第113話ケータイ、持たせるべきか

祐介は悩んでいた。隊士一同がやって来て数ヶ月が経った。彼らは必ず過去に戻るのであるが、今のところその様子は無い。そもそもどういう予兆が有るのかもわからない。居間の食卓で家族に相談してみた。


「そろそろ隊士の皆さんに携帯を持たせようと思うのだが、どうだろう」


チヨが反論した。


「スマホなんて良い物持たせる必要は無いよ。ガラケーで十分さ」


高齢でもスマホを難なく扱うチヨらしい意見だ。


「うん、いきなりスマホよりガラケーの方が良いわね」


「どうせ使いこなせないよ」


薫と詩織が言う。


「じゃあガラケーを持ってもらう事にしよう」


数日後、隊士一同は道場に集められた。


「今から携帯電話をお配りします。一人一台です。今から使い方をお教えします」


原田は得意げだ。


「ケータイなど私にかかれば大したことはありません」


八百屋の同僚に携帯の使い方を教えてもらっていた。自分で買わなかったのは祐介が買ってくれるかもしれないという予想があったからだ。


一、二時間は経っただろうか。とりあえず電話のかけ方と取り方を覚えてもらった。各隊士の携帯には小野田家全員の電話番号、隊士の電話番号を登録してある。


「よく道端で会話しているのは携帯電話を使っているんですね」


吉村が言った。話のわかる男だ。


「しかし余程の事が無ければ電話もしないと思うのですが」


「万が一と言うものが有ります。それに隊士の皆さんの行動範囲も広がり、容易に連絡が取れないのも問題です」


そして大切な番号、警察は110番、救急、消防は119番を覚えてもらった。


「何かあればこの番号に電話して貰っても結構ですし、小野田家の誰かに電話してもらっても結構です」


充電の方法を教えて一旦散会になった。土方と沖田が試しに電話をしてみた。


「わっ!本当だ、話ができますよ」


「これしきの事で驚くな」


斉藤は詩織にメールのやり方を聞いている。原田が他の隊士に言った。


「携帯電話で小野田家にご迷惑をおかけするのははばかられます。ご用の際は原田におまかせください」


「けど原田さん、仕事で何時も居ないじゃないですか」


沖田の一言で笑いが起こった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る