第138話隊士と競馬 その三
出走馬がゲートに入り、スタートを待つ。ゲートに収まらない馬が居て少し時間がかかった。芝千六百メートルのレースである。スタートした。各馬で遅れる事無く出た。ソダスとグレナディアカージは馬群中央に居る。観客席から遠いので見えない。馬群は縦に長くなっている。
「我々の買った馬はどうなっておるのだ」
近藤は言った。
「アナウンスだと馬群中央で様子見みたいですね」
祐介は答えた。あっという間に最終コースまで馬群は迫っていた。
「来い、ソダス、グレナディアカージ!」
沖田が声に出す。二頭は強烈な差し込みをする。先頭に立った。残りの坂をしのげば二頭の勝利である。なんと二頭は差してソダスが一着、グレナディアカージは二着になった。
「近藤さん、ビギナーズラックですよ!」
祐介は興奮して言った。
「ビギナーズラックとは初めてする時は幸運がやって来ると言うものです。でも良かったですね、電車賃にはなりましたよ」
土方は言った。
「賭け事にこれほど熱中するとは、現代人も享楽的ですな」
「それだけ平和だという事だ」
隊士達は買った金額を祐介に立て替えてもらって、小野田家の庭で行う花見の酒を買う事にした。
「我々が揃う時は酒の席と稽古ばかりですな」
永倉はそう言ったが本来は任務の為に隊長がこれだけ集まる事は珍しかった。酒の安売り店で皆で酒を選ぶ。総司はノンアルコールビールだ。
「これなど如何ですかな」
安売りのウィスキーを斉藤は持ち上げた。
「舶来の酒か。それも良かろう」
安物の焼酎、ウィスキー、ビールを沢山買った。軍資金はもう無い。しかし隊士達は競馬を禁止されているので何の未練も無かった。
「今日は勝つと思って用意したのよ。さあ皆さん、お花見楽しんでくださいね」
薫と詩織が手早く準備をする。ウィスキーを買って来るとは思わなかったので詩織は氷を買いに行った。
隊士一同の競馬体験はこれにて終わりとなった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます