第75話タイムリープ

「このタイムリープと言う原理についてスティーブン・ホーキンス博士は否定していますが、これについても所説ありまして結論が出ていません。ファインマンは…」


なぜこんな事になってしまったのだろうか。祐介が珍しく隊士一同が円座になり、活発な議論をしていたからで、慌てた祐介は詩織に茶の準備を指示して輪の中に入った。その議論の内容は


「何故、我々は現代に来たのか‥」


だった。しまった、と祐介は思ったが説明を求められ、悪手を打った。時間と言うものの概念から説明しなければならなくなってしまった。


「祐介殿、内容が頭に入らぬ。わかりやすく説明してください」


永倉が言った。


「時間は、出来事や変化を認識するための基礎的な概念です。あらゆる学問の重要なテーマとなっています。それぞれの分野でそれぞれ定義がなされているのです 」


「もっとわかりやすく」


祐介は困った。よく見ると斉藤は何時の間にか居なくなっていた。祐介が来た時の混乱の中を上手く抜け出したようだ。祐介は昔話から引用した。


「神隠し、と言うのはご存じでしょうか」


隊士一同は頷いた。


「突然、人、子供が行方不明になる事が度々伝えられる事ですが、現代でも起こっています。私の持論ですがどうにも説明が出来ない、証拠もないという事件は実はタイムリープではないのかと思うのです」


「では我々も神隠しに遭ったということですか」


「そう言う事になります」


「ではスティーブン氏が現在から過去へは移動する事は不可能だと結論しましたが、過去から現代へ移動する理論は結論が出ていないのですね」


吉村が言った。一番話のわかる男だと思う。


「そうです。何故なら過去からやって来た人物、という確証が無いのです」


「我々が過去から来たではないか」


話が初めに戻り、祐介は頭を抱えた。



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