第152話何もない日曜日

日曜日は小野田道場も休みで隊士達は好きな事をやっている。縁側では沖田がウクレレの練習をしている。縁側の隅で斉藤は詩織の酌で酒を飲んでいる。


「歳、待った」


「待ったは無しですよ」


近藤と土方は碁を打っている。春の陽気が道場にも満ちている。吉村が詩織に宿題について質問をしてきたので斉藤の酌を止めて答えを教えている。


「なるほど、ここで代入するのですね」


吉村は納得したらしく、道場の片隅で勉強を続ける。原田は仕事だ。永倉は庭先で白猫とたわむれている。何度目の日曜日か斉藤は考えようとしたが無益な事を止めにした。詩織が珍しい肴を持ってきた。


酒盗しゅとうですよ」


かつおの内臓の塩辛である。チヨが魚屋から持ち帰って来たものだ。


「今日はなんと珍味にありつける日だな」


外出ばかりしていた斉藤は暖かくなるにつけて人混みが多くなるこの時期を嫌い、また縁側の隅で飲むようになった。珍しく吉村が酒を飲みたいと詩織に言って来た。


「今日は勉強は終わりですか」


「はい、このような良い天気に勉強も無粋かとおもいまして」


で結構ですと詩織に伝えると詩織は升酒で持ってきた。酒盗を一口、酒を飲むと吉村は


「なんとも贅沢ですな」


と感嘆した。斉藤と吉村が酒を楽しんでいる所へ沖田のウクレレの音色が聞こえてくる。


「もう、沖田さん、昨日教えた事もう忘れている」


詩織が沖田からウクレレを奪い、こう弾くんです、と教えていた。明るい音色が道場に響く。


「いやぁ、舶来の楽器は難しいなぁ」


沖田はとぼけて見せた。



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