第69話斉藤食べ歩き(パンケーキ)

「平日でも行列するんですよ」


詩織が斉藤に言った。列に並ぶ斉藤だが今日は詩織も一緒である。詩織に


「何か美味い物を食わせる店はないか」


うーんと詩織は少し考え、


「パンケーキなんてどうでしょう」


そうしてパンケーキに決まった。列に並ぶ男は一人であったが斉藤は気にも留めなかった。「あの人、デカくない?」などと列の後ろから聞こえたが詩織が話題を逸らす。


「ここのパンケーキはすごく美味しいってモデル仲間の人も言ってましたよ。楽しみですね」


「うむ、しかし詩織殿、パンケーキとはなんだ」


「まあ難しい事は考えずに楽しみにしましょう」


しばらくすると店内へ案内された。清潔な店である。テーブルについて二人はメニューを見た。


「俺はパンケーキとコーヒーで良い」


「じゃあ私もパンケーキとアップルティー」


店員に注文してから


「斉藤さん、コーヒー飲むようになりましたね」


「うむ、茶ばかりだと飽きるゆえにな」


斉藤はコーヒーを好んで飲むようになった。最初はインスタントを飲んでいたが詩織の勧めでペーパードリップのコーヒーを飲むようになった。独特の風味が斉藤の舌に合った。そうして話をしているとパンケーキがやって来た。


「このシロップをパンケーキにかけてください。最初は少なめに」


小ぶりな容器に茶褐色の液体が入っている。シロップと言うらしい。かけ過ぎないように気をつけてパンケーキにかけた。


「ではナイフとフォークを持っていただきます」


「これがナイフとフォークと言うものか」


左手にフォーク、これは突き刺して食べる、ナイフはパンケーキを切るため。詩織の使う様子を見て使ってみた。斉藤はいよいよ一口目を口にした。暖かく、優しい食感が口に広がる。


「ふむ、美味いな」


あっという間にたいらげてしまった。詩織は嬉しそうに自分を眺めている。


「このような甘味が有るとは新鮮だ」


コーヒーを飲みながら詩織に感想を伝える。


「スイーツは奥が深いですよ」


「甘味は何時の世も親しまれるものよ」


「今度お家でホットケーキを焼きますね」


説明を受けてもパンケーキとホットケーキの区別がつかない斉藤であった。

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