第62話原田、推しの女優を見つける
「木曜日か‥」
労働者の一週間は長い。木曜日を迎えると後一日働くと休みだと言うのがかえって労働の疲労が出やすい。原田もそんな一人だった。
「綺麗な女だな」
八百屋の狭い休憩所に置いてあった週刊誌でその女を知った。芸名を吉岡里穂と言うらしい。水着を着て写真に写っている。色気がある。休憩時間にその女の写真を見るのが何時の間にか日課になっていた。ある日その雑誌が処分されると聞いて引き取った。
「この女は女優と言い、映画や演劇、写真等を
得られた情報はそれまでだった。何時の間にかその雑誌を手に取り、その女優の写真の笑顔を見つめる自分が居た。
ある日、たまたま詩織と話をする機会があり、吉岡里穂について聞いてみた。
「ああ、吉岡さん。同じ事務所で良くお会いしますよ。忙しい人です」
「何!詩織殿、それは本当の話ですか」
詩織の所属事務所は俳優、モデル部門と別れていて、時折事務所で会う事が有るらしい。忙しいらしく挨拶程度しかできないという。八百屋の店員に聞いた事を詩織に聞いた。
「詩織殿、吉岡里穂さんのサインというものは貰えないだろうか」
「え、原田さん、ファンになったんですか」
「もし書いて貰えるならばお願いできないだろうか」
この事は内密に、と詩織に口止めをした。しかしもしかしたらサインを手に入れる事で彼女と出会う可能性が有るのかもしれない。原田の脳裏に彼女の笑顔がよぎる。
「原田さん、それを推し、と言うんですよ」
詩織が教えてくれた。ひと昔はファンと言っていたが今は言葉も変わったそうだ。写真集があると聞き、本屋で手に入れた。こっそり他の隊士に見つからないように写真集を眺めるのが日課になった。ページを開けば何時でも彼女の笑顔が見れる。原田の癒しになった。
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