第61話家庭裁判所

小野田夫妻と近藤は家庭裁判所で山崎と合流した。就籍許可の申し立てに対する家庭裁判所の審判である。


「良いですか近藤さん、大切な事は焦らない事。普段通りにしてください。後は打ち合わせたとおりです」


「承知した」


「大丈夫ですよ、近藤さん。いつも通りにしてください。何、命までは取られません」


「祐介殿、大丈夫です」


近藤は落ち着いていた。どうやらこの手続きをすれば晴れて日本という国の国民になれるのである。


「近藤さん、どうぞ」


部屋から係の者らしき人間が顔を出した。山崎と近藤は連れ立って部屋に入った。部屋には先程声を掛けた人間と、もう一人男性が居た。


「これから就籍許可しゅうせききょかの申し立てに対する審判を行います」


そうして審判が始まった。難しい質問は山崎が代弁し、簡単な質問は近藤が答えた。近藤はもっと時間のかかる事だと思ったが、意外と簡単に終わった。


「以上で就籍許可の申し立てに対する審判を終わります。結果については追って郵送にて送ります」


審判の終わりを告げられた時、近藤は起立し、深々と礼をし、退室した。廊下で小野田夫妻が待っていた。


「山ちゃん、どうだった」


「やれることはやったよ。後は申し立ての審判がどうなるかだね」


山崎は言った。


申し立てが行われた部屋で先程の二人が申し立てについて話し合っていた。


「近藤勇という名前以外出生を証明するものがありませんね」


「典型的な無戸籍の人だよ。しかししっかりと礼もするし、礼儀は教育されたみたいだね」


「まるで新選組の近藤勇みたいですね」


ハハ、とまさか本物とは二人も思わなかった。

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