第12話刀屋「刀泉堂」その二
次に兼定を見た。これもまた贅沢な刀装である。朱鞘にこちらは実践向きな無骨な鍔。目抜きも凝った意匠だ。分解して鑑定する。紛れもなく藤原の知識ではこれは兼定である。男二人は藤原を静かに見つめている。
「確かに私が見る限り、虎徹と兼定です。しかし私には自信が持てません。この二振りを一旦私がお預かりし、刀剣協会の会員を含めて鑑定をしたいと思います。いかがですか」
「ああそれが良いよ。納得するまで鑑定しておくれよ。この二人の持ち物だからね。良いよね?」
チヨが二人に声を掛けると二人は黙って
「
斉藤がそう言った。
「斉藤君、君は自分の差料を金の為に手放すのか」
そう言ったのは土方だった。
「最早この世において必要ない故」
藤原にとっては宝が舞い込むような話である。大阪新刀髄一と称される
「私も長く勤めて参りましたがこれほどの業物をお目にかかれたことは有りません。全て私にお任せください」
藤原は去った。近藤は斉藤に尋ねた。
「君が差料を手放すとは思わなかったが」
「酒代ですよ。どうやらこの時代は刀より銭の時代のようです」
斉藤はそう言って道場へ消えていった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます