第124話続・白い猫

永倉が白い猫と別れて二カ月も経ったろうか。あの白猫が再びやって来るようになった。毛艶も良く、何処かで飼われている様子だ。少し太ったようにも思える。永倉を見て駆け寄って来た。


「おお!どうしておったのだ、心配しておったのだぞ」


猫のおやつをあげると食べた。食べ終わると以前のように永倉に甘え、腹を触らせる。


「良い猫だ。さぞかしこの街で大切にされているのだろうな」


白猫が去り際、後ろを振り返って一声鳴いた。


「うむ、また来いよ」


その一部始終を斉藤は酒を飲みつつ眺めていた。


「永倉先生も猫には勝てないようだ」


永倉をからかう。この猫は小野田家でも有名な猫で、詩織も知っていた。野良猫と言うものは庭などに糞尿などして迷惑をかけるものであるが、この猫は一切小野田家で粗相はしない。地域猫として人々に愛されているのだろう。


「これ。お前はどこかの家で飼われているのだろう、正直に申せ」


永倉が聞くと一声鳴いて返事をするのだ。


「猫と言う生き物は気楽で良いものだな」


永倉は独り言を言った。猫用のおやつを買いに行かねばならない。詩織に地図を書いてもらい、ペットショップに買いに行くことにした。大きな店である。子犬、子猫で賑やかである。


「何故このように高価なのだろうか」


子犬が、子猫がガラス張りの部屋で遊び回っている。


「猫などはいくらでも見つかるものなのに」


猫のおやつを買って帰り、詩織に聞いてみると


「ああ、それは血統書があるからですよ」


何でも人気の有る品種は雑種ではなく、純血であることがペットショップで高値を付ける原因であるという。


「今は野良犬、野良猫は殺処分される事が多いのです。そんな犬猫を助ける為に譲渡会なども有るのですよ」


そんな事情も知り、何故か悲しくなった。縁台に座る永倉の膝に白猫が乗り、喉を鳴らして丸まっている。

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