第151話沖田の悩み

「と言う訳でして僕も困っています」


新田理恵に関しての悩みを近藤に打ち明けた。


「ふむ、不治の病で余命いくばくも無いと」


近藤は静かに聞いていたが沖田に答えた。


「その少女に天然理心流を教えても良い」


沖田は驚いた。大胆である。


「しかし我々のあばかれるかもしれませんよ」


「それならばとうに病院関係者に知られているだろう」


そんなことよりも、と近藤は続けた。


「剣よりもお前に興味があるんじゃないか」


そんなことはありませんよ、と沖田は答えた。沖田には女の話が無い。全てを剣に賭けてきた。それは今でも変わらない。


「総司は本当に鈍感だな」


側で聞いていた土方は口をはさんだ。


「興味が無ければ話しかけなどしないだろう」


土方の正論に沖田は口をつぐんだ。


「総司、初の女子門下生として扱いなさい。私が思うにもう彼女も死期を悟っている可能性が高い」


近藤は冷静に考えている。


「少々に指導するように」


近藤は沖田に指示した。小児科の沖田の稽古の評価をかんがみての事だった。

彼女にも良い傾向が有るかもしれない。


翌週。子供達は一生懸命に小太刀を振っている。沖田はしばらく指導して新田理恵と稽古をする事になった。


「新田さんに天然理心流を教える事に許可が出ました。とはいっても厳しい稽古はするつもりはありません。あくまで貴女の健康維持を目標としての入門の許可です」


しかし新田にもゆっくり素振りする事を指導する。力まず、自然に振り下ろされる木刀は姿勢、個人の肉体の癖などで変わる事が多い。先ずはその肉体的なくせ矯正きょうせいし、改めて流儀の稽古を行う。


「疲れたら休憩してください。出来そうなら出来るところまで。無理は禁物ですよ」


子供達の気合の声が中庭に響いた。

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