第53話吉村、中学生になる

「あのう、祐介殿、少しお話があります」


祐介も一息ついて居間でくつろいでいる。


「話とは何です?」


「私、中学校で学びたいと考えております」


祐介はそれは良い事だと思った。


「感心ですね。何故学ぼうとするのです」


「現代に来て、学問の進歩した有様を見て、私も初心に帰って勉学に励みたいと思うのです」


入学には試験も無いし必要な資格も無い。祐介は進んで手続きを手伝う事を伝えた。


「有難うございます。宜しくお願い致します」


吉村は深々と頭を下げた。詩織が間に入って言った。


「でも吉村さん、英語とか有りますよ。大丈夫ですか」


えいご、とは何でしょうか?と詩織に聞いた。


「イギリスという外国の言葉です」


吉村は驚いた。


「なんと外国の言葉も勉強しないといけないんですね」


深刻そうな表情をしたが、パッと明るい表情になった。


「それは外国に行っても会話ができる事ですね。素晴らしい事です」


吉村が嬉々として居間から去って行った。詩織は祐介に言った。


「私、吉村さんに教えてあげようか」


「うん、それは吉村さん、喜ぶよ」


吉村はその足で近藤に報告した。


「そういう訳で現代の学校に通う事にしました」


近藤は言った。


「吉村君ほどの学問が達者な者すら難しいとされる学問をするのか」


「はい、学問の道なれば士道不覚悟では無いと思うのですが」


側で聞いていた土方が言う。


「吉村君、勉学に励む事は悪くない。法度はっとにも触れない。しかし君は新選組の隊士だ。それを忘れないように」


はい、ご助言有難うございます、と吉村は去って行った。


「吉村君の勤勉さは感心するな」


「何事も起きなければ良いですが」


土方はそう答えた。



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