第14話稽古にて

小野田家での稽古に隊士も参加するようになった。面胴を付けてするのも別段行わなかったが小学生や中学生を相手にするには十分だった。夜から始まる小野派一刀流の稽古には全員が参加した。型稽古が主で、試合など危険な稽古は無かった。しかし突如現れた入門者たちによって道場生は稽古が変わった事を感じた。


先ず第一に小野派一刀流では鬼小手と呼ばれる防具を身に着ける。安全を配慮しての事だった。しかし彼らは着けようとしない。型稽古の時は正しく真剣勝負の様な雰囲気だった。一通り型稽古が終わると彼らは道場の隅で大人しくしている。


「そちら方は他流儀ですか」


道場生の木村が声を掛けた。はい、そうですと近藤は答えて、良い稽古ですね、と答えた。ご流儀は、と聞いてもあやふやな答えしか返ってこない。汗を拭き、後半の稽古が始まると彼らは道場の奥に消えた。


「小野派一刀流、やはり現代に来るとこうなるのでしょうか」


吉村がつぶやいた。


「仕方あるまい。剣が必要なくなってこうして残っているだけでも貴重だ」


彼ら隊士の稽古は深夜に及ぶ。道場生たちが帰ってからが本当の稽古時間だ。

木刀であれ、真剣と同じく扱えば人を殺傷できる。試衛館からの幹部は心得ていて、胴や小手を打つ際、ほんの少し、力を抜く。そうすると骨まで折れない。彼らの身体はあざが絶えなかった。

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