第105話近藤のプリン事件

隊士の居室には冷蔵庫が有る。小野田道場で合宿する門下生の為に祐介が購入したものだ。現在では隊士が使用している。近藤が稽古を終え、居室に戻って来た。昨日買ったプリンを食べようとするも、無い。


「歳、俺のプリン、知らないか」


プリンは近藤の大好物である。土方は言った。


「マジックで名前を書いていたんでしょう?誰かが盗み食いしたんでしょうな」


冷蔵庫にはマジックがマグネットで付けられていて、名前を書くようになっている。犯人はそれを知っていてプリンを食べたのである。近藤は居室で隊士一人一人を詰問する。


「永倉君、私のプリンに見覚えが無いか」


永倉は有りませんと言う。


「原田君、冷蔵庫のプリンは知っているか」


いえ、知りません、と答えた。


「斉藤君、君は最近プリンを食べたかね」


いえ、食べておりません。


「吉村君、君は冷蔵庫のプリンを知っているね」


存じ上げません、と吉村は答えた。


「総司、冷蔵庫のプリンを見かけなかったか」


あ、あれ、僕が食べました。


「総司!俺のささやかな楽しみを!」


しかし局長ともあろう人間がプリン一つで激昂する訳にはいかない。


「よし、総司、コンビニへ行ってプリンを買ってこい」


近藤は沖田に命令した。


「プリンの一つや二つ、無くなってもいいじゃないですか」


沖田は渋々コンビニまで買いに行った。土方が


「局長、プリン一つでやりすぎではありませんか」


「いや、歳、沖田にはしっかり事の分別が理解できるように教えなければいけない」


近藤は本気である。沖田には厳しく接しなければならない。


「侍が怒る事じゃないなぁ」


沖田がブツブツ言いながらプリンを買って来た。近藤は早速食べる。美味しい。

近藤は他人の食べ物には手を出さない事、と指示した。近藤のプリン事件を斉藤から教えてもらった詩織はケラケラと笑った。

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