第106話近藤と土方

近藤と土方が祐介の書斎で議論している。詩織がお茶を持ってくると


「詩織殿、申し訳ない」


近藤が礼を言い、近藤は土方と議論を進める。詩織は盗み聞きは良くないと知りつつ書斎の入り口で聞き耳を立てた。近藤が


「史実によれば、私は流山で打首、土方は蝦夷の五稜郭で戦死とあるがどう思う」


土方は答えた。


「現代にこれだけの文献ぶんけんが有るのですから、我々は史実通りの道を歩むのでしょうな」


「そうだ。俺は狙撃され、重傷を負う。そして新選組は解散だ」


「散々ですね」


「歳、俺は新選組を解散させようかと考えている」


「局長、それはいけません。歴史が変わってしまいます」


「我々は必ず元居た時代に帰るのだ。この残酷な新選組の最期を見たくはない」


土方は茶を一口含み、言った。


「局長、我々の最期は既にあの時代に気が付いていたことです」


「それは俺にもわかる。しかしこれ以上無駄な死を隊士に強いる事ができない」


「局長、何を弱気になられておるのです。しっかりしてください」


ここで会話が途切れた。詩織は台所で思った。


「新選組に亀裂が生じたのは実は隊士が現代に来たからでは?」


そうすると、全てに合理性が出来て来る。祐介にこっそり近藤と土方の議論を伝えると、やはりそうか、と祐介は言った。


「書籍に内容の変化が無いという事は歴史が証明している。やはり隊士の皆さんは元居た時代へ帰るのだろうな」


何時帰るのか、その方法は?全くわからない。それまでは隊士の皆さんに現代でゆっくり休息してもらおう、祐介は詩織に言った。しかしそれはいつかやってくる隊士達との別れを意味するのだ。

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