第120話インフルエンザ

「むう、身体の節々が痛い」


近藤は体の不調に気が付いた。どうやら熱もあるらしく、立ち上がるとふらつきがある。詩織に不調を訴えると詩織は体温計を持ち出してきた。近藤のおでこに体温計を向けて体温を計った。


「三十八度!大変!」


祐介の運転する車に乗り、病院へ向かった。病院の待ち時間が近藤には永遠に続くような感覚だった。診察の順番がやって来て、祐介と一緒に診察室に入った。医師は近藤の鼻に何か細長い棒を突っ込んで何かを採取したようだ。一旦待合室に戻されてしばらくした後、また診察室に呼ばれた。


「インフルエンザですね」


お薬出しますので安静にしてほしいとの事だった。小野田家に帰ると近藤は隊士の居室から居間へ移るように言われた。近藤は平静を装っていたが、詩織に


「しんどかったらしんどいって言ってくださいね」


「詩織殿、すみません。酷く気分が優れません」


「落ち着かないかもしれませんが、しばらくはこちらで過ごしてくださいね」


居間に近藤の布団が敷かれ、近藤はそこで寝る事になった。他の隊士に移すと大変だからである。近藤が発熱と関節の痛みの中、寝ていると居間の慌ただしさが耳に入って来る。夕方になり、チヨが仕事から帰って来た。


「あら近藤さん、暖かくなってきたのにインフルエンザかい?ついていないね」


手洗い、うがいを励行するように隊士に指示した本人がかかってしまった。立つ瀬が無い。


「申し訳ありません」


「なに、四、五日もすれば良くなるよ」


近藤は薬を飲み、目をつむる。慌ただしく隊士の夕餉ゆうげの支度をする薫と詩織。そして後片付けに奔走する。沖田が洗い物の手伝いをしている。隊士は近藤に近づかないように言われているので近寄らない。


「もしこれが元居た時代であれば俺は死んでいたかもしれない」


近藤は改めて現代の医療に感謝した。

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