽を伸ばす事」
天然理心流の稽古は激しいものである。型稽古ではあるがその厳しさは小野派一刀流とは別の次元にある。多摩の田舎剣法と揶揄されたのは多摩の農民に出稽古をしていたからだ。しかしこの流派がやがて日の目を見る事となる。
「まあ夜の稽古が無いと言うのはありがたいですな」
沖田も忙しくなった。魚屋でバイト、病院の稽古。体力も回復した。
「労働者に連休も何も無いです」
原田は時間の合間をぬって教習所へ通っている。すっかり現代人になってしまった。
「学校が無いのは有難いですね」
吉村の塾も中学も休みである。すこし休もうと思っている。
残りの隊士達は何時も通りの生活である。
「何処へ行っても人だらけでしょう。小野田家で過ごす方が良い」
斉藤は酒を飲む事に徹する事にした。詩織は忙しいらしく、酌の相手もろくにしてくれない。寂しいものである。近藤が提案した。
「諸君、各々予定が有ると思うが、たまには街に繰り出さないか」
近藤の一言で決まった。祐介と詩織に見送られて残った隊士は街に出た。
「ところで斉藤君、昼食はどうするね」
「人混みを避けて、開店直後に入るのが良いかと」
近藤のおごりということで一同気分が良い。斉藤のお勧めの海鮮丼を食べさせる店に入った。テーブルを二つに分けて座った。ビールも注文してある。昼も日中にのんびりとしたものである。魚介類の沢山載っているどんぶりがやってきた。
「そういえば我々の時代にはどんぶりは有りませんでしたね」
吉村が言った。
「まあ百五十年前では無理だろうな」
斉藤は答えた。舌鼓を打ち、外に出た。
それにしても人が多いですね、と永倉は言った。街には多くの人々で賑わっている。
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