第130話詩織、斎藤の付き人になる

「化粧など不要だ」


斉藤はかたくなに断るが撮影に必要だと言う事で何とか納得させた。煌々と照らされたスタジオで斉藤はモデルの仕事をこなす。


「はぁ、やっぱり斉藤さんは良い男だわ」


なんとモデルの撮影に直々に編集長が来ている女性編集長は若干三十歳にして抜擢された有能な人物である。


「ガリガリの男にはないフェロモンが有るわ。ムンムンしている」


詩織は面食いな編集長を見つめた。この男は数え切れぬほど人を斬って来た事を。詩織に何者かを聞いてくる。


「遠縁の親戚です」


詩織は無難にそう答えるようにしている。無暗に詮索されないようにするためである。編集長が詩織に話を持ち掛けた。


「斉藤さんを女性専門誌のモデルに使いたいの」


詩織は驚いた。その雑誌は女性専門誌、際どい写真などで女性から圧倒的な支持を得る出版社の看板雑誌である。


「本人が良いと言えば大丈夫だと思いますが」


「あのスペックなら絶対大丈夫!話を通しておいてね」


詩織も嫌と言えない立場である。上手くすれば自分の仕事も安泰である。撮影が終わり、斎藤と詩織は打ち上げを断り、帰途に着いた。


「斉藤さん、新しいモデルの仕事があります」


「なんだ?」


「今度は服を着ないモデルなんです」


「裸になれと」


「結論を言えばそうなるかと」


「金はいくらになるのだ」


詩織は斉藤に耳打ちした。


「うむ、それならばやろう」


「本気ですか」


「俺はやると言えばやる人間である」


詩織は帰り道にあった本屋に立ち寄り、その雑誌を手に取って斉藤に見せた。際どい半裸の男女が抱き合う写真がある。


「大体こんな感じですが、本当に良いのですか」


「裸になる程度なら普通にやるモデルより楽であろう」


斉藤は了承した。スマホで編集長に連絡した。電話越しでもはしゃいでいる編集長が居る。斉藤は着実にモデルの立身出世を歩んでいる。詩織は自分に斉藤に対する複雑な感情が有る事に気が付いた。

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