第142話隊士達の休日
日曜日は小野田家も隊士達も休日である。原田は午前中に教習所へ通い、帰ってきている。沖田も病院への稽古を終えて帰ってきている。皆縁側に集まって将棋などを指している。斉藤は詩織の酌で酒を飲み、吉村は教科書を読んでいる。その時、塀の外から賑やかな声が聞こえる。一同はぞろぞろと表に出てみた。見ると側溝に自動車が脱輪している。小野田家御用達の酒屋の軽トラックだ。
「諸君、我々の出番である」
運転手はどこかに電話を掛けている。そこへ隊士一同は車を調べる。祐介も出てきた。
「諸君、前後に分かれるぞ」
自動車の前部に三人、後部に四人別れ、取りついた。
「せーのっ」
近藤の一声で自動車は浮き上がり、車輪は側溝から外れた。酒屋の人間は感謝している。
「なんの、これしき当たり前の事です」
隊士達はまたぞろぞろと縁側に戻った。
「案外皆で担ぐと何とかなるものですね」
吉村はそう言った。
「何、大したことでもあるまい」
土方が言った。
「詩織殿、少々早い時間だが酒は飲めるかね」
ええ、大丈夫ですよ、と詩織は答えた。そのとき祐介がビールの箱を担いで戻って来た。
「先程の自動車の件で酒屋からのお礼だそうです」
「ならば遠慮なく飲めるな」
近藤はそう言った。詩織が肴の準備に台所へ去った。スルメとサツマイモがあるのでかき揚げにするつもりである。
「祐介殿もたまには飲みましょう」
近藤は誘う。
「まあ良いでしょう」
桜は満開で、はらりはらりと散っている。薫が冷やしたビールを持ってきた。
「さっきのビールが冷えるのは時間が掛かりますのでしばらくはこれをお飲みください」
缶ビールがそのまま配られる。隊士のささやかな酒宴は縁側で行われた。
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