第114話献血

「祐介殿、献血とはどのようなものですか」


近藤は祐介に聞いた。


「輸血を必要とする病気の方に自分の血液を提供する事です」


「なんと!自分の血液で病気を救えるのですか」


近藤はショックを受けた。自分の血液が他人を救うのである。やらないと言う選択肢は無い。祐介も賛同してくれて、献血ルームの予約を手伝ってくれた。


予約当日。近藤は献血ルームを訪れた。予約した旨を伝えて窓口で手続きを行った。アラームと言う音が鳴る機会を手渡されて事前検査を受けるのを待つ。医師の問診は簡単に済んだが問題は事前検査であった。注射針については沖田から聞いている。


「チクリと痛むだけですよ大丈夫です」


沖田の言う通り、献血の針を刺す血管を確認した後、反対の腕で採血した。チクリとした痛みが有ったが、耐えれぬ痛みではない。飲み物を飲んでおいてほしいと言われたのでジュースを飲む事にした。なんと無料である。近藤はジュースを飲みつつ待った。ブザーが鳴った。ケンケツシツヘという字が表示されたので係員に聞きつつ献血室に入った。


「これだけの数を用意するのだな」


ベッドが十席くらいある。うながされベッドに横になる。氏名を確認されるとテキパキと準備が進んだ。いざ献血となる時、その太い針に近藤は緊張したが針が入った。不思議と痛みは無かった。後は至れり尽くせりである。水分補給が大切だという事でジュースを飲んでテレビを観ていた。小一時間程度で終わり、ジュースを飲みながら休憩をした。お土産を片手に近藤は帰って来た。詩織に


「献血はどうでしたか」


と問われ、


「いえ、大したことは有りませんでした」


それは良かったですね、と詩織は言った。


「私の血が何処かの誰かのお役に立つのですね」


勿論です、と詩織に言われて近藤は現代の助け合いについて深く思う事があったのかそれ以降献血ルームに通うのであった。

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